106 / 165
第106話 ジュールの愛
しおりを挟む
「……っ!!」
――もしかして、もしかしなくても、昨日の俺とテオドールのこと、お姉様にすっかり知られてる!?
「ねえ、ジュール。いくらその男がいい男だとしても、所詮は済む世界が違う人間なのよ。いくら好きでも、生涯を共にすることはできないの!
それに比べてテオドールはどう? 将来有望、すでに聖騎士としての信頼度も抜群! 知ってる? 聖騎士ってものすごい額の報酬をもらえるらしいの!
ま、それは置いといて……、テオドールは真剣に、ジュールのことを一生守ると誓っているわ。
たしかにちょっと、思い込みは激しそうなのと、嫉妬心が強すぎるきらいはあるけどそれくらいなんだって言うの!? あんな極上物件そうそうあるもんじゃないわ!
ジュールっ、この国の娘はみんなテオドールに夢中よ!
それを……、あなたという子はっ! どうして、嫌がるの? 何がそんなに不満なのっ!?」
「お姉さま、その、俺は……」
「もちろんまだ淫紋は消えていないんでしょ? それなら、遅かれ早かれあなたは誰かに抱かれなきゃいけないのよ! その相手が、どうしてテオドールじゃ駄目なの? ええ、わかってる、お姉さまはわかってるわ。向こうの国の男はすごく情熱的だって聞くわ。そりゃ、あっちの方のテクニックもすごかったんでしょう! 忘れられないっていうジュールの気持ちも十分理解できる。しかも、テオドールに無理やり別れさせられたんですってね。つらかったでしょう。その男をひどく恋しく思うあなたの気持ちもわかるわ。失恋ってつらいわよね。私も経験があるわ……って、そんなことじゃなく!!
そう、ジュール、テオドールはこれからなのよっ! ああいうことは回数を重ねればきっと上手になるわ! それに、そっちの拙さは、若さと体力で十分カバーできるわ! だからっ……」
「全然違うんですお姉さまっ!!!!」
俺は隣に座るシャンタルの手を握りしめた。
「ジュール!?」
「お姉さま、俺はっ!! テオドールに幻滅されたくないんですっ!」
言ったそばから、ポロリと涙が頬を伝った。
「ジュールっ!?」
「お姉ざま゛ぁ゛!! 俺はァ! 俺だってぇ! 本当はぁ! テオに抱かれたかったんですっ!
でもぉ! うっ、ぐすっ、もし、テオがっ、俺をっ、抱いたらぁ、絶対に、幻滅されて、嫌われ、るぅっ!!
うっく、う゛、う゛、うえぇぇんっ!!!!」
「まああああっ、なんてこと!!!!」
シャンタルは俺の背中に手を回し、よしよしと抱きしめてくれた。
「う゛ぅ゛っ、テオはっ、立派な聖騎士なのに、俺はっ、仕事もしなくて引きこもってて、しかもっ、淫紋まであって、とっかえひっかえ男とヤりまくってて……、そんなの、そんなのテオにとって、最悪な物件じゃないですかあっ!
せっかくシャルロット殿下と結婚できそうなのに、俺なんか相手にしてたら、テオは絶対、幸せになれないっ! うわああああんっ!」
「まあ、ジュールったら、そんな事を考えていたの?」
シャンタルが、俺の髪を優しく梳いた。
「グスッ、だって、テオドールは俺にとっての唯一の聖域なんですっ! 決して汚してはいけない神聖な場所なんですっ!
ひっ……ひっく……、でも、俺なんかを抱いたら、テオドールは穢れてしまうんですっ!
だからっ、俺はっ、グスッ、絶対っ、ひっ……ひっく……、テオとは、セックスしてはいけないんですっ!!」
「まあ、まあ、あら、あら……」
シャンタルはとんとんと俺の背中をたたくと、ふぅっと息を吐いた。
「驚いたわ。こんなことになっていたなんて……。でもよくわかったわ」
お姉様は優しい声で言うと、俺の耳元に顔を寄せた。
「ジュール、あなた……、テオドールを愛してるのね……」
そのときのシャンタルお姉様の言葉は、ストンと俺の心に落ちてきた。
「俺が……、テオドールを……」
ーーそうか、やっとわかった。
俺はテオドールを愛していたんだ。
もうずっと、前から。
――もしかして、もしかしなくても、昨日の俺とテオドールのこと、お姉様にすっかり知られてる!?
「ねえ、ジュール。いくらその男がいい男だとしても、所詮は済む世界が違う人間なのよ。いくら好きでも、生涯を共にすることはできないの!
それに比べてテオドールはどう? 将来有望、すでに聖騎士としての信頼度も抜群! 知ってる? 聖騎士ってものすごい額の報酬をもらえるらしいの!
