【完結】究極のざまぁのために、俺を捨てた男の息子を育てています!

.mizutama.

文字の大きさ
上 下
112 / 165

第112話 偽りの愛

しおりを挟む
「あのっ、俺の話がなにか……っ」

「ジュール様、私がここに来た目的を、お話してもいいですか?」

 ぞっとするほど静かな口調だった。

「はい……」

「ジュール様と同じです。私にも、心の底から愛する人がいます」

 その告白は、うめき声にも似ていた。

「愛する、人……」

「私は、少年だったころからずっとその方の側にいて、ずっとその方をお慕いしていました。
その方は本当に優しくて、もしかしたら愛されているのでは、と思い上がっていたこともありました。でも、ようやく分かったんです。
その方は、私を通じて、ずっと別の人間を見ていたのだと」

「別の人間……?」

「その方は、私によく似たその男の面影を、ずっと私に探していたのでしょう。
私は単に、その男の身代わりでしかなかった……。その方は、目の前から突然姿をくらましたあの男を、今でも変わらず思い続けている…‥」

「そんなことが……」

 男の告白に、俺は同情を禁じえなかった。

「ジュール様。ジュール様は、私のお慕いする方にとても良く似ているんです。ですから、私はこの仕事を引き受けました。
ジュール様は嫌悪されるでしょうか? こんなよこしまな理由から、貴方をこの腕に抱こうとするこの私を……」

 俺はかぶりを振った。

「いえ、俺の方こそ、そんな事情があったのに……、すみません。
俺でよければ、その人の代わりにっ……」

 最後まで言わせずに、男は俺の首筋に吸い付いてきた。

「ジュール様っ、もしよろしければっ、私を、貴方が愛するその男の名で呼んでいただいて構いませんっ」

 男は性急に、俺のシャツを脱がせていく。

「あっ……、でも……!」

「私も心の中で、愛する方の名前を呼ばせていただきます。どうか……」

 俺は鎖骨に舌を這わせる男の頭を抱き寄せていた。

「……あなたの、名前を……、教えてください」

 男の動きがぴたりと止まった。

「私の……?」

 俺が――、男が愛する人にそっくりだという俺が、その男の名を呼ぶことで、少しでもその男の慰めになればいい……、そんなたわいない考えから出た言葉だった。

 だが……、

「ジュール様、……私ではその男の代わりにすらならないということですか?」
 
 ほの暗い男の瞳に、俺の背筋がゾクリと冷えた。

「いえ、そういう、意味ではないんです。ただ、俺は……」

 ――この男を、テオドールの代わりには、したくなかった。


「ナイム、と申します」

 なにか、言ったそばから、そのことを後悔するような口ぶりで男は言った。

「ナイム……、……っ!」

 名を呼んだ俺の唇を、ナイムが塞ぐ。


「はっ、うっ、あ……」

 ナイムの口づけは荒々しく、俺はあっという間に咥内のすべてを舐めつくされていた。

 唇を離すと、ナイムは俺を情欲に濡れた瞳で見下ろした。


「ジュール様、もう後戻りは、できませんよ。
私は、今日ここで、あなたのすべてを奪います!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ふぅっ、あ、あ、はぁっ、う、あ……!」

 明かりを落とした部屋には、俺の喘ぎ声だけが響いていた。

 シャツを脱ぎ捨てたナイムは、息を飲むほど美しい肉体だったが、そのところどころに、魔獣に負わされたと思われる傷があった。
 特に背中に手を回したときに俺の手のひらに触れた古傷はかなり深いもので、右肩から左の腰のあたりまで斜めに大きく鋭い爪痕が残されていた。

