144 / 165
【番外編】
シャルロット王女のサプライズパーティ その2
しおりを挟む
「ええっ!? じゃあテオは俺の代わりに、俺の洋服を自分の側に置いておきたかったって、そういうこと?」
「はい……、大変申し訳ありません」
うなだれるテオドール。
羽織っただけのシャツからは、見事な筋肉がちらちら見えていて、なんだか淫靡な雰囲気ですらある。
テオドールによると、俺がエディマに行っていた間、寂しくてたまらなくなったテオドールはある日、俺の部屋のクローゼットに入った。そして、そこで俺がよく着ていた洋服を目の当たりにして、不思議な感覚に包まれたという。そして、俺の服を手元に置くことで、俺がそばにいるような気がして、そこからずっと俺の洋服を持ち歩く生活が続いていた……らしい。
「だから、俺の服は全部新しくなってたんだね。わざわざそんなこと、する必要なかったのに……」
だが、俺はお気に入りだった青い上着を手にして、ふと違和感を覚えた。
――あまりにも、くたびれている。
テオドールは俺と目を合わせないように、ずっと下を向いている。
「あのさ、テオ。テオはこの洋服をどうしてたの? ずっと自分のクローゼットにかけていただけ?」
「……」
返答は、ない。
ということは、たぶん、きっと、……そういうことなのだろう。
テオドールは、きっと俺の洋服を俺の代わりとして、あれやこれや……。
「叔父様っ! 叔父様は俺が嫌いになりましたかっ!?
叔父様の洋服にすら手をかけるような俺に、叔父様は幻滅されたでしょうかっ!?」
「……っ!」
真剣な瞳で見つめられ、俺は思わず顎を引いた。
「俺はっ、叔父様のことを恋しく思うがあまり……っ、叔父様に対して不敬なことを……っ!
俺はっ、叔父様に嫌悪されて当然な人間ですっ!!」
両手を床につき、肩を落とすテオドールを、俺は思わず抱きしめていた。
「ううん、テオっ! テオが謝る必要なんて、ないよ!
悪いのはあんな事件に巻き込まれてテオと会えなくなった俺だし、それに……、
俺はちょっとうれしい。テオがそこまで、俺のことを想ってくれていたなんて!」
俺の言葉に顔をあげたテオドールの光り輝くような笑顔!!
「叔父様っ、愛してます!」
きつく、抱きしめられる。
「俺もっ、愛してる、テオ!」
テオドールの体温が、俺に伝わってくる……。
――だが俺はこの時知らなかった。
聖教会の聖騎士執務室のテオドール専用ロッカーには、昔俺がお気に入りだったネグリジェがいまだそこに掛けられており、
偶然それを目にしてしまった団員たちから、俺とテオドールの性癖についてひそひそされているいうことに!!
「叔父様、夜までなんて、もう、待ちきれません、叔父様……」
テオドールは俺を軽々と抱き上げると、そのまま寝台に移動した。
唇が触れあうと、お互いにもう歯止めがきかなくなった。
「テオっ、好き…‥、全部好きっ!」
俺はテオドールのシャツを脱がせ、その美しい身体を撫でた。
テオドールは俺の顔中にキスの雨を降らせた。
「叔父様っ……、可愛い叔父様を、全部、俺に見せて……」
テオドールが俺のズボンに手をかけたとき……、
「ジュール様っ、テオドール坊ちゃまぁ! 王室から急ぎの手紙が届きましたよーっ!」
ドンドンと無遠慮に扉がノックされた。
「……チッ!」
舌打ちとともに、テオドールが俺の上からどく。
またもやテオドールにすっかり流されかけていた俺は、エマによって助けられたのだった……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
≪招待状≫
朝摘みのブルーベリーの美味しい季節となりました。お二人にはお変わりなくお過ごしのこととお慶び申し上げます。
さて この度 黒の聖騎士の婚約を記念して、ちょっとしたサプライズパーティーを催すことといたしました。
ご多忙とは存じますが ぜひご出席くださるようお願い申し上げます。 ~シャルロット~
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
サプライズパーティ?
俺の頭のなかはハテナでいっぱいになる。
サプライズパーティとは、事前告知なく、突然祝われてびっくりする、というパーティのはずである。ということは、これはもはやサプライズパーティではない。
しかしシャルロット王女がサプライズパーティであると断言しているのであれば、きっとなにか理由があるのだろう。
――なにか招待客をびっくりさせるような仕掛けがあるとか……?
そして俺は、パーティの開催日時を確かめてまたびっくりした。
なんとパーティは今日の午後! 今から急いで準備して、ちょうど間に合うくらいだ。
当然俺は、王女からのご招待を断れるような立場にない!