ま、それは置いといて……、テオドールは真剣に、ジュールのことを一生守ると誓っているわ。
たしかにちょっと、思い込みは激しそうなのと、嫉妬心が強すぎるきらいはあるけどそれくらいなんだって言うの!? あんな極上物件そうそうあるもんじゃないわ!
ジュールっ、この国の娘はみんなテオドールに夢中よ!
それを……、あなたという子はっ! どうして、嫌がるの? 何がそんなに不満なのっ!?」
「お姉さま、その、俺は……」
「もちろんまだ淫紋は消えていないんでしょ? それなら、遅かれ早かれあなたは誰かに抱かれなきゃいけないのよ! その相手が、どうしてテオドールじゃ駄目なの? ええ、わかってる、お姉さまはわかってるわ。向こうの国の男はすごく情熱的だって聞くわ。そりゃ、あっちの方のテクニックもすごかったんでしょう! 忘れられないっていうジュールの気持ちも十分理解できる。しかも、テオドールに無理やり別れさせられたんですってね。つらかったでしょう。その男をひどく恋しく思うあなたの気持ちもわかるわ。失恋ってつらいわよね。私も経験があるわ……って、そんなことじゃなく!!
そう、ジュール、テオドールはこれからなのよっ! ああいうことは回数を重ねればきっと上手になるわ! それに、そっちの拙さは、若さと体力で十分カバーできるわ! だからっ……」
「全然違うんですお姉さまっ!!!!」
俺は隣に座るシャンタルの手を握りしめた。
「ジュール!?」
「お姉さま、俺はっ!! テオドールに幻滅されたくないんですっ!」
言ったそばから、ポロリと涙が頬を伝った。
「ジュールっ!?」
「お姉ざま゛ぁ゛!! 俺はァ! 俺だってぇ! 本当はぁ! テオに抱かれたかったんですっ!
でもぉ! うっ、ぐすっ、もし、テオがっ、俺をっ、抱いたらぁ、絶対に、幻滅されて、嫌われ、るぅっ!!
うっく、う゛、う゛、うえぇぇんっ!!!!」
「まああああっ、なんてこと!!!!」
シャンタルは俺の背中に手を回し、よしよしと抱きしめてくれた。
「う゛ぅ゛っ、テオはっ、立派な聖騎士なのに、俺はっ、仕事もしなくて引きこもってて、しかもっ、淫紋まであって、とっかえひっかえ男とヤりまくってて……、そんなの、そんなのテオにとって、最悪な物件じゃないですかあっ!
せっかくシャルロット殿下と結婚できそうなのに、俺なんか相手にしてたら、テオは絶対、幸せになれないっ! うわああああんっ!」
「まあ、ジュールったら、そんな事を考えていたの?」
シャンタルが、俺の髪を優しく梳いた。
「グスッ、だって、テオドールは俺にとっての唯一の聖域なんですっ! 決して汚してはいけない神聖な場所なんですっ!
ひっ……ひっく……、でも、俺なんかを抱いたら、テオドールは穢れてしまうんですっ!
だからっ、俺はっ、グスッ、絶対っ、ひっ……ひっく……、テオとは、セックスしてはいけないんですっ!!」
「まあ、まあ、あら、あら……」
シャンタルはとんとんと俺の背中をたたくと、ふぅっと息を吐いた。
「驚いたわ。こんなことになっていたなんて……。でもよくわかったわ」
お姉様は優しい声で言うと、俺の耳元に顔を寄せた。
「ジュール、あなた……、テオドールを愛してるのね……」
そのときのシャンタルお姉様の言葉は、ストンと俺の心に落ちてきた。
「俺が……、テオドールを……」
ーーそうか、やっとわかった。
俺はテオドールを愛していたんだ。
もうずっと、前から。
105
お気に入りに追加
1,457
あなたにおすすめの小説
身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています
林檎を並べても、
ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。
二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。
ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。
彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。
狂わせたのは君なのに
白兪
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。
完結保証
番外編あり
振られた腹いせに別の男と付き合ったらそいつに本気になってしまった話
雨宮里玖
BL
「好きな人が出来たから別れたい」と恋人の翔に突然言われてしまった諒平。
諒平は別れたくないと引き止めようとするが翔は諒平に最初で最後のキスをした後、去ってしまった。
実は翔には諒平に隠している事実があり——。
諒平(20)攻め。大学生。
翔(20) 受け。大学生。
慶介(21)翔と同じサークルの友人。
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません
柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。
父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。
あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない?
前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。
そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。
「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」
今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。
「おはようミーシャ、今日も元気だね」
あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない?
義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け
9/2以降不定期更新
キミと2回目の恋をしよう
なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。
彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。
彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。
「どこかに旅行だったの?」
傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。
彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。
彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが…
彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる