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第71話 解決できない悩み

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「ん、あっ、ああっ……、あっ、はあっ……」

 下から突き上げられる衝撃に、俺の身体は思わず傾いだ。

「すごく、感じているな……」

 倒れないように、エリオットは下から俺の身体を支える。

「あっ、はあっ……、エリオット先輩っ、すごい……っ」


 俺はエリオットの身体の上に乗せられ、揺さぶられていた。


「乳首が赤くとがっているぞ、いやらしい、いい眺めだ……っ」

「んくっ! あっ、やっ、そんなっ……!」


 騎乗位が苦しくなってきたのを見透かされたように、エリオットが俺の肩に手を回し、体制を変えさせる。

「ほら、こうすれば、もっと深く繋がれるだろう?」

「やっ、ああああっ! 深い、っ……! エリオット先輩っ!」


 座位に変えられた俺は、エリオットの背中に手を回し、しがみついた。

 体の中心を熱くて太いもので貫かれ、俺は喘いだ。


「ほら、ジュール、好きなところをいっぱい突いてやろう」

「ひゃ、あっ、あっ……、んっ、ダメっ! おかしく、な、る……」

 両脚もエリオットの背中に巻き付けるようにすると、エリオットは俺と唇を合わせてきた。

「……っ!」


 ――脳裏によみがえってきたのは、昨晩のテオドールとの口づけ。

 ふいに奪われた唇。あっという間で、防ぎようがなかった。
 舌を入れるのは駄目だと何度も言っていたのに、唇の隙間から入ってきたテオドールの舌は、当たり前のように俺の舌に絡みつき、そして離れていった。


「……考え事か? こんな最中に、余裕だな、ジュール」

「え、あ? ち、違うっ、うわああっ!」

 意地の悪い笑みとともに、俺のさらに奥深い場所にエリオットの滾りが入れられる。


「くっ、狭いな……、ほら、好きな場所だろう?」

 ゴリゴリと腰を押し付けられるように揺さぶられる。


「う、あ、あ……!」


 結腸を抜かれ、俺の身体は硬直し、目からは星が飛んだ。


「言ってみろ、ジュール、これが……、好きだろう?」

「あ、あ……、好き、好きっ……、エリオット先輩!」

 俺がエリオットの肩口に額をこすりつけると、エリオットは満足げに俺の髪を撫でた。



「そうだ、ジュール……。もっと淫らになれ、俺以外のことは、何も考えられなくくらいに……」


 ――その日のエリオットは、いつもより執拗に俺を責め立てて、なかなか解放してくれなかった。




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「はあ……」

 行為の後、いつも自分が淹れた紅茶をふるまってくれるエリオット。

 応接室のソファに腰掛けた俺は、エリオットの美しい所作を前に、深いため息をついた。


「どうした? さすがに疲れたか?」

「いえ、今日も……、ありがとうございました」

「礼など不要だ。俺も十分楽しませてもらっている」

「へ?」

 俺が見つめると、エリオットの藍色の瞳がわずかに揺らいだ。


「いや、つまり……、呪いの研究として、とても興味深い事象であるからな……」

「そうですか……」

 エリオットとの「共同研究」という名のこの関係が始まって、すでに1年が過ぎようとしている。
 
 淫紋の謎はいまだ解明されていないが、当初に比べると、俺とエリオットはずいぶん打ち解けた関係になっており、俺もちょっとした軽口を叩けるくらいになっていた。

 そして……、


「ジュール……」

 ソファの隣に座ったエリオットに手を取られ、唇を塞がれる。

「先輩……」

 俺たちは不思議なほど、親密な雰囲気になる瞬間があった。


 ――それはまるで、俺はエリオットのもので、エリオットは俺のものであるかのような……。

 ――あたかも、二人は長年の恋人同士であるかのような……。

 マリウスにつけられた淫紋が俺たちを結びつけたのだから、人間の縁というのは本当に不思議なものだ。



 長い口づけが終わると、エリオットは俺を抱きしめたまま耳元で言った。

「ジュール、大切な話がある。5日後にこの場所に来てほしい」

 渡されたのは、金箔で型押しされた美しい封筒。


「話……? ここではだめなお話ですか?」

「改まった席で話がしたい」

「……わかりました」

 俺は封筒を上着の内ポケットにしまった。


「で、悩み事は何だ?」

 俺を抱いたまま、俺の髪を梳きながら、エリオットは問うた。


「……悩み?」

「とぼけるな。今日は会ったときからずっと心ここにあらずだっただろう」

 責めるようなエリオットの瞳に、俺は顎を少し引いた。


「いえ、悩みというほどではないんです。ちょっと、テオドールと……」

「喧嘩か?」

「喧嘩、というか……」


 俺は口ごもる。いくらエリオット相手でも、これは言えない。

 ――甥っ子のテオドールが、ことあるごとに俺にキスを迫ってきて困っている、だなんて!!


「まあ、あの年ごろはいろいろあるんだろう。大目に見てやれ」

「……はい」

 いくら大目にみてやれと言われても、たびたび俺の唇を強引に奪っては、舌を絡ませて、身体を押し付けてくるテオドールをこのまま放っておくわけにはいかない。



 ーーそう、あの16歳の誕生日の事件以来、テオドールは俺にたびたびキスをねだるようになっていた。

 それは王立学園でいい成績をとったときのご褒美としてだったり、今日みたいにエリオットに会う日の前の不意打ちだったりした。

 最初はただの悪戯の延長だと思って、注意するだけにとどめていたのだが、最近はキスしたら必ず舌を入れてくるし、その上、俺の身体も触ってくるようになっていた。

 そして、何を隠そう一番駄目なことは、俺の身体がそんなテオドールとのキスに、反応するようになってしまってきていることだ!!


 ――このままじゃ、俺がテオドールとのキスに感じてしまっていることがバレるのも時間の問題だ!

 俺は保護者なのに、テオドールの叔父なのに……!!


 もうすぐ17歳になろうというテオドールがそういう「性的なこと」に関心を持ってしまうのは致し方ないことだと思う。俺もそのころは、誰かとキスしたり、エッチなことがしてみたくてたまらなかった。環境のせいでたまたま行動にうつせなかっただけで、俺だってもしそういう相手がいれば、そういうことにしっかりはまってしまっていたことだろう。

 だ、が!!

 テオドールの相手はなぜか俺!
 
 ちょっと変わってるけどとんでもなく美少女なシャルロット王女でもなく、その取り巻きのご令嬢でもなく、6歳年上の血のつながらない叔父の俺!!!!

 ――これは絶対に異常事態だ……。


「また考え事か? 困ったやつだ」

 あきれたような口ぶりだが、重ねてくる唇はあくまで優しい……。


「先輩……、もっと……」

 いつのまにかキスをねだるのは俺の方になっていた。


 深く口づけられながら、優しく髪を撫でられると、まるで愛されているようだと錯覚する。


「ジュール、ジュール……」

「先輩、エリオット先輩……」


 悩ましい吐息とともに、俺は長い間、エリオットの腕のなかで、その甘さに酔いしれていた。




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