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第67話 贈り物
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もちろん、またもやこっぴどく絞られる羽目になったテオドールとセルジュ。
この日のために新調したと思われるドレスの裾にジュースがかかってしまったお姉様の怒りはすさまじく、セルジュは頭からタオルをかぶったままお姉様から長時間説教されていた。
だが、もちろん俺は見逃さなかった。
申し訳なさそうに頭を垂れるセルジュの口元が、嬉しそうにゆるんでいるのを!!
――もしや、これってセルジュの作戦勝ち!?
俺は着替えのために自室に戻ったテオドールに付き添っていた。
「申し訳ありません、叔父様」
水魔法が得意だというシャルロット王女の取り巻きの令嬢が、すぐに髪や顔を綺麗にしてくれていたため、着替えただけで済んだテオドールがきゅるんとした瞳で俺を見てきた。
「……っ、もうこんなことしちゃだめだよ、テオ」
俺はまだ半分濡れているテオドールの髪を梳いてやる。
「はい、もう二度としません。……すみません。セルジュに抱きつかれた叔父様を見て、つい、かっとなってしまって……」
「セルジュはお姉様に一目ぼれしたんだって。それで俺に取りなしてほしいって、縋りついて頼んできたんだ」
「……シャンタル様に?」
驚いた様子のテオドール。まあたしかに、俺もびっくりしたけれども。
「そろそろ下にもどろうか?」
「あの、叔父様、少しだけお時間よろしいですか? 今のうちに、渡したいものが」
テオドールは自分のデスクの引き出しから、小さな小箱を取り出した。
「あの……っ、これ、叔父様にっ!」
テオドールから差し出された小箱をあけると、黒くきらめく石がはまった銀の指輪が入っていた。
「え? 俺に?」
「はいっ! 学園の魔法の授業で作ったんです! うまくできたので叔父様に差し上げたくて!」
「綺麗な石だね。へえ、俺のときは、こんな難しいもの作る授業はなかったけどなあ」
俺はその指輪を取り出し、光にかざした。その黒い石はテオドールの瞳のように、吸い込まれそうな美しさだった。
「俺の守護石なんです! だから、叔父様に身につけていただきたいんですっ!」
「でも、これはテオの石なんだから、テオが持っていた方がいいんじゃないかな?」
――たしか、守護石とはそういうたぐいの魔道具だ。
「いえっ、これは絶対、叔父様につけていただきたいんですっ」
テオドールは俺が手にしていた指輪を受け取ると、そのままそれを俺の左手の薬指にはめた。
「あ……」
――なぜかぴったり!
「叔父様、俺、叔父様のために一生懸命なけなしの魔力を込めたんですっ!
お願いです、叔父様……、肌身離さず身に着けていただけないでしょうか?」
テオドールのこんな潤んだ瞳に見つめられ、断れないやつなんているだろうか?
「う、うん、わかった。ずっとつけておくよ! なんか、俺にサイズもぴったりだしね。テオ、ありがとう!
でも、今日はテオの誕生日なのに俺がプレゼントをもらうなんて……」
テオドールはそんな俺の手をぎゅっと握った。
「いえ、これが俺にとってはなによりのプレゼントですっ」
キラキラと目を輝かせるテオドール。
「うん?」
――まあ、なんかよくわからないけど、テオドールがうれしそうだから、それでよしとしよう!
だが、テオドールの部屋を出ようとしてドアノブに手をかけた俺は、ある異変に気付いた。
ドアノブが回らない……。
「叔父様、どうかされましたか?」
「なんか変なんだ。扉が、開かなくて」
テオドールも同じようにドアを開けようとするが、なぜかドアは開かない。
そのとき、すぐそばの壁に、魔力による緋文字が浮かび上がってきた。
『キスしないと出られない部屋 ※すべての魔法の無効化済。武力行使不可』
ーーな、な、なんですとおおおおおおおお!!??
この日のために新調したと思われるドレスの裾にジュースがかかってしまったお姉様の怒りはすさまじく、セルジュは頭からタオルをかぶったままお姉様から長時間説教されていた。
だが、もちろん俺は見逃さなかった。
申し訳なさそうに頭を垂れるセルジュの口元が、嬉しそうにゆるんでいるのを!!
――もしや、これってセルジュの作戦勝ち!?
俺は着替えのために自室に戻ったテオドールに付き添っていた。
「申し訳ありません、叔父様」
水魔法が得意だというシャルロット王女の取り巻きの令嬢が、すぐに髪や顔を綺麗にしてくれていたため、着替えただけで済んだテオドールがきゅるんとした瞳で俺を見てきた。
「……っ、もうこんなことしちゃだめだよ、テオ」
俺はまだ半分濡れているテオドールの髪を梳いてやる。
「はい、もう二度としません。……すみません。セルジュに抱きつかれた叔父様を見て、つい、かっとなってしまって……」
「セルジュはお姉様に一目ぼれしたんだって。それで俺に取りなしてほしいって、縋りついて頼んできたんだ」
「……シャンタル様に?」
驚いた様子のテオドール。まあたしかに、俺もびっくりしたけれども。
「そろそろ下にもどろうか?」
「あの、叔父様、少しだけお時間よろしいですか? 今のうちに、渡したいものが」
テオドールは自分のデスクの引き出しから、小さな小箱を取り出した。
「あの……っ、これ、叔父様にっ!」
テオドールから差し出された小箱をあけると、黒くきらめく石がはまった銀の指輪が入っていた。
「え? 俺に?」
「はいっ! 学園の魔法の授業で作ったんです! うまくできたので叔父様に差し上げたくて!」
「綺麗な石だね。へえ、俺のときは、こんな難しいもの作る授業はなかったけどなあ」
俺はその指輪を取り出し、光にかざした。その黒い石はテオドールの瞳のように、吸い込まれそうな美しさだった。
「俺の守護石なんです! だから、叔父様に身につけていただきたいんですっ!」
「でも、これはテオの石なんだから、テオが持っていた方がいいんじゃないかな?」
――たしか、守護石とはそういうたぐいの魔道具だ。
「いえっ、これは絶対、叔父様につけていただきたいんですっ」
テオドールは俺が手にしていた指輪を受け取ると、そのままそれを俺の左手の薬指にはめた。
「あ……」
――なぜかぴったり!
「叔父様、俺、叔父様のために一生懸命なけなしの魔力を込めたんですっ!
お願いです、叔父様……、肌身離さず身に着けていただけないでしょうか?」
テオドールのこんな潤んだ瞳に見つめられ、断れないやつなんているだろうか?
「う、うん、わかった。ずっとつけておくよ! なんか、俺にサイズもぴったりだしね。テオ、ありがとう!
でも、今日はテオの誕生日なのに俺がプレゼントをもらうなんて……」
テオドールはそんな俺の手をぎゅっと握った。
「いえ、これが俺にとってはなによりのプレゼントですっ」
キラキラと目を輝かせるテオドール。
「うん?」
――まあ、なんかよくわからないけど、テオドールがうれしそうだから、それでよしとしよう!
だが、テオドールの部屋を出ようとしてドアノブに手をかけた俺は、ある異変に気付いた。
ドアノブが回らない……。
「叔父様、どうかされましたか?」
「なんか変なんだ。扉が、開かなくて」
テオドールも同じようにドアを開けようとするが、なぜかドアは開かない。
そのとき、すぐそばの壁に、魔力による緋文字が浮かび上がってきた。
『キスしないと出られない部屋 ※すべての魔法の無効化済。武力行使不可』
ーーな、な、なんですとおおおおおおおお!!??
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