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第95話 再会

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「テオ……、テオ、なんだよね?」

 目の前に立っている聖騎士は、俺の知っているテオドールとは違っていた。

 背は高く、鍛え上げられた肉体は、鞭のようにしなかやだった。
 長めの艶やかな黒髪が目元にかかり、それが得も言われぬ色気を醸し出していた。

 磨き上げられた黒いブーツ、錦糸の刺繍が施された漆黒の騎士服に、揃いのマント。

 何もかもが美しく、いつまでも見ていたいと思えるほどだった。

 俺はただ息をのみ、テオドールのその美しさに目を奪われていた。


「ジュール、叔父様……」

 先に口を開いたのは、テオドールだった。
 喉の奥から、絞り出すような声だった。


「テオ……」

「俺、ずっと叔父様に謝りたくて、でも、叔父様は突然俺の前からいなくなってしまって……。
俺は、叔父様に、どうしても逢いたくて、逢いたくて、逢いたくて……、だから」

 テオドールの顔が、歪む。

「テオっ!」

 俺はたまらず、テオドールに駆け寄り、勢いよくそのまま抱き着いた。
 テオドールの屈強な身体は、びくともせずに俺を受け止めた。

「俺もっ、逢いたくて、逢いたくて、逢いたくて……!
テオに……、ずっと、テオに……、テオ!!」

 テオドールの首にかじりつくように手を回すと、テオドールも強い力で抱き返してくれる。

 漆黒の騎士服は光沢があり、なめらかな手触りで、俺はさきほどオーバンに身体を綺麗にしてもらっておいて本当に良かったと思った。
 ――泥だらけの俺の恰好で、テオドールの美しい姿を汚したくはなかった。


「どこを探しても手詰まりで、八方ふさがりだったあの日……、叔父様のランタンが……、俺に呼びかけたんです!
その時の俺の気持ちは……、きっと言葉では言い尽くせない。
――叔父様、好きです。愛しています。もう絶対に俺から離れないで!」

 テオドールが俺の肩に顔をうずめる。
 俺のシャツが、テオドールの涙で濡れた。


「もう離れない、絶対に! テオ、大好きだよ。俺も愛してる」

 俺の顔は、きっと今涙と鼻水でひどいことになっているだろう。


「もう嫌なんです、こんな、思いは……っ、俺は、叔父様をもう二度と失いたくない……っ!」

 テオドールは静かに、嗚咽を漏らしていた。

「ごめんね、テオドール。俺はもう、どこにも行かない。ずっと、ずっとテオの側にいるから!」


 気が付くと、俺とテオドールは膝をついて教会の中央通路で抱き合っていた。

 涙はとめどなくあふれていた。
 俺たちは互いに離れがたくて、今二人がここにいることが嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて……!





 ――だからその時俺は思っていたんだ。

 これですべてが元通りになると。
 俺とテオドールは、この先、ずっと、ずっと一緒にいるんだと……。




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