「うっ、あ……、ナイムっ、ああっ、もうっ……」

 俺は、ナイムの肩口に額を押し付ける。

 ナイムは俺の服を脱がせると、俺の全身にくまなく舌を這わせていた。その愛撫はとても執拗で、俺にひっきりないに嬌声を上げさせられた。

 一方で、ナイム自身はほとんど何も話さず、ひたすら俺への愛撫を続け、俺の抗議の声に耳を傾ける様子もない。

「ナイムっ……、お願い、もう、いいからっ……、早く……、んあっ!」

 俺はナイムの下腹部に手を伸ばす。
 もうすでにそこは、これ以上なく熱くたぎっている。
 それなのに、ナイムは俺の手をやんわりとどけて、俺の両脚を広げさせた。

「あっ、もうっ、ダメっ、そんなことしたら……っ!!」

 ためらいもせずに、すでに達しそうになっている俺の中心部をぱくりと咥えこむ。

「あっ、あ……、ああ、もう、出るっ、やだっ、やだっ、ナイム、離してっ!」

 俺はじたばたと足をもがくが、ナイムにがっちりと押さえつけられているため、身動きが取れない。

「はあっ、あ、ヤダっ、先にイキたくないっ、ナイムっ、お願い、中に、中に欲しいっ!」

 俺がナイムの髪を引っ張ると、ナイムは俺自身の先端をちゅうっと吸い込んだ。

「うあ、あ、あああああああああああああっ!」

 ひとたまりもなく、俺はナイムの口の中に、射精してしまった。


「あ、あ……、あ……」

 生理的な涙が、頬を伝った。

 ナイムはごくりと俺の精を飲み干すと、今度は愛し気に俺のペニスをぺろぺろと舐め始める。

「や、あっ、もうっ、だめ! 出たからっ! 舐めないでっ、ナイムっ……」

 俺がナイムの髪をつかむ。しならくして、ようやくナイムは口を離した。

「あっ、はあっ、はあっ……」

 だがその唇は、そのまま俺への後ろへと降りていった。

「ひゃあっ、あ、あっ、そこ、やだっ! ひゃ、あ、んんっ!!」

 ナイムのとがらせた舌が、俺の後孔に差し込まれる。

「そんなことっ、ああああっ、しなくて、いいっ、からっ、あっ、ああ!」

 早くナイムが欲しいのに、ナイムは嫌になるほどじっくりと時間をかけて俺の身体を開いていった。

 ナイムの舌で溶かされるようにぐじゅぐじゅになった俺の全身は、ふわふわとしてもうすでに現実味がなくなっていた。

「あ、あ、あ……!」

 ナイムの熱くて湿った舌が、俺の中の浅いところをいじめてくる。

「ナイムっ、あ、ああっ、や、やあっ!」

 緩急をつけて出し入れされると、まるで舌に犯されているようだった。

「あっ、んあ、あっ、ひっ、ああ!」


 じゅるじゅると強く吸われたり、中に深く差し込まれて動かされると、得体のしれない軟体の生物に脳内まで蹂躙されているような気分になる。

「ナイムっ、意地悪しないでっ、もうっ、欲しいっ、ナイムのが欲しいよっ!早く入れて!」


 きっと俺の淫紋はいま、いやらしく光り輝いている。

 ――男が欲しいと、男の精が欲しいと、訴えている。


 ようやく俺の懇願が通じたのか、ナイムは身体を離すと、開かせた俺の太ももを撫でた。

「ナイム……、ああ、早く来て」

 俺はまるでナイムに見せつけるように自分で両足を抱えて、その部分を晒した。
 そこは男を待ちわびるかのように、ひくひくと拍動を繰り返していた。

「……くっ!」

 ナイムが顔を歪ませる。

 俺の乱れきった姿を見て軽蔑したに違いない。でも、それでもかまわなかった。

 ――俺は、今、目の前の男が欲しい!


「もう、待ちきれないんだ。すぐに入れて! そしてナイムのでいっぱいかき回して!」

 俺がぺろりと唇を舐めると、ナイムが獲物を前にした獣のようにとびかかってきた。


「ジュール様っ、あなたをっ、食らいつくしてやる!!」





しおりを挟む
感想 62

あなたにおすすめの小説

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。 領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。 *** 王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。 ・ハピエン ・CP左右固定(リバありません) ・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません) です。 べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。 *** 2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない

てんつぶ
BL
 連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。  その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。  弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。  むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。  だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。  人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

処理中です...