【完結】究極のざまぁのために、俺を捨てた男の息子を育てています!

.mizutama.

文字の大きさ
上 下
146 / 165
【番外編】

シャルロット王女のサプライズパーティ その4

しおりを挟む
「2番でお願いします!」

 なぜか即答するテオドール。



 そして俺は……、混乱していた。

 血縁関係!? 主従関係!? そして、どうして二つとも「禁断」の文字がついているのか!?

 っていうか、そもそも設定って一体ナニ!?


「あら、2番、ですか……。私はどちらかというと1番の方をオススメしたかったのですが……」

 少し……、いや、かなりがっかりした様子のシャルロット王女。


「では、こちら設定集ですわ!」

「ジュール卿のお召し物はこちらです!」

 訳の分からないまま、ご令嬢たちからあれやこれやと手渡される俺……。


「あのっ、殿下! 俺にはなにがなんのことやら、さっぱり、わからないのですが!」

 俺の言葉にシャルロット王女はくるりと振り向いた。

「この魔法が解けるのは今日の深夜零時。それまで、ジュール卿はこの設定にある通り、黒の聖騎士の従騎士エクスワイアとしてふるまってください。
良いですか? 今この時から、魔法が解けるその時までは、貴方はもう次期ダンデス伯爵のジュール卿ではありません。
ーージュール卿、いえ、ジュール、これが私からの『ちょっとしたお願い』ですわ」

「はあ、従騎士、ですか……」

 俺は仕方なくその設定集とやらに目を落とした。


 ――どうやら俺は、王女とご令嬢たちによる、壮大なスケールの「お遊び」に巻き込まれてしまったらしい……。



≪設定≫

 テオドール…黒の聖騎士。従騎士のジュールを溺愛している。20歳。
 ジュール・ダンデス…黒の聖騎士の従騎士。黒の聖騎士に密かに想いを寄せているが、ずっとその気持を隠し続けてきた。18歳の誕生日を迎えたばかり。

 呼び方※ここ重要※
 テオドール→ジュール・・・「ジュール」(呼び捨て、敬語は一切ナシ!)
 ジュール→テオドール・・・「聖騎士様」もしくは「テオドール様」(敬意を持って!)




 ――これだけ!?

 俺の疑問に気づいたのか、シャルロット殿下は手にしていた扇で口元を隠した。

「申し訳ありません。お二人が選ばれるのは、きっと1番に違いないと考え、そちらの設定にかなりの時間と労力を割いてしまったので……。
ですから、あとの細かいことはお二人のアドリブにお任せします! それとも、いまからでも禁断の兄弟愛に変更……」

「いえ、結構です」

 テオドールがシャルロット王女の言葉を遮る。

 1番の方の設定集はどうなっているのか。たしかに俺に手渡された1枚のペラペラの設定集より、随分分厚い気がする。

 俺は少しだけ気になったが、きっとこれはこのまま知らない方がいいことに違いない。





 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 というわけで……。


「ジュール」

「はい、聖騎士様」


「「「「きゃーーーーーっ!!!!」」」」

 王女と3人のご令嬢は、一斉にその場にへなへなと倒れ込んだ。


「……」

 テオドールの従騎士になりきるために、黒の騎士団服(マントなし)に着替えさせられた俺。

 騎士服には縁がなかった俺は、実を言うとちょっとだけ興奮していた。まるで俺も聖騎士団の団員になったみたいだ!


「では、黒の聖騎士、あとはあなた方にお任せします。では、良い一日を!」

「「「幸運を祈ります。黒の聖騎士」」」

「御意!」

 恭しく首を垂れるテオドールにならって、俺もお辞儀をする。


 ーーそして俺たちは、あっさり王女たちから解放された……。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「わー、この騎士服、もらえるのかな? テオ、せっかくだし、このまま帰らずに王都で買い物でもしていく?」

 聖騎士団の制服のまま馬車に乗りこんだ俺は、にまにましてテオドールの隣に座った。

「あれ、どうしたの……? テオ……」

「ジュール……」

 なにか言いたげな表情のテオドール。


 ーーそうだ、まだシャルロット王女との約束は続いているのだった。

 シャルロット王女に忠誠を誓っているテオドール。真面目なテオドールはきっとこのお芝居ごっこを最後までやり遂げるつもりなのだ。

 ーーここは叔父として、いや婚約者としてぜひとも協力せねばなるまい!


「あ、申し訳ありません。聖騎士様……。
俺っ、いや、私としてはこのまま別宅には帰らずに、王都にでも寄りたいと思っているのですが? 聖騎士様はいかがでしょう?」

 俺の言葉に、テオドールはすぅっと息を吸い込んだ。



「ジュール、私がこんな君を人前にさらせるとでも? 君を王都に連れ出したりしたら、あっという間に良からぬ者たちに狙われてしまう……。私にはそんなことは到底できないっ!」


 ーー聖騎士仕様のテオドールってば、こんな喋り方をするんだな。それにしてもすっかり役に入り込んでいるようだ。

 まるで俺の知らないテオドールみたいで、俺はちょっとドキドキしていた。

「申し訳ありませんっ、出過ぎたことを申し上げました」

 ーー従騎士エクスワイアって実際よく知らないけど、騎士の専属のお付き係みたいなものだよな? こんな喋り方で合ってるのだろうか?


「いやっ……、いいんだ……」

 テオドールはどこか苦しげな顔つきで、額にかかる前髪をかきあげた。

 それにしても、さっきからテオドールの息遣いがかなり荒い。お菓子も全然食べていなかったようだし、どこか具合でも悪いのだろうか?

「聖騎士様、それではダンデス家の本宅にでも寄りませんか?
ぜひ私の家族にもこの姿を見せたいと思います」

 シャンタルお姉様が今の俺を見たらどんな顔をするだろうか。今日は用事がないので家にいるはずだ。俺はシャンタルお姉様の驚く顔を想像して思わずニヤついてしまった。

 が……、

「ジュールっ!!」

「ひっ!!」

 突然、テオドールは俺に覆いかぶさってきて、俺の両手をひとまとめにして拘束した。







しおりを挟む
感想 62

あなたにおすすめの小説

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

将軍の宝玉

なか
BL
国内外に怖れられる将軍が、いよいよ結婚するらしい。 強面の不器用将軍と箱入り息子の結婚生活のはじまり。 一部修正再アップになります

処理中です...