148 / 165
【番外編】
シャルロット王女のサプライズパーティ その6
しおりを挟む
ガチャン、と少々乱暴な音がして扉が閉まった。
俺はマントにくるまれたまま、そっと、柔らかいどこかに下ろされた。
「叔父様っ……!!」
俺に巻き付いていたマントを剥ぎ取ったテオドールは、俺が息ができなくなるくらい強く抱きしめてきた。
「テオっ……」
俺の肩口に顔を埋めるテオドールの髪を、俺はゆっくりと撫でてやる。
ベッドの上の俺は周りを見渡す。
豪華ではないが、しっかりとした石造りの部屋の一室。広めのベッドには清潔なシーツがかけられている。サイドテーブルには白い花が一輪活けられている。
執務机や書棚は、続きの部屋に置いてあるようだ。
整然と片付いてはいるが、どこか温かみを持ったこの部屋に、俺は好感を持った。
「叔父様っ、申し訳ありません!」
テオドールは俺にわびてきた。
「テオ? どうしたの?」
「ここは、この国で唯一安全な場所なんです。聖教会の中までは、たとえシャルロット王女といえども干渉することはできません。それに……」
「それに……?」
「俺はっ、これ以上もうっ、誰にもっ、18歳の叔父様を見られたくないんです!
たとえシャンタル様にもエマにも……、誰にも!!
今のこの姿の叔父様だけは、俺が独り占めしたい!!」
まるで悲鳴のような告白に、俺はすこしびっくりしていた。
「テオ……、この魔法はどうせ明日には解けているし、それに、こんなのただの殿下のお遊びだろう? そんなに気にすること、ないのに……」
「いいえっ!」
テオドールはかぶりを振る。
「叔父様にはきっとわかりません。俺が……、俺がどんな気持ちで毎日叔父様と暮らしているのか……。叔父様はあの時、俺を選んでくれた。でも、俺は本当はあれからもずっと不安なんです! もしかしたら、明日には不意に現れた誰かに、叔父様を奪われてしまうかもしれない! まるで危機感のない叔父様は、あっという間に俺を捨てて、新しい男のもとに行ってしまうかもしれない……!」
「そんなこと、あるわけ……っ」
俺の言葉に、テオドールは俺を抱きしめる腕にさらに力を込めた。
「シャンタル様にも言われました。そんな不安は、己の自信のなさから来るのだと。
でも、こんな俺に、どうして自信など持てるのでしょう? だって俺は、叔父様よりも年若く、まだ未熟で、経験不足で……!
それに比べて叔父様は、今までもたくさんの男に愛されて……。俺は……、もしかしたら他の誰よりも劣っているのかもしれない……、俺が聖騎士だったから、叔父様は俺を選んでくれたのでしょうか? 俺は、叔父様にずっと愛され続ける価値がある男でしょうか? ずっとそんなことを考えていて……、俺はずっと不安で……、そんな自分が情けなくて……!」
テオドールの激白に、俺は……、なにか胸にこみ上げるものがあった。
俺は、テオドールの耳元に唇を寄せた。
「そんな事言うなら、俺だって、いつも……、本当は不安だよ。テオが俺を捨てて、誰か別の人のところに行くんじゃないか……、俺になんてすぐ飽きてしまうんじゃないか……、そんなことを考えてる……」
「叔父様……っ!」
テオドールは顔をあげた。
「そんなことっ! 世界が終わりになったとしても、絶対にあるわけはありませんっ! 捨てられるのは絶対に俺の方です!!
叔父様……、俺は……ちゃんと叔父様を満足させられていますか?
叔父様は……最近……、俺との触れ合いをさけているような、気が、します……」
テオドールの指摘に俺はぎくりとする。
「いや、ち、違うよ! 避けてなんかない……よ、ちょっと、回数が、思ってたよりも多かったから……、戸惑ってた、だけ……、だって、あんまり……、その……」
その時俺は、ようやく気がついた。
シャルロット王女が、なぜ俺を18歳のこの姿に巻き戻したのか。
テオドールの不安を解消するために、今の俺にできることは何なのか……。
「叔父様っ、俺は……」
何か言おうとするテオドールの唇に、人差し指を当てた。
「聖騎士・テオドール様……」
俺はその漆黒の瞳を見つめる。
俺はテオドールから身体を離すと、着ていた騎士服の上着を床へ落とした。
そしてシャツのボタンを、一つずつ外していく。
「……、いったい、何を……?」
あっけにとられているテオドール。
「聖騎士様……。ずっと、お慕いしておりました。どうか、貴方様にこの私のはじめてをもらっていただけないでしょうか?
テオドール様に、私の純潔を捧げたいのです……」
俺はマントにくるまれたまま、そっと、柔らかいどこかに下ろされた。
「叔父様っ……!!」
俺に巻き付いていたマントを剥ぎ取ったテオドールは、俺が息ができなくなるくらい強く抱きしめてきた。
「テオっ……」
俺の肩口に顔を埋めるテオドールの髪を、俺はゆっくりと撫でてやる。
ベッドの上の俺は周りを見渡す。
豪華ではないが、しっかりとした石造りの部屋の一室。広めのベッドには清潔なシーツがかけられている。サイドテーブルには白い花が一輪活けられている。
執務机や書棚は、続きの部屋に置いてあるようだ。
整然と片付いてはいるが、どこか温かみを持ったこの部屋に、俺は好感を持った。
「叔父様っ、申し訳ありません!」
テオドールは俺にわびてきた。
「テオ? どうしたの?」
「ここは、この国で唯一安全な場所なんです。聖教会の中までは、たとえシャルロット王女といえども干渉することはできません。それに……」
「それに……?」
「俺はっ、これ以上もうっ、誰にもっ、18歳の叔父様を見られたくないんです!
たとえシャンタル様にもエマにも……、誰にも!!
今のこの姿の叔父様だけは、俺が独り占めしたい!!」
まるで悲鳴のような告白に、俺はすこしびっくりしていた。
「テオ……、この魔法はどうせ明日には解けているし、それに、こんなのただの殿下のお遊びだろう? そんなに気にすること、ないのに……」
「いいえっ!」
テオドールはかぶりを振る。
「叔父様にはきっとわかりません。俺が……、俺がどんな気持ちで毎日叔父様と暮らしているのか……。叔父様はあの時、俺を選んでくれた。でも、俺は本当はあれからもずっと不安なんです! もしかしたら、明日には不意に現れた誰かに、叔父様を奪われてしまうかもしれない! まるで危機感のない叔父様は、あっという間に俺を捨てて、新しい男のもとに行ってしまうかもしれない……!」
「そんなこと、あるわけ……っ」
俺の言葉に、テオドールは俺を抱きしめる腕にさらに力を込めた。
「シャンタル様にも言われました。そんな不安は、己の自信のなさから来るのだと。
でも、こんな俺に、どうして自信など持てるのでしょう? だって俺は、叔父様よりも年若く、まだ未熟で、経験不足で……!
それに比べて叔父様は、今までもたくさんの男に愛されて……。俺は……、もしかしたら他の誰よりも劣っているのかもしれない……、俺が聖騎士だったから、叔父様は俺を選んでくれたのでしょうか? 俺は、叔父様にずっと愛され続ける価値がある男でしょうか? ずっとそんなことを考えていて……、俺はずっと不安で……、そんな自分が情けなくて……!」
テオドールの激白に、俺は……、なにか胸にこみ上げるものがあった。
俺は、テオドールの耳元に唇を寄せた。
「そんな事言うなら、俺だって、いつも……、本当は不安だよ。テオが俺を捨てて、誰か別の人のところに行くんじゃないか……、俺になんてすぐ飽きてしまうんじゃないか……、そんなことを考えてる……」
「叔父様……っ!」
テオドールは顔をあげた。
「そんなことっ! 世界が終わりになったとしても、絶対にあるわけはありませんっ! 捨てられるのは絶対に俺の方です!!
叔父様……、俺は……ちゃんと叔父様を満足させられていますか?
叔父様は……最近……、俺との触れ合いをさけているような、気が、します……」
テオドールの指摘に俺はぎくりとする。
「いや、ち、違うよ! 避けてなんかない……よ、ちょっと、回数が、思ってたよりも多かったから……、戸惑ってた、だけ……、だって、あんまり……、その……」
その時俺は、ようやく気がついた。
シャルロット王女が、なぜ俺を18歳のこの姿に巻き戻したのか。
テオドールの不安を解消するために、今の俺にできることは何なのか……。
「叔父様っ、俺は……」
何か言おうとするテオドールの唇に、人差し指を当てた。
「聖騎士・テオドール様……」
俺はその漆黒の瞳を見つめる。
俺はテオドールから身体を離すと、着ていた騎士服の上着を床へ落とした。
そしてシャツのボタンを、一つずつ外していく。
「……、いったい、何を……?」
あっけにとられているテオドール。
「聖騎士様……。ずっと、お慕いしておりました。どうか、貴方様にこの私のはじめてをもらっていただけないでしょうか?
テオドール様に、私の純潔を捧げたいのです……」
110
お気に入りに追加
1,461
あなたにおすすめの小説
いつの間にか後輩に外堀を埋められていました
雪
BL
2×××年。同性婚が認められて10年が経った現在。
後輩からいきなりプロポーズをされて....?
あれ、俺たち付き合ってなかったよね?
わんこ(を装った狼)イケメン×お人よし無自覚美人
続編更新中!
結婚して五年後のお話です。
妊娠、出産、育児。たくさん悩んでぶつかって、成長していく様子を見届けていただけたらと思います!
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺(紗子)
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(10/21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
※4月18日、完結しました。ありがとうございました。
第一王子から断罪されたのに第二王子に溺愛されています。何で?
藍音
BL
占星術により、最も国を繁栄させる子を産む孕み腹として、妃候補にされたルーリク・フォン・グロシャーは学院の卒業を祝う舞踏会で第一王子から断罪され、婚約破棄されてしまう。
悲しみにくれるルーリクは婚約破棄を了承し、領地に去ると宣言して会場を後にするが‥‥‥
すみません、シリアスの仮面を被ったコメディです。冒頭からシリアスな話を期待されていたら申し訳ないので、記載いたします。
男性妊娠可能な世界です。
魔法は昔はあったけど今は廃れています。
独自設定盛り盛りです。作品中でわかる様にご説明できていると思うのですが‥‥
大きなあらすじやストーリー展開は全く変更ありませんが、ちょこちょこ文言を直したりして修正をかけています。すみません。
R4.2.19 12:00完結しました。
R4 3.2 12:00 から応援感謝番外編を投稿中です。
お礼SSを投稿するつもりでしたが、短編程度のボリュームのあるものになってしまいました。
多分10話くらい?
2人のお話へのリクエストがなければ、次は別の主人公の番外編を投稿しようと思っています。
初夜の翌朝失踪する受けの話
春野ひより
BL
家の事情で8歳年上の男と結婚することになった直巳。婚約者の恵はカッコいいうえに優しくて直巳は彼に恋をしている。けれど彼には別に好きな人がいて…?
タイトル通り初夜の翌朝攻めの前から姿を消して、案の定攻めに連れ戻される話。
歳上穏やか執着攻め×頑固な健気受け
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる