【完結】究極のざまぁのために、俺を捨てた男の息子を育てています!

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第79話 新しい世界

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 ――ここは、どこだ!?


 俺は覚醒した。どうやらどこかに寝かされていたらしい。

 そして、目を開けた俺の顔を、数人の小さな子どもたちがのぞき込んでいた。


 ――はっ、この子たち、もしかして、天使!? 俺はやっぱり死んだのかっ!?


「ぐえっ……、あいたたた……!」


 慌てて起き上がると、身体のあちこちがとにかく痛い!!

 ――痛みも苦しみもない、とか言ってなかった? 
 全然話が違うじゃないかよおおおお!!


 腰をさする俺を見て、子供たちが何やら言っている……、が、俺はその言葉を全く理解できなかった。


 ――やっぱり、ここは天国!? っていうか、もしかして、俺、日ごろの行いが悪すぎて地獄に堕とされちゃった!?

 よく見ると、子どもたちの着ている服はボロボロで、顔も薄汚れていた。

 まだぼんやりとする頭で、最後の記憶を思い出す。


 そうだ。俺の命乞いをあっさりと無視したあの若い男! 黒い外套を着たあの男は、俺の額に手を当てて、魔力を流された俺はあっという間に気を失って……。

 ――そして、いまここ。


「あのさ、ここってどこかな? えーっと、俺の言葉、わかる子いる?」

  まじまじと得体のしれない生物を観察するように俺を見てくる子どもたちに声をかけてみる。が、もちろん俺には全く理解できない言葉が返ってくるのみ。

 俺は上着を脱がされていただけで、着ているシャツも、ズボンもあの時のままだった。

 俺がいる部屋はどこかの民家の一室のようだった。部屋は小さく、俺が寝かされていた古びたベッドのほかには、小さな木のテーブルが一つだけ。
 木造らしく、子供たちが歩くと床があちこちがぎしぎしと音を立てた。

 まあまあな、オンボロだ。

 そして俺は、手足をどこも縛られていないし、魔法で身体を拘束されている様子もない。
 っていうか、なんならこの部屋の黒ずんだ木の扉も開け放たれているくらいだ。

 ――逃げた方がいい、のかな?

 ベッドから立ち上がろうとしたとき、扉の向こうから子どもの声がした。

「ファウロス! あの人、目が覚めたみたいだよ!」

 ――あっ、言葉の通じる子がいる!

 するとほどなく、小さな子どもと、長身の人物が部屋に入ってきた。


「よかった。このまま目が覚めなかったらどうしようかと思ってんだ」

 俺は、入ってきたその男の姿にくぎ付けになる。


 その長身の男は、褐色のしなやかな肌をしていた。
 後ろで束ねられた長い髪はプラチナブロンドで、瞳の色はハシバミ色。

 そう、その若い男は、まるで、美しい野生の獣のようだった。

「あ……」

 不思議な色合いの瞳が、俺をのぞき込んだ。

「ああ、見たところ、結構元気そうだな。どうだ、体調は?」

「……誰?」

 ぽかんとする俺に、その男はぷっと噴き出した。

「ああ、そうか、あの時は顔を隠してたもんな。じゃあ、これでわかるか?
――何も心配いりませんよ。ジュール卿……」

 声色を変えた男の声……。


「あ、あ、あんた、あの時のっ!!」

 俺の殺害を金貨50枚で請け負った、あの黒い外套の若い男っ!!!!

「ははっ、思ってた通り、あんた、だいぶ面白そうな人だな」

 若い男は腕組みをして、にやにやと俺を見た。

「おっ、俺を殺すつもりかっ! 言っておくけど、俺は王位を狙ってなんかいないし、それに……っ!」

 ベッドの上で、俺は壁ににじり寄った。

「わかってるって。だからあんたをわざわざここに連れてきたんだろ?」

 若い男は俺にウィンクする。

「ここって……、ここはいったい……」

「お兄さん、どうぞ」

 男の隣にいた小さな子供が、水の入った瓶を俺に手渡してくれた。

 急に喉の渇きを覚えた俺は、一気に水を飲みほした。


「落ち着いたか? ……悪かったな。ズタ袋に入れて荷物と一緒に馬車で運んだから、あちこちぶつけたんじゃねえか?」

「ズタ袋っ!? 荷物っ!?」

 俺は自分の身体を確認する。
 ――それで体中が痛かったのか。言われてみれば、着ている服もあちこち擦り切れている。

「ははっ、ホント、楽しい人だね、あんた」

 男はしゃがみこんで、俺の手を取った。

「ヒッ!」

 思わず振り払おうとするが、強い力でびくともしない。

「大丈夫、取って食ったりしねーよ。ちょっと、脈を診るだけ」

「……」

 男は俺の脈を確認すると、小さく頷いた。

「偽装工作とはいえ、致死量近い血を抜かせてもらったからな。あんたは昏睡してたんだよ。
しばらくはふらふらするかもしれないけど、まあ、2、3日もすれば治るから」

「致死量……、血……?」

 俺は青ざめ、あちこちを触って確かめる。そんな俺を見て、また男は噴き出した。

「大丈夫、どこにも傷はないから。魔法でちゃちゃっと血を抜かせてもらって、あんたの上等な上着を切り裂いたところに
ドバっとぶっかけておいただけ! ああでもしなきゃ、あのジジイは、あんたが死んだと納得しないだろうからな」

「俺を、死んだことに……? 偽装工作?」


 ということは、つまり……、

 この男は、俺を助けてくれたのか?


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