42 / 165
第42話 後輩のよしみ
しおりを挟む
「わかっただろう。学園の後輩のよしみだ。俺がお前の呪いを解くための一助になってやることもやぶさかではない。さあ、印を見せるんだ!」
立ち上がり、近づいてくるエリオットを俺は両手で制止した。
「いえっ、大変ありがたいお申し出なのですがっ、やはり結構です!」
「なんだと!?」
まさか俺が断ってくるとは思っていなかったのだろう。苛ついたエリオットは俺の肩を掴んだ。
「ヒィっ……、だって、この呪いは特殊というか、そう、なんというか、そもそもかけた本人にしか解呪できない呪いなんですっ! だから、いくらエリオット先輩といえども……」
「確かめもしないうちからお前は諦めるのか! できるかできないかは、俺が決める! いいから、見せてみろ! 印はどこだ!? 腕か、肩か、背中かっ!?」
俺は伸びてくるエリオットの手を両手でつかんで、させまいとする。
「嫌だっ、絶対、絶対、嫌ですっ! そもそもこれは呪いなんかじゃないんですってば!!」
「わからんやつだな。お前は、呪いで頭までやられてしまったのかっ!? 一生呪いを抱えて生きていくつもりなのかっ!?」
「この呪いはいつか絶対に、かけた本人に解呪させる予定ですからっ! だからエリオット先輩はお気遣いなくっ!! あっ……」
エリオットの手が、軽々と俺の両手をひとまとめにする。
俺は、ふかふかのソファにエリオットに押し付けられる形になる。
「言ってみろ! 術者は誰だ! お前にそんな呪いをかけたのは一体誰だっ!? 俺はそいつを絶対に許さない!!」
エリオットの気迫に、俺は思わず怯んだ。そして、つい口走ってしまっていた。
「……マリユス……」
「は!?」
「マリユス・ロルジュですっ!!」
俺はエリオットの腕を振り払い、はあはあと肩で息をしていた。
「お前……、あの、逃亡したマリユス・ロルジュに……、まさか……」
エリオットの目が大きく見開かれる。
こんな動揺したエリオットを見るのは、初めてだった。
「わかったでしょう。俺に刻まれたのは呪いなんかじゃありません。俺は……、マリユスに淫紋を刻まれたどうしようもない愚かな男なんです!!」
「……っ」
睨みつける俺に、エリオットが息を呑む。
「このことは……、誰にも言わないでください、ではっ……」
だが、立ち上がろうとする俺の両肩に手を置くと、エリオットは再び無理やりソファに座らせた。
「……ちょっ、何を」
「諦めるなっ!」
「へ!?」
エリオットが俺にぐっと顔を近づけてきた。
「俺が淫紋ごときに怖気づくとでも思ったか!? 馬鹿め。淫紋とて、所詮呪いの一種だ。俺の研究対象であることに変わりはない!」
「エリオット先輩……」
エリオットは真剣だった。
かのマリユス・ロルジュに淫紋を刻まれたのだと知ってもなお、俺を軽蔑せず、俺の力になってくれようとするこの男に、俺は正直ちょっと感動していた。
ーー意外にいい人だったんだ。
「わかったか、ジュール」
「はい、エリオット先輩……」
うなずく俺に、エリオットは告げた。
「では、俺にその淫紋を見せろ! 俺がとことん調べ尽くしてやる!!」
ーーなんか、とんでもないことになっちゃったんですけどっ!!??
立ち上がり、近づいてくるエリオットを俺は両手で制止した。
「いえっ、大変ありがたいお申し出なのですがっ、やはり結構です!」
「なんだと!?」
まさか俺が断ってくるとは思っていなかったのだろう。苛ついたエリオットは俺の肩を掴んだ。
「ヒィっ……、だって、この呪いは特殊というか、そう、なんというか、そもそもかけた本人にしか解呪できない呪いなんですっ! だから、いくらエリオット先輩といえども……」
「確かめもしないうちからお前は諦めるのか! できるかできないかは、俺が決める! いいから、見せてみろ! 印はどこだ!? 腕か、肩か、背中かっ!?」
俺は伸びてくるエリオットの手を両手でつかんで、させまいとする。
「嫌だっ、絶対、絶対、嫌ですっ! そもそもこれは呪いなんかじゃないんですってば!!」
「わからんやつだな。お前は、呪いで頭までやられてしまったのかっ!? 一生呪いを抱えて生きていくつもりなのかっ!?」
「この呪いはいつか絶対に、かけた本人に解呪させる予定ですからっ! だからエリオット先輩はお気遣いなくっ!! あっ……」
エリオットの手が、軽々と俺の両手をひとまとめにする。
俺は、ふかふかのソファにエリオットに押し付けられる形になる。
「言ってみろ! 術者は誰だ! お前にそんな呪いをかけたのは一体誰だっ!? 俺はそいつを絶対に許さない!!」
エリオットの気迫に、俺は思わず怯んだ。そして、つい口走ってしまっていた。
「……マリユス……」
「は!?」
「マリユス・ロルジュですっ!!」
俺はエリオットの腕を振り払い、はあはあと肩で息をしていた。
「お前……、あの、逃亡したマリユス・ロルジュに……、まさか……」
エリオットの目が大きく見開かれる。
こんな動揺したエリオットを見るのは、初めてだった。
「わかったでしょう。俺に刻まれたのは呪いなんかじゃありません。俺は……、マリユスに淫紋を刻まれたどうしようもない愚かな男なんです!!」
「……っ」
睨みつける俺に、エリオットが息を呑む。
「このことは……、誰にも言わないでください、ではっ……」
だが、立ち上がろうとする俺の両肩に手を置くと、エリオットは再び無理やりソファに座らせた。
「……ちょっ、何を」
「諦めるなっ!」
「へ!?」
エリオットが俺にぐっと顔を近づけてきた。
「俺が淫紋ごときに怖気づくとでも思ったか!? 馬鹿め。淫紋とて、所詮呪いの一種だ。俺の研究対象であることに変わりはない!」
「エリオット先輩……」
エリオットは真剣だった。
かのマリユス・ロルジュに淫紋を刻まれたのだと知ってもなお、俺を軽蔑せず、俺の力になってくれようとするこの男に、俺は正直ちょっと感動していた。
ーー意外にいい人だったんだ。
「わかったか、ジュール」
「はい、エリオット先輩……」
うなずく俺に、エリオットは告げた。
「では、俺にその淫紋を見せろ! 俺がとことん調べ尽くしてやる!!」
ーーなんか、とんでもないことになっちゃったんですけどっ!!??
151
お気に入りに追加
1,461
あなたにおすすめの小説
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
いつの間にか後輩に外堀を埋められていました
雪
BL
2×××年。同性婚が認められて10年が経った現在。
後輩からいきなりプロポーズをされて....?
あれ、俺たち付き合ってなかったよね?
わんこ(を装った狼)イケメン×お人よし無自覚美人
続編更新中!
結婚して五年後のお話です。
妊娠、出産、育児。たくさん悩んでぶつかって、成長していく様子を見届けていただけたらと思います!
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
溺愛アルファの完璧なる巣作り
夕凪
BL
【本編完結済】(番外編SSを追加中です)
ユリウスはその日、騎士団の任務のために赴いた異国の山中で、死にかけの子どもを拾った。
抱き上げて、すぐに気づいた。
これは僕のオメガだ、と。
ユリウスはその子どもを大事に大事に世話した。
やがてようやく死の淵から脱した子どもは、ユリウスの下で成長していくが、その子にはある特殊な事情があって……。
こんなに愛してるのにすれ違うことなんてある?というほどに溺愛するアルファと、愛されていることに気づかない薄幸オメガのお話。(になる予定)
※この作品は完全なるフィクションです。登場する人物名や国名、団体名、宗教等はすべて架空のものであり、実在のものと一切の関係はありません。
話の内容上、宗教的な描写も登場するかと思いますが、繰り返しますがフィクションです。特定の宗教に対して批判や肯定をしているわけではありません。
クラウス×エミールのスピンオフあります。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/504363362/542779091
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる