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第9話 暴露
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淫紋を刻まれた直後のセックスは、正直よく覚えていない。
ただ、ありえないほどに乱れまくったことと、マリユスが執拗に何度も何度も俺を責め立てて、俺は泣きながらもう許してほしいと懇願したことは、今でもぼんやりと記憶に残っている。
マリユスは俺に淫紋を刻んだことでなにか満足したのか、それからは俺に対してびっくりするほどべったりになった。
俺は急に構い倒してくるマリユスに対して驚きはしたが、ついにマリユスが自分だけのものになったのだと思えて、すごくうれしかった。
――そして、ついに俺の二十歳の誕生日、俺を地獄のどん底に叩き落とす事件が起こったのだった。
その日の夕食、仕事でどうしても都合がつかないというマリユスを除いた俺の家族は、屋敷で俺の二十歳の誕生日を祝ってくれていた。
「ジュール、そろそろイネスとの結婚について考えないといけないな」
父親がもったいぶった口調で切り出した。
「……」
結婚する気などさらさらない俺は、押し黙った。
「たまには息抜きも必要だ。勉学に励むのもいいが、一度イネスに会いに行ってやれ。
寂しがっていると聞いているぞ」
「……私は、イネスとの婚約を破棄したいと思っております」
俺の言葉に、一同は驚きの声を上げた。
「ジュール、あなた正気? 昔からイネスとは大の仲良しだったじゃない。
お似合いの二人だったのに、どうして?」
シャンタルが目を丸くする。
まさか原因は貴方の夫です、などとは言えない。
「いろいろ、考えてのことです……」
俺は目を伏せる。
「ジュール、そんなに結論を急ぐことはないわ。まだ二十歳になったばかりなのだし、この件については、じっくり考えましょう」
落ち着いた表情で母親が俺を見る。
真面目な母親らしい諭し方だった。
「ま、まあ、そうだな。まだ結婚を急ぐような歳でもないのだし」
父親が咳払いする。
だが、この時の俺は、もうすでに心は決まっていた。早くイネスとは婚約破棄し、イネスには新しい男性を見つけてもらいたかった。イネスは気立ての優しい可愛い子のなので、相手はいくらでもいるはずだ。
気の乗らない晩餐を終えた俺は、ひとり部屋に戻りため息をつく。
「せっかくの誕生日に、そんな浮かない顔はいけないな」
上着をクローゼットにかけていた俺は、不意に後ろから抱きつかれた。
「ーーマリユスっ!!」
どこからか俺の部屋に忍び込んでいたマリユスだった。
「ごめんね、ジュール。遅くなってしまった」
マリユスは手にしていた花束を俺に差し出した。
「ジュール、二十歳の誕生日おめでとう。愛してるよ」
「マリユスっ!」
俺はマリユスに抱きついた。俺が好きだと言っていた花、ーー青いアネモネの花束が床に落ちる。
マリユスは俺を横抱きにしたまま、俺を寝台まで運んだ。
「ねえ、今日は忙しいんじゃなかったの?」
思わずでる憎まれ口に、マリユスは微笑んだ。
「どんなに忙しくても、今日は俺の愛するジュールの誕生日だよ。
たとえ、どんな用事があっても、君におめでとうを言いに駆けつけるさ!」
「マリユス、大好きだよ……、もう俺から離れないで!」
俺は俺の上に乗るマリユスの首に手を回した。
「もちろん……、君は一生俺のものだよ……」
口づけは深く、甘く、俺を酩酊させるのに十分だった。
「ジュール、君の淫紋を見せて……、ああ、すごくきれいだよ。興奮してるんだね……、赤く光っている……」
「マリユス、身体が熱いんだ……、早く、早く来て……。欲しいんだよ、マリユス!」
マリユスに淫紋を刻まれたことで、俺は前よりずっと性に貪欲になっていた。
ーーおそらくそれが、マリユスの本当の狙いだったんだろう。
マリユスの従順な性の玩具と化した俺は、マリユスの欲望を満たすためにはなんだってできた……。
そして、二十歳の誕生日の夜、俺の寝台の上で始まった二人の交合は、なかなか終わることができなかった。
ーーだから、突然の訪問者に俺たちはなすすべもなかった。
「ねえ、ジュール、もう一回……」
裸でみだらに絡み合ったまま、マリユスが俺の首筋に舌を這わせてきた。
「だめ、だよ……、マリユス、もう……っ」
「嘘つきだね、ジュール。まだ淫紋は光ってるよ」
マリユスの手が、俺の下腹部に伸びる。
「あっ、んっ、ダメッ、イッたばっかりだからっ、ああっ……」
「力抜いてて、大丈夫、柔らかいままだからすぐに入るよ」
マリユスが俺の片足を抱え上げたその時……、
「お前たちっ、一体何をしているんだっ!!」
父親の怒号が、部屋に響いていた。
ただ、ありえないほどに乱れまくったことと、マリユスが執拗に何度も何度も俺を責め立てて、俺は泣きながらもう許してほしいと懇願したことは、今でもぼんやりと記憶に残っている。
マリユスは俺に淫紋を刻んだことでなにか満足したのか、それからは俺に対してびっくりするほどべったりになった。
俺は急に構い倒してくるマリユスに対して驚きはしたが、ついにマリユスが自分だけのものになったのだと思えて、すごくうれしかった。
――そして、ついに俺の二十歳の誕生日、俺を地獄のどん底に叩き落とす事件が起こったのだった。
その日の夕食、仕事でどうしても都合がつかないというマリユスを除いた俺の家族は、屋敷で俺の二十歳の誕生日を祝ってくれていた。
「ジュール、そろそろイネスとの結婚について考えないといけないな」
父親がもったいぶった口調で切り出した。
「……」
結婚する気などさらさらない俺は、押し黙った。
「たまには息抜きも必要だ。勉学に励むのもいいが、一度イネスに会いに行ってやれ。
寂しがっていると聞いているぞ」
「……私は、イネスとの婚約を破棄したいと思っております」
俺の言葉に、一同は驚きの声を上げた。
「ジュール、あなた正気? 昔からイネスとは大の仲良しだったじゃない。
お似合いの二