「テオ、部屋の片づけは後回しだ! すぐに出発しよう!」
「……」
不満そうなテオドール。俺と二人でいる時間を邪魔されたとでも思っているのだろう。きっと。
俺はそんなテオドールを急かして、黒の聖騎士団の制服を着せ、俺自身はテオドールがそろえてくれた上等の外出着に着替えた。
馬車を走らせ、王宮に向かった俺たち。
想像通り、王室の豪華な応接室では、シャルロット殿下以外にも3人のお友達のご令嬢が、満面の笑みで待ち構えていた。
「はい……、大変申し訳ありません」
うなだれるテオドール。
羽織っただけのシャツからは、見事な筋肉がちらちら見えていて、なんだか淫靡な雰囲気ですらある。
テオドールによると、俺がエディマに行っていた間、寂しくてたまらなくなったテオドールはある日、俺の部屋のクローゼットに入った。そして、そこで俺がよく着ていた洋服を目の当たりにして、不思議な感覚に包まれたという。そして、俺の服を手元に置くことで、俺がそばにいるような気がして、そこからずっと俺の洋服を持ち歩く生活が続いていた……らしい。
「だから、俺の服は全部新しくなってたんだね。わざわざそんなこと、する必要なかったのに……」
だが、俺はお気に入りだった青い上着を手にして、ふと違和感を覚えた。
――あまりにも、くたびれている。
テオドールは俺と目を合わせないように、ずっと下を向いている。
「あのさ、テオ。テオはこの洋服をどうしてたの? ずっと自分のクローゼットにかけていただけ?」
「……」
返答は、ない。
ということは、たぶん、きっと、……そういうことなのだろう。
テオドールは、きっと俺の洋服を俺の代わりとして、あれやこれや……。
「叔父様っ! 叔父様は俺が嫌いになりましたかっ!?
叔父様の洋服にすら手をかけるような俺に、叔父様は幻滅されたでしょうかっ!?」
「……っ!」
真剣な瞳で見つめられ、俺は思わず顎を引いた。
「俺はっ、叔父様のことを恋しく思うがあまり……っ、叔父様に対して不敬なことを……っ!
俺はっ、叔父様に嫌悪されて当然な人間ですっ!!」
両手を床につき、肩を落とすテオドールを、俺は思わず抱きしめていた。
「ううん、テオっ! テオが謝る必要なんて、ないよ!
悪いのはあんな事件に巻き込まれてテオと会えなくなった俺だし、それに……、
俺はちょっとうれしい。テオがそこまで、俺のことを想ってくれていたなんて!」
俺の言葉に顔をあげたテオドールの光り輝くような笑顔!!
「叔父様っ、愛してます!」
きつく、抱きしめられる。
「俺もっ、愛してる、テオ!」
テオドールの体温が、俺に伝わってくる……。
――だが俺はこの時知らなかった。
聖教会の聖騎士執務室のテオドール専用ロッカーには、昔俺がお気に入りだったネグリジェがいまだそこに掛けられており、
偶然それを目にしてしまった団員たちから、俺とテオドールの性癖についてひそひそされているいうことに!!
「叔父様、夜までなんて、もう、待ちきれません、叔父様……」
テオドールは俺を軽々と抱き上げると、そのまま寝台に移動した。
唇が触れあうと、お互いにもう歯止めがきかなくなった。
「テオっ、好き…‥、全部好きっ!」
俺はテオドールのシャツを脱がせ、その美しい身体を撫でた。
テオドールは俺の顔中にキスの雨を降らせた。
「叔父様っ……、可愛い叔父様を、全部、俺に見せて……」
テオドールが俺のズボンに手をかけたとき……、
「ジュール様っ、テオドール坊ちゃまぁ! 王室から急ぎの手紙が届きましたよーっ!」
ドンドンと無遠慮に扉がノックされた。
「……チッ!」
舌打ちとともに、テオドールが俺の上からどく。
またもやテオドールにすっかり流されかけていた俺は、エマによって助けられたのだった……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
≪招待状≫
朝摘みのブルーベリーの美味しい季節となりました。お二人にはお変わりなくお過ごしのこととお慶び申し上げます。
さて この度 黒の聖騎士の婚約を記念して、ちょっとしたサプライズパーティーを催すことといたしました。
ご多忙とは存じますが ぜひご出席くださるようお願い申し上げます。 ~シャルロット~
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
サプライズパーティ?
俺の頭のなかはハテナでいっぱいになる。
サプライズパーティとは、事前告知なく、突然祝われてびっくりする、というパーティのはずである。ということは、これはもはやサプライズパーティではない。
しかしシャルロット王女がサプライズパーティであると断言しているのであれば、きっとなにか理由があるのだろう。
――なにか招待客をびっくりさせるような仕掛けがあるとか……?
そして俺は、パーティの開催日時を確かめてまたびっくりした。
なんとパーティは今日の午後! 今から急いで準備して、ちょうど間に合うくらいだ。
当然俺は、王女からのご招待を断れるような立場にない!
「テオ、部屋の片づけは後回しだ! すぐに出発しよう!」
「……」
不満そうなテオドール。俺と二人でいる時間を邪魔されたとでも思っているのだろう。きっと。
俺はそんなテオドールを急かして、黒の聖騎士団の制服を着せ、俺自身はテオドールがそろえてくれた上等の外出着に着替えた。
馬車を走らせ、王宮に向かった俺たち。
想像通り、王室の豪華な応接室では、シャルロット殿下以外にも3人のお友達のご令嬢が、満面の笑みで待ち構えていた。
80
お気に入りに追加
1,462
あなたにおすすめの小説
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。

【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています
八神紫音
BL
魔道士はひ弱そうだからいらない。
そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。
そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、
ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。
鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?
桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。
前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。
ほんの少しの間お付き合い下さい。
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(10/21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
※4月18日、完結しました。ありがとうございました。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる