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第21話 抵抗と葛藤
しおりを挟む「なるほど……、これはまた厄介な……」
「ちょっ、触ら、ない、で……」
一瞬で裸に剥かれた俺。
アンドレの細い指先が、俺の下腹部にある淫紋に触れる。
「しかし、疑問ですね。あのマリユス・ロルジュがこのような淫紋を刻むとは……、誰にも決して縛られないというポリシーは一体どこにいったのやら……。ジュール様、これから私が魔力を流してみます。少し気持ちが悪いかもしれませんが、我慢してくださいね」
言うなり、かざされたアンドレの手のひらから、彼の魔力が流れてくる。
ーーこいつ、何者なんだ!?
魔法を使える人間は、この国では限られている。
王族や、高位貴族や、特別な血統を持つものにしか魔力は受け継がれることはなく、しかも年々、魔力を持つものは減少しつつある。
もちろん、俺にもほとんど魔力がない。最近では、貴族の子弟でも魔法を使えるもののほうが珍しくなってきているのだ。
俺は、宝石のように輝くアクアブルーの瞳の持ち主を見つめた。
ーーこの見た目といい、おそらく貴族の出身であることは間違いないだろう。
「あっ、くっ、んっ……!」
アンドレの魔力に反応したのか、俺の下腹部が熱くなってくる。
衰弱しきっており、性欲なんてどこにも残っていないはずなのに、何故か俺の身体の奥には情欲の火がともった。
「うーん、もしかしたらと思ったのですが、やはり難しいですね。マリユスと同等か、それ以上の魔力量がない限り、書き換えも不可……、それにしてもこの呪文はまた……、執着そのものですね……。ジュール様、あなたは一体マリユス・ロルジュにとってどんな存在だったんですか? とても……、興味がそそられますね」
アンドレはどこからかガラスの小瓶を取り出すと、手のひらにその中のものを出した。
「なにを、言ってるか、全然……、わかんなっ…‥、っ!」
身体が熱い。アンドレの美しい瞳に見つめられると、俺の身体は何かを期待して甘く疼く。
「ああ、その表情……、とても素敵ですね。もしかして籠絡されたのは、マリユスの方だったのかもしれませんね。だからこんな淫紋を、あなたに‥…」
アンドレは手のひらで温めた粘性の液体を、俺の身体に塗り込めていく。
「あっ、んっ、何…‥、これっ!? ああっ……」
「リラックスして、すぐに気持ちよくなれるローションです。ジュール様はとても恥ずかしがり屋さんのようですので、即ハメというのはさすがに抵抗感がおありかと思いまして」
「即、ハメ…‥っ!?」
俺は青ざめる。
そうだ、そうだよ! この男は俺の中に自分の精子をぶちまけるつもりなのだ!!
「ご安心を。すぐに気持ちよくなって、私の陰茎が欲しくてたまらなくなりますからね!」
アンドレの指が俺の乳首を優しく弾く。
「やっ、あっ、あんっ、ダメッ、お願い、ちょっと、ちょっと待って! もう一つだけ、聞きたいことがありますっ!」
「駄目です。こうしておしゃべりしているうちにも、ジュール様の体力はどんどん奪われていくのですよ。とりあえず、お話は一回中出ししてからにしましょうね!」
にっこりと笑いながら言うセリフか!?
そうこうしているうちに、アンドレの手は俺の全身に優しくローションを塗りこめていく。
アンドレの言う通り、塗られたところがすごく敏感になって、アンドレの指を待ちわびてしまう自分がいる。
「ずいぶん、とろけてきたようですね、そろそろこちらも、いいでしょうか?」
アンドレは目を細めると、俺の後孔に指を差し入れた。
「あっ、んっ、ああっ……」
「ああ、中も熱くていい感じだ……、私もジュール様の中に入るのが楽しみです」
乳首に吸い付かれ、舌先で転がされる。快感に力が抜けたところを、容赦なく指を増やされる。
アンドレの指が俺の中でバラバラに動いて、俺の身体はビクビクとはねた。
「ああっ、んんっ、駄目っ!」
「可愛い声ですね。私も興奮してきましたよっ!」
アンドレが俺の足を大きく広げた。
「やっ、やだっ!!」
「申し訳ありません、ジュール様、もっとゆっくりほぐして差し上げたいのですが、時間がありません。いいですか? 挿れますよ。大丈夫、優しくします」
アンドレが下穿きをずらすと、大きく反り上がった一物がそこから出てくる。
俺はその大きさに息を呑んだ。
「ああ、んあっ、やだっ、やだっ、こんなのっ!」
俺は最後の力を振り絞って、アンドレの腹を蹴り上げた。
「……っく」
俺の足を掴んでいた力が、緩む。
「こんなのおかしいよっ! 俺っ、あなたとは会ったばっかりだし、あなたのこと全然知らないしっ! あなただって、俺のことなんてなにもわかってないしっ!
それなのに、こんなふうにいきなりセックスしちゃうなんて、絶対絶対、そんなの変だからっ!!」
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