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第85話 淫紋の対処
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おでこのひんやりとした感触に目を開けると、ファウロスが濡らした布で俺の顔を拭いてくれていた。
「あ、ジュール。大丈夫なのか?」
ファウロスが心配そうに俺の顔を覗き込む。
「ファウロス、ごめんね……、あれ、ここ、どこ?」
見たこともない空間。
俺はふわふわと寝心地のよいベッドにいた。壁も、カーテンも、ベッドのシーツも、すべてが桃色で、まるで小さな女の子の部屋みたいだと思った。
「ここは、娼館。事情を話して部屋を貸してもらってる」
「娼館っ!?」
俺は驚いた。人生初の娼館に、こんな形で来ることになろうとは!
「とりあえず、水飲む? なんか食べられるか?」
俺は起き上がり、ファウロスから瓶に入った水を受け取る。
「ありがとう。でも、食欲はない、かな……」
俺は倒れた直前のことを思い出す。
ーーファウロスになんて説明したんだっけ……?
「ジュール、その……、淫紋のこと、詳しく説明してくれないか?」
ファウロスが言いにくそうに切り出した。
こうなってしまっては、恥ずかしがっている場合ではない!
「俺……、昔色々とあって、身体に淫紋を刻まれちゃったんだよね。しかも、その淫紋は刻んだ本人にももう解呪できないらしくって、俺はどうすることもできなくて。それでもって、この淫紋のせいで、俺は一月に一度は男の精を身体の中にいれないと、衰弱して死んじゃうんだ!」
「……衰弱、死ぬ……!?」
ファウロスが息を飲む。
「男の精は淫紋の餌なんだって。餌が足りないと、淫紋は俺の生気をどんどん奪っていくんだ。だからいま、それで俺の身体は弱ってて、なんとしても誰かに抱いてもらわないといけないんだけど、この国って男同士にはかなり抵抗があるんだよね……。ファウロス、申し訳ないんだけど、だれか心当たり……」
「ジュール、その淫紋、見せてもらってもいいか?」
ファウロスの真剣な表情に、俺はうなずいた。
履いているズボンをギリギリまで下げて、俺は淫紋が刻まれた下腹部を晒した。
「これ……、すごいな……」
ファウロスがまじまじと俺の下腹部を観察している。
「触らないで。魔力を流したら、その……、おかしくなっちゃうから。……もういい?」
衣服を直そうとする手を、ファウロスが掴んだ。
「なあ、この淫紋って、あんたにあの指輪を贈ったヤツが刻んだんだろ!?」
ファウロスの質問に俺が驚いた。
「えっ、まさか、全然別の人だよっ! だって……」
まあ、別の人だが、マリユスとテオドールは実の親子なので無関係とは言い難いが……。
「え、そうなの? 別のヤツ? へえ、ジュールって、見かけによらず、壮絶な恋愛してきたんだな……。ふーん。それじゃきっと、あの指輪を贈ったやつも今頃気が気じゃないだろうな。気の毒に……」
言いながら、ファウロスは俺の淫紋を人差し指でなぞった。
「ちょっ……、だから触っちゃ駄目だって……、わあっ!」
気づくと、俺はファウロスにベッドの上で押し倒されていた。
「事情はわかった。じゃ、覚悟はいいか?」
ファウロスの長いプラチナブロンドが、俺の頬にかかった。
「覚悟? 覚悟って、何?」
ファウロスの瞳に、みっともない俺の姿が写っている。
ファウロスはその美しい唇の端を釣り上げた。
「俺に抱かれる覚悟、だよ! ジュール、俺は言ったよな。この国で俺はあんたを守るって。あんたの命の危険は、俺が取り除く義務がある。指輪をあんたに贈ったヤツには悪いが、緊急事態だ。ジュールが死んだら、元も子もないからな。
男を抱くのは初めてだけど、ま、なんとかなるだろ!」
ファウロスは俺にまたがったまま、着ていたシャツを脱ぎ捨てた。
褐色の肌に包まれた筋肉質の見事な肉体があらわになる。
「ちょ、ちょ、ちょっと、待って! ま、まだ心の整理がっ!」
俺のシャツのボタンを外そうとするファウロスの手を、俺は掴んだ。
「は? このままじゃ死んじゃうんだろ? 心の整理とかしてる場合じゃねーだろーが!
