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【番外編】
シャルロット王女のサプライズパーティ その4
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「2番でお願いします!」
なぜか即答するテオドール。
そして俺は……、混乱していた。
血縁関係!? 主従関係!? そして、どうして二つとも「禁断」の文字がついているのか!?
っていうか、そもそも設定って一体ナニ!?
「あら、2番、ですか……。私はどちらかというと1番の方をオススメしたかったのですが……」
少し……、いや、かなりがっかりした様子のシャルロット王女。
「では、こちら設定集ですわ!」
「ジュール卿のお召し物はこちらです!」
訳の分からないまま、ご令嬢たちからあれやこれやと手渡される俺……。
「あのっ、殿下! 俺にはなにがなんのことやら、さっぱり、わからないのですが!」
俺の言葉にシャルロット王女はくるりと振り向いた。
「この魔法が解けるのは今日の深夜零時。それまで、ジュール卿はこの設定にある通り、黒の聖騎士の従騎士としてふるまってください。
良いですか? 今この時から、魔法が解けるその時までは、貴方はもう次期ダンデス伯爵のジュール卿ではありません。
ーージュール卿、いえ、ジュール、これが私からの『ちょっとしたお願い』ですわ」
「はあ、従騎士、ですか……」
俺は仕方なくその設定集とやらに目を落とした。
――どうやら俺は、王女とご令嬢たちによる、壮大なスケールの「お遊び」に巻き込まれてしまったらしい……。
≪設定≫
テオドール…黒の聖騎士。従騎士のジュールを溺愛している。20歳。
ジュール・ダンデス…黒の聖騎士の従騎士。黒の聖騎士に密かに想いを寄せているが、ずっとその気持を隠し続けてきた。18歳の誕生日を迎えたばかり。
呼び方※ここ重要※
テオドール→ジュール・・・「ジュール」(呼び捨て、敬語は一切ナシ!)
ジュール→テオドール・・・「聖騎士様」もしくは「テオドール様」(敬意を持って!)
――これだけ!?
俺の疑問に気づいたのか、シャルロット殿下は手にしていた扇で口元を隠した。
「申し訳ありません。お二人が選ばれるのは、きっと1番に違いないと考え、そちらの設定にかなりの時間と労力を割いてしまったので……。
ですから、あとの細かいことはお二人のアドリブにお任せします! それとも、いまからでも禁断の兄弟愛に変更……」
「いえ、結構です」
テオドールがシャルロット王女の言葉を遮る。
1番の方の設定集はどうなっているのか。たしかに俺に手渡された1枚のペラペラの設定集より、随分分厚い気がする。
俺は少しだけ気になったが、きっとこれはこのまま知らない方がいいことに違いない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
というわけで……。
「ジュール」
「はい、聖騎士様」
「「「「きゃーーーーーっ!!!!」」」」
王女と3人のご令嬢は、一斉にその場にへなへなと倒れ込んだ。
「……」
テオドールの従騎士になりきるために、黒の騎士団服(マントなし)に着替えさせられた俺。
騎士服には縁がなかった俺は、実を言うとちょっとだけ興奮していた。まるで俺も聖騎士団の団員になったみたいだ!
「では、黒の聖騎士、あとはあなた方にお任せします。では、良い一日を!」
「「「幸運を祈ります。黒の聖騎士」」」
「御意!」
恭しく首を垂れるテオドールにならって、俺もお辞儀をする。
ーーそして俺たちは、あっさり王女たちから解放された……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「わー、この騎士服、もらえるのかな? テオ、せっかくだし、このまま帰らずに王都で買い物でもしていく?」
聖騎士団の制服のまま馬車に乗りこんだ俺は、にまにましてテオドールの隣に座った。
「あれ、どうしたの……? テオ……」
「ジュール……」
なにか言いたげな表情のテオドール。
ーーそうだ、まだシャルロット王女との約束は続いているのだった。
シャルロット王女に忠誠を誓っているテオドール。真面目なテオドールはきっとこのお芝居ごっこを最後までやり遂げるつもりなのだ。
ーーここは叔父として、いや婚約者としてぜひとも協力せねばなるまい!
「あ、申し訳ありません。聖騎士様……。
俺っ、いや、私としてはこのまま別宅には帰らずに、王都にでも寄りたいと思っているのですが? 聖騎士様はいかがでしょう?」
俺の言葉に、テオドールはすぅっと息を吸い込んだ。
「ジュール、私がこんな君を人前にさらせるとでも? 君を王都に連れ出したりしたら、あっという間に良からぬ者たちに狙われてしまう……。私にはそんなことは到底できないっ!」
ーー聖騎士仕様のテオドールってば、こんな喋り方をするんだな。それにしてもすっかり役に入り込んでいるようだ。
まるで俺の知らないテオドールみたいで、俺はちょっとドキドキしていた。
「申し訳ありませんっ、出過ぎたことを申し上げました」
ーー従騎士って実際よく知らないけど、騎士の専属のお付き係みたいなものだよな? こんな喋り方で合ってるのだろうか?
「いやっ……、いいんだ……」
テオドールはどこか苦しげな顔つきで、額にかかる前髪をかきあげた。
それにしても、さっきからテオドールの息遣いがかなり荒い。お菓子も全然食べていなかったようだし、どこか具合でも悪いのだろうか?
「聖騎士様、それではダンデス家の本宅にでも寄りませんか?
ぜひ私の家族にもこの姿を見せたいと思います」
シャンタルお姉様が今の俺を見たらどんな顔をするだろうか。今日は用事がないので家にいるはずだ。俺はシャンタルお姉様の驚く顔を想像して思わずニヤついてしまった。
が……、
「ジュールっ!!」
「ひっ!!」
突然、テオドールは俺に覆いかぶさってきて、俺の両手をひとまとめにして拘束した。
なぜか即答するテオドール。
そして俺は……、混乱していた。
血縁関係!? 主従関係!? そして、どうして二つとも「禁断」の文字がついているのか!?
