【完結】究極のざまぁのために、俺を捨てた男の息子を育てています!

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第136話 闇の属性

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「なん、だと……!」

 マリユスは、野獣のような唸り声をあげた。
 いままでずっと余裕綽々といった態度を崩さなかったマリユスだったが、今となってはもう、その全身から沸き起こる怒りを隠そうともしていない。

 俺は、テオドールの影響なのか、さきほどまでの身体の拘束はすっかり解かれていた。



「貴方はご存じないかもしれませんが、私はもう『ナイム』ではありません。
私はテオドールです」

 テオドールは俺をその背に隠すように、マリユスの前に立ちはだかった。


「せっかく俺が付けた名を捨てたとは! お前をアルボン家に託したのはやはり間違いだったな!」

「私がなぜ『ナイム』の名を捨てることになったか、そのことを話せば、私がなぜあの拘束をいとも簡単に解くことができたのか、あなたにもきっとお分かりになることでしょう」

 テオドールは片手を上げる。その手のひらの上には、黒い魔力の珠が集められていた。


「テオ!?」

「お前っ、魔力がっ!」

 
 ――テオドールは、魔法はほとんど使えないはずだ。それなのに……!


 大きくなった魔力の珠をのせたまま、テオドールがすっと手のひらをマリユスに向ける。

 それと同時に、大きな爆発音がマリユスの背後でした。
 マリユスに当たっていればほぼ即死だっただろう。


「……闇魔法、なのかっ! 貴様っ……、どうしてっ!」

 マリユスは歯ぎしりする。


「私が闇の魔力に目覚めたのは5歳の時。ご存知の通り、強大な威力を持つ闇魔法は使いこなすことが困難なため、魔法の中でも禁忌とされています。
アルボン家はそのことを知ったすぐに、俺を聖教会へ預け、魔力を封印しました。
その際テオドールと名を改め、それ以降、私はほとんど魔力を持たぬものとして生活していました。ですが……」

 テオドールはさきほどまで魔力を集めていた手のひらを、じっくりと眺めた。

「聖騎士になる試練の際、私はドラゴンから深手を負い、一時瀕死の状態となりました。
その際、封印された闇の魔力が再び目覚め、私はドラゴンを倒すことができたのです……」


 俺はナイムの背中にあった深い爪痕を思い出していた。

 あれはドラゴンにつけられた、テオドールの背中の傷だったのだ……。


 ――ナイムは、テオドールだった……。


「あなたの血筋は確実に私に受け継がれていますよ。これでご満足ですか? お父様……」

 テオドールは冷徹ともいえる眼差しを、マリユスに向ける。


「貴様っ、どれだけ俺を愚弄する気だ……。テオドール、お前が魔力を使えるというのなら、俺も遠慮はいらないな。
どれ、お前の実力を、父親の俺が確かめてやろう!」

 マリユスは両手を天に掲げると、詠唱を始める。

 ものすごい魔力の渦が、マリユスの頭上に広がっていく。


「おもしろい! 私自身も闇の魔力の力はすべて試したことがないのです。
お父様、ここで帳を下ろしてしまったことを、あとで後悔しても知りませんよ……」

 テオドールの瞳が一瞬だけ赤く光った。
 同時にマリユスが作った魔力の渦よりずっと大きな黒い空間が、ぽっかりとそこに現れた。

「冥界へと通じる経路を開きました。
ここに囚われたが最後、死ぬこともできず、永遠に冥界をさまよう影となるのです。
あなたに、その覚悟がありますか……?」

「そんな与太話は、俺の攻撃をかわしてからにしろッ!」

 マリユスが両手を振り下ろす。


 が、しかし、その暴風の渦は、テオドールが作った闇の空間にたやすく吸い込まれてしまった。


「……っ!!」

「叔父様のおっしゃる通り、私も到底あなたを許すことはできません!
永遠に冥界の影となり、さまよい続けるがいい! それがあなたのような下種にはふさわしい道だ!」

 テオドールは、両手を合わせると目を閉じ、その魔力をすべて闇の空間へと注ぎ込む。
 その闇の空間はテオドールに呼応するように、どんどんと膨れ上がっていった。



「嫌だっ、やめろっ! ジュールっ、助けてくれっ、ジュールっ!」

 マリユスの悲痛な叫びに俺は耳を塞ぎたくなる。


「死すらも、お前には贅沢すぎる裁きだ。今までの行いをせいぜい悔いておけ!」

 闇の空間がマリユスに迫る。


「テオっ! もうやめろっ!」


 俺がテオドールの背中にしがみついたその時、俺たちとマリユスの間に七色の光があらわれた。




「そこまでにしておきなさい。黒の聖騎士……」


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