」
ファウロスは苛ついた表情で、俺の鎖骨をなぞった。
「……っ! だって、ファウロスは、男の俺を抱くの、抵抗あるだろっ!? 俺だって、申し訳ないよ! ファウロスは女の子にもモテモテなのに、俺なんて……」
「はあっ!? 抵抗あるとかそんな悠長なこと言ってる場合かよっ! 男とか女とか、この際そういうのは関係ねーだろ? それとも、なにか? ジュールは俺が相手じゃ不足なのかよっ!?」
ファウロスが力任せに俺のシャツを引っ張ると、糸が切れてボタンが飛んだ。
「……っ!!」
「おいっ、ジュール、まさかさっきのあの変態爺のほうがよかったとか言うわけじゃないだろうなっ!」
「そんなこと、ない! ない……、けど」
「けど?」
ファウロスの手が俺の裸の胸を這い回った。
「ファウロスって独身だよね? 何歳? 婚約者もいないって本当? 付き合ってる人は? もしや心に決めた人がいたりする?」
「は……?」
ファウロスの眉間に深いシワが寄る。
「なんなんだよ、その確認は……」
「だって、だって、俺! 大切な人がいる人とはそういうことしないって、決めて……、んっ」
続きの言葉は覆いかぶさってきたファウロスのキスで封じられた。
「ったく、真面目なんだか、不真面目なんだかわけわかんねー。淫紋刻まれて死にそうなやつが、なに俺の恋人の有無を確認してんだよ!?
……あんたと同じ23歳! 独身、婚約者なし、真面目につきあってる恋人もなし! これで満足か?」
「……っ、ちゃんと、俺の話聞いて……っ」
「うるせー口だな!」
ファウロスは言うと、もう一度口づけてくる。
今度は熱い舌が絡み合う。激しくて情熱的なキスに、俺の身体から力が抜けた。
「んっ、はあっ……、ファウ、ロスっ……、待って、まだ……話が……」
「いい加減、諦めろ。ほら、力抜けよ……。俺が全部責任取ってやるから」
ファウロスの唇が、首筋に降りてくる。
熱い吐息に俺はすべて飲み込まれそうになる。
「……ファウロスっ、ちょっと、あ、あ……っ」
「綺麗な白い肌だな……、十分、イケそうだよ……っ」
ファウロスが、チュ、チュと音を立てながら、俺の首筋にいっぱいキスをする。
「あっ、んっ……」
「ジュールって、エッチのときは声が高くなるんだな。……カワイイ」
ーーやばい、このままじゃまた完全に流されて……。
このままじゃ駄目だっ!!!!
「っ……!! 俺の話を聞けって言ってんだろ!!」
俺はファウロスの髪を掴むと、無理やり俺から引き離した。
「……っ、今度は何だよっ!」
「ちゃんと、話、聞いて! ね、ファウロス!」
俺とファウロスはベッドの上に向かい合って座り直した。
「オイっ、どういうことだよ。人がせっかく……」
途中で勝手に中断され、明らかにご立腹のファウロス。ぎりぎりと歯ぎしりをしている。
だが、ここで引き下がるわけには行かない。
「試してみたいことがあるっ!」
「は……?」
「もしかしたら精液の経口摂取でも、淫紋に対処できるかもしれないんだ。
だから……、まずは俺に口でさせて?」
「あ、ジュール。大丈夫なのか?」
ファウロスが心配そうに俺の顔を覗き込む。
「ファウロス、ごめんね……、あれ、ここ、どこ?」
見たこともない空間。
俺はふわふわと寝心地のよいベッドにいた。壁も、カーテンも、ベッドのシーツも、すべてが桃色で、まるで小さな女の子の部屋みたいだと思った。
「ここは、娼館。事情を話して部屋を貸してもらってる」
「娼館っ!?」
俺は驚いた。人生初の娼館に、こんな形で来ることになろうとは!
「とりあえず、水飲む? なんか食べられるか?」
俺は起き上がり、ファウロスから瓶に入った水を受け取る。
「ありがとう。でも、食欲はない、かな……」
俺は倒れた直前のことを思い出す。
ーーファウロスになんて説明したんだっけ……?
「ジュール、その……、淫紋のこと、詳しく説明してくれないか?」
ファウロスが言いにくそうに切り出した。
こうなってしまっては、恥ずかしがっている場合ではない!
「俺……、昔色々とあって、身体に淫紋を刻まれちゃったんだよね。しかも、その淫紋は刻んだ本人にももう解呪できないらしくって、俺はどうすることもできなくて。それでもって、この淫紋のせいで、俺は一月に一度は男の精を身体の中にいれないと、衰弱して死んじゃうんだ!」
「……衰弱、死ぬ……!?」
ファウロスが息を飲む。
「男の精は淫紋の餌なんだって。餌が足りないと、淫紋は俺の生気をどんどん奪っていくんだ。だからいま、それで俺の身体は弱ってて、なんとしても誰かに抱いてもらわないといけないんだけど、この国って男同士にはかなり抵抗があるんだよね……。ファウロス、申し訳ないんだけど、だれか心当たり……」
「ジュール、その淫紋、見せてもらってもいいか?」
ファウロスの真剣な表情に、俺はうなずいた。
履いているズボンをギリギリまで下げて、俺は淫紋が刻まれた下腹部を晒した。
「これ……、すごいな……」
ファウロスがまじまじと俺の下腹部を観察している。
「触らないで。魔力を流したら、その……、おかしくなっちゃうから。……もういい?」
衣服を直そうとする手を、ファウロスが掴んだ。
「なあ、この淫紋って、あんたにあの指輪を贈ったヤツが刻んだんだろ!?」
ファウロスの質問に俺が驚いた。
「えっ、まさか、全然別の人だよっ! だって……」
まあ、別の人だが、マリユスとテオドールは実の親子なので無関係とは言い難いが……。
「え、そうなの? 別のヤツ? へえ、ジュールって、見かけによらず、壮絶な恋愛してきたんだな……。ふーん。それじゃきっと、あの指輪を贈ったやつも今頃気が気じゃないだろうな。気の毒に……」
言いながら、ファウロスは俺の淫紋を人差し指でなぞった。
「ちょっ……、だから触っちゃ駄目だって……、わあっ!」
気づくと、俺はファウロスにベッドの上で押し倒されていた。
「事情はわかった。じゃ、覚悟はいいか?」
ファウロスの長いプラチナブロンドが、俺の頬にかかった。
「覚悟? 覚悟って、何?」
ファウロスの瞳に、みっともない俺の姿が写っている。
ファウロスはその美しい唇の端を釣り上げた。
「俺に抱かれる覚悟、だよ! ジュール、俺は言ったよな。この国で俺はあんたを守るって。あんたの命の危険は、俺が取り除く義務がある。指輪をあんたに贈ったヤツには悪いが、緊急事態だ。ジュールが死んだら、元も子もないからな。
男を抱くのは初めてだけど、ま、なんとかなるだろ!」
ファウロスは俺にまたがったまま、着ていたシャツを脱ぎ捨てた。
褐色の肌に包まれた筋肉質の見事な肉体があらわになる。
「ちょ、ちょ、ちょっと、待って! ま、まだ心の整理がっ!」
俺のシャツのボタンを外そうとするファウロスの手を、俺は掴んだ。
「は? このままじゃ死んじゃうんだろ? 心の整理とかしてる場合じゃねーだろーが!
」
ファウロスは苛ついた表情で、俺の鎖骨をなぞった。
「……っ! だって、ファウロスは、男の俺を抱くの、抵抗あるだろっ!? 俺だって、申し訳ないよ! ファウロスは女の子にもモテモテなのに、俺なんて……」
「はあっ!? 抵抗あるとかそんな悠長なこと言ってる場合かよっ! 男とか女とか、この際そういうのは関係ねーだろ? それとも、なにか? ジュールは俺が相手じゃ不足なのかよっ!?」
ファウロスが力任せに俺のシャツを引っ張ると、糸が切れてボタンが飛んだ。
「……っ!!」
「おいっ、ジュール、まさかさっきのあの変態爺のほうがよかったとか言うわけじゃないだろうなっ!」
「そんなこと、ない! ない……、けど」
「けど?」
ファウロスの手が俺の裸の胸を這い回った。
「ファウロスって独身だよね? 何歳? 婚約者もいないって本当? 付き合ってる人は? もしや心に決めた人がいたりする?」
「は……?」
ファウロスの眉間に深いシワが寄る。
「なんなんだよ、その確認は……」
「だって、だって、俺! 大切な人がいる人とはそういうことしないって、決めて……、んっ」
続きの言葉は覆いかぶさってきたファウロスのキスで封じられた。
「ったく、真面目なんだか、不真面目なんだかわけわかんねー。淫紋刻まれて死にそうなやつが、なに俺の恋人の有無を確認してんだよ!?
……あんたと同じ23歳! 独身、婚約者なし、真面目につきあってる恋人もなし! これで満足か?」
「……っ、ちゃんと、俺の話聞いて……っ」
「うるせー口だな!」
ファウロスは言うと、もう一度口づけてくる。
今度は熱い舌が絡み合う。激しくて情熱的なキスに、俺の身体から力が抜けた。
「んっ、はあっ……、ファウ、ロスっ……、待って、まだ……話が……」
「いい加減、諦めろ。ほら、力抜けよ……。俺が全部責任取ってやるから」
ファウロスの唇が、首筋に降りてくる。
熱い吐息に俺はすべて飲み込まれそうになる。
「……ファウロスっ、ちょっと、あ、あ……っ」
「綺麗な白い肌だな……、十分、イケそうだよ……っ」
ファウロスが、チュ、チュと音を立てながら、俺の首筋にいっぱいキスをする。
「あっ、んっ……」
「ジュールって、エッチのときは声が高くなるんだな。……カワイイ」
ーーやばい、このままじゃまた完全に流されて……。
このままじゃ駄目だっ!!!!
「っ……!! 俺の話を聞けって言ってんだろ!!」
俺はファウロスの髪を掴むと、無理やり俺から引き離した。
「……っ、今度は何だよっ!」
「ちゃんと、話、聞いて! ね、ファウロス!」
俺とファウロスはベッドの上に向かい合って座り直した。
「オイっ、どういうことだよ。人がせっかく……」
途中で勝手に中断され、明らかにご立腹のファウロス。ぎりぎりと歯ぎしりをしている。
だが、ここで引き下がるわけには行かない。
「試してみたいことがあるっ!」
「は……?」
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