っていうか、そもそも設定って一体ナニ!?
「あら、2番、ですか……。私はどちらかというと1番の方をオススメしたかったのですが……」
少し……、いや、かなりがっかりした様子のシャルロット王女。
「では、こちら設定集ですわ!」
「ジュール卿のお召し物はこちらです!」
訳の分からないまま、ご令嬢たちからあれやこれやと手渡される俺……。
「あのっ、殿下! 俺にはなにがなんのことやら、さっぱり、わからないのですが!」
俺の言葉にシャルロット王女はくるりと振り向いた。
「この魔法が解けるのは今日の深夜零時。それまで、ジュール卿はこの設定にある通り、黒の聖騎士の従騎士としてふるまってください。
良いですか? 今この時から、魔法が解けるその時までは、貴方はもう次期ダンデス伯爵のジュール卿ではありません。
ーージュール卿、いえ、ジュール、これが私からの『ちょっとしたお願い』ですわ」
「はあ、従騎士、ですか……」
俺は仕方なくその設定集とやらに目を落とした。
――どうやら俺は、王女とご令嬢たちによる、壮大なスケールの「お遊び」に巻き込まれてしまったらしい……。
≪設定≫
テオドール…黒の聖騎士。従騎士のジュールを溺愛している。20歳。
ジュール・ダンデス…黒の聖騎士の従騎士。黒の聖騎士に密かに想いを寄せているが、ずっとその気持を隠し続けてきた。18歳の誕生日を迎えたばかり。
呼び方※ここ重要※
テオドール→ジュール・・・「ジュール」(呼び捨て、敬語は一切ナシ!)
ジュール→テオドール・・・「聖騎士様」もしくは「テオドール様」(敬意を持って!)
――これだけ!?
俺の疑問に気づいたのか、シャルロット殿下は手にしていた扇で口元を隠した。
「申し訳ありません。お二人が選ばれるのは、きっと1番に違いないと考え、そちらの設定にかなりの時間と労力を割いてしまったので……。
ですから、あとの細かいことはお二人のアドリブにお任せします! それとも、いまからでも禁断の兄弟愛に変更……」
「いえ、結構です」
テオドールがシャルロット王女の言葉を遮る。
1番の方の設定集はどうなっているのか。たしかに俺に手渡された1枚のペラペラの設定集より、随分分厚い気がする。
俺は少しだけ気になったが、きっとこれはこのまま知らない方がいいことに違いない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
というわけで……。
「ジュール」
「はい、聖騎士様」
「「「「きゃーーーーーっ!!!!」」」」
王女と3人のご令嬢は、一斉にその場にへなへなと倒れ込んだ。
「……」
テオドールの従騎士になりきるために、黒の騎士団服(マントなし)に着替えさせられた俺。
騎士服には縁がなかった俺は、実を言うとちょっとだけ興奮していた。まるで俺も聖騎士団の団員になったみたいだ!
「では、黒の聖騎士、あとはあなた方にお任せします。では、良い一日を!」
「「「幸運を祈ります。黒の聖騎士」」」
「御意!」
恭しく首を垂れるテオドールにならって、俺もお辞儀をする。
ーーそして俺たちは、あっさり王女たちから解放された……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「わー、この騎士服、もらえるのかな? テオ、せっかくだし、このまま帰らずに王都で買い物でもしていく?」
聖騎士団の制服のまま馬車に乗りこんだ俺は、にまにましてテオドールの隣に座った。
「あれ、どうしたの……? テオ……」
「ジュール……」
なにか言いたげな表情のテオドール。
ーーそうだ、まだシャルロット王女との約束は続いているのだった。
シャルロット王女に忠誠を誓っているテオドール。真面目なテオドールはきっとこのお芝居ごっこを最後までやり遂げるつもりなのだ。
ーーここは叔父として、いや婚約者としてぜひとも協力せねばなるまい!
「あ、申し訳ありません。聖騎士様……。
俺っ、いや、私としてはこのまま別宅には帰らずに、王都にでも寄りたいと思っているのですが? 聖騎士様はいかがでしょう?」
俺の言葉に、テオドールはすぅっと息を吸い込んだ。
「ジュール、私がこんな君を人前にさらせるとでも? 君を王都に連れ出したりしたら、あっという間に良からぬ者たちに狙われてしまう……。私にはそんなことは到底できないっ!」
ーー聖騎士仕様のテオドールってば、こんな喋り方をするんだな。それにしてもすっかり役に入り込んでいるようだ。
まるで俺の知らないテオドールみたいで、俺はちょっとドキドキしていた。
「申し訳ありませんっ、出過ぎたことを申し上げました」
ーー従騎士って実際よく知らないけど、騎士の専属のお付き係みたいなものだよな? こんな喋り方で合ってるのだろうか?
「いやっ……、いいんだ……」
テオドールはどこか苦しげな顔つきで、額にかかる前髪をかきあげた。
それにしても、さっきからテオドールの息遣いがかなり荒い。お菓子も全然食べていなかったようだし、どこか具合でも悪いのだろうか?
「聖騎士様、それではダンデス家の本宅にでも寄りませんか?
ぜひ私の家族にもこの姿を見せたいと思います」
シャンタルお姉様が今の俺を見たらどんな顔をするだろうか。今日は用事がないので家にいるはずだ。俺はシャンタルお姉様の驚く顔を想像して思わずニヤついてしまった。
が……、
「ジュールっ!!」
「ひっ!!」
突然、テオドールは俺に覆いかぶさってきて、俺の両手をひとまとめにして拘束した。
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