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【番外編】
シャルロット王女のサプライズパーティ その6
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ガチャン、と少々乱暴な音がして扉が閉まった。
俺はマントにくるまれたまま、そっと、柔らかいどこかに下ろされた。
「叔父様っ……!!」
俺に巻き付いていたマントを剥ぎ取ったテオドールは、俺が息ができなくなるくらい強く抱きしめてきた。
「テオっ……」
俺の肩口に顔を埋めるテオドールの髪を、俺はゆっくりと撫でてやる。
ベッドの上の俺は周りを見渡す。
豪華ではないが、しっかりとした石造りの部屋の一室。広めのベッドには清潔なシーツがかけられている。サイドテーブルには白い花が一輪活けられている。
執務机や書棚は、続きの部屋に置いてあるようだ。
整然と片付いてはいるが、どこか温かみを持ったこの部屋に、俺は好感を持った。
「叔父様っ、申し訳ありません!」
テオドールは俺にわびてきた。
「テオ? どうしたの?」
「ここは、この国で唯一安全な場所なんです。聖教会の中までは、たとえシャルロット王女といえども干渉することはできません。それに……」
「それに……?」
「俺はっ、これ以上もうっ、誰にもっ、18歳の叔父様を見られたくないんです!
たとえシャンタル様にもエマにも……、誰にも!!
今のこの姿の叔父様だけは、俺が独り占めしたい!!」
まるで悲鳴のような告白に、俺はすこしびっくりしていた。
「テオ……、この魔法はどうせ明日には解けているし、それに、こんなのただの殿下のお遊びだろう? そんなに気にすること、ないのに……」
「いいえっ!」
テオドールはかぶりを振る。
「叔父様にはきっとわかりません。俺が……、俺がどんな気持ちで毎日叔父様と暮らしているのか……。叔父様はあの時、俺を選んでくれた。でも、俺は本当はあれからもずっと不安なんです! もしかしたら、明日には不意に現れた誰かに、叔父様を奪われてしまうかもしれない! まるで危機感のない叔父様は、あっという間に俺を捨てて、新しい男のもとに行ってしまうかもしれない……!」
「そんなこと、あるわけ……っ」
俺の言葉に、テオドールは俺を抱きしめる腕にさらに力を込めた。
「シャンタル様にも言われました。そんな不安は、己の自信のなさから来るのだと。
でも、こんな俺に、どうして自信など持てるのでしょう? だって俺は、叔父様よりも年若く、まだ未熟で、経験不足で……!
それに比べて叔父様は、今までもたくさんの男に愛されて……。俺は……、もしかしたら他の誰よりも劣っているのかもしれない……、俺が聖騎士だったから、叔父様は俺を選んでくれたのでしょうか? 俺は、叔父様にずっと愛され続ける価値がある男でしょうか? ずっとそんなことを考えていて……、俺はずっと不安で……、そんな自分が情けなくて……!」
テオドールの激白に、俺は……、なにか胸にこみ上げるものがあった。
俺は、テオドールの耳元に唇を寄せた。
「そんな事言うなら、俺だって、いつも……、本当は不安だよ。テオが俺を捨てて、誰か別の人のところに行くんじゃないか……、俺になんてすぐ飽きてしまうんじゃないか……、そんなことを考えてる……」
「叔父様……っ!」
テオドールは顔をあげた。
「そんなことっ! 世界が終わりになったとしても、絶対にあるわけはありませんっ! 捨てられるのは絶対に俺の方です!!
叔父様……、俺は……ちゃんと叔父様を満足させられていますか?
叔父様は……最近……、俺との触れ合いをさけているような、気が、します……」
テオドールの指摘に俺はぎくりとする。
「いや、ち、違うよ! 避けてなんかない……よ、ちょっと、回数が、思ってたよりも多かったから……、戸惑ってた、だけ……、だって、あんまり……、その……」
その時俺は、ようやく気がついた。
シャルロット王女が、なぜ俺を18歳のこの姿に巻き戻したのか。
テオドールの不安を解消するために、今の俺にできることは何なのか……。
「叔父様っ、俺は……」
何か言おうとするテオドールの唇に、人差し指を当てた。
「聖騎士・テオドール様……」
俺はその漆黒の瞳を見つめる。
俺はテオドールから身体を離すと、着ていた騎士服の上着を床へ落とした。
そしてシャツのボタンを、一つずつ外していく。
「……、いったい、何を……?」
あっけにとられているテオドール。
「聖騎士様……。ずっと、お慕いしておりました。どうか、貴方様にこの私のはじめてをもらっていただけないでしょうか?
テオドール様に、私の純潔を捧げたいのです……」
俺はマントにくるまれたまま、そっと、柔らかいどこかに下ろされた。
「叔父様っ……!!」
俺に巻き付いていたマントを剥ぎ取ったテオドールは、俺が息ができなくなるくらい強く抱きしめてきた。
「テオっ……」
俺の肩口に顔を埋めるテオドールの髪を、俺はゆっくりと撫でてやる。
ベッドの上の俺は周りを見渡す。
豪華ではないが、しっかりとした石造りの部屋の一室。広めのベッドには清潔なシーツがかけられている。サイドテーブルには白い花が一輪活けられている。
執務机や書棚は、続きの部屋に置いてあるようだ。
整然と片付いてはいるが、どこか温かみを持ったこの部屋に、俺は好感を持った。
「叔父様っ、申し訳ありません!」
テオドールは俺にわびてきた。
「テオ? どうしたの?」
「ここは、この国で唯一安全な場所なんです。聖教会の中までは、たとえシャルロット王女といえども干渉することはできません。それに……」
「それに……?」
「俺はっ、これ以上もうっ、誰にもっ、18歳の叔父様を見られたくないんです!
たとえシャンタル様にもエマにも……、誰にも!!
今のこの姿の叔父様だけは、俺が独り占めしたい!!」
まるで悲鳴のような告白に、俺はすこしびっくりしていた。
「テオ……、この魔法はどうせ明日には解けているし、それに、こんなのただの殿下のお遊びだろう? そんなに気にすること、ないのに……」
「いいえっ!」
テオドールはかぶりを振る。
「叔父様にはきっとわかりません。俺が……、俺がどんな気持ちで毎日叔父様と暮らしているのか……。叔父様はあの時、俺を選んでくれた。でも、俺は本当はあれからもずっと不安なんです! もしかしたら、明日には不意に現れた誰かに、叔父様を奪われてしまうかもしれない! まるで危機感のない叔父様は、あっという間に俺を捨てて、新しい男のもとに行ってしまうかもしれない……!」
「そんなこと、あるわけ……っ」
俺の言葉に、テオドールは俺を抱きしめる腕にさらに力を込めた。
「シャンタル様にも言われました。そんな不安は、己の自信のなさから来るのだと。
でも、こんな俺に、どうして自信など持てるのでしょう? だって俺は、叔父様よりも年若く、まだ未熟で、経験不足で……!
それに比べて叔父様は、今までもたくさんの男に愛されて……。俺は……、もしかしたら他の誰よりも劣っているのかもしれない……、俺が聖騎士だったから、叔父様は俺を選んでくれたのでしょうか? 俺は、叔父様にずっと愛され続ける価値がある男でしょうか? ずっとそんなことを考えていて……、俺はずっと不安で……、そんな自分が情けなくて……!」
テオドールの激白に、俺は……、なにか胸にこみ上げるものがあった。
俺は、テオドールの耳元に唇を寄せた。
「そんな事言うなら、俺だって、いつも……、本当は不安だよ。テオが俺を捨てて、誰か別の人のところに行くんじゃないか……、俺になんてすぐ飽きてしまうんじゃないか……、そんなことを考えてる……」
「叔父様……っ!」
テオドールは顔をあげた。
「そんなことっ! 世界が終わりになったとしても、絶対にあるわけはありませんっ! 捨てられるのは絶対に俺の方です!!
叔父様……、俺は……ちゃんと叔父様を満足させられていますか?
叔父様は……最近……、俺との触れ合いをさけているような、気が、します……」
テオドールの指摘に俺はぎくりとする。
「いや、ち、違うよ! 避けてなんかない……よ、ちょっと、回数が、思ってたよりも多かったから……、戸惑ってた、だけ……、だって、あんまり……、その……」
その時俺は、ようやく気がついた。
シャルロット王女が、なぜ俺を18歳のこの姿に巻き戻したのか。
テオドールの不安を解消するために、今の俺にできることは何なのか……。
「叔父様っ、俺は……」
何か言おうとするテオドールの唇に、人差し指を当てた。
「聖騎士・テオドール様……」
俺はその漆黒の瞳を見つめる。
俺はテオドールから身体を離すと、着ていた騎士服の上着を床へ落とした。
そしてシャツのボタンを、一つずつ外していく。
「……、いったい、何を……?」
あっけにとられているテオドール。
「聖騎士様……。ずっと、お慕いしておりました。どうか、貴方様にこの私のはじめてをもらっていただけないでしょうか?
テオドール様に、私の純潔を捧げたいのです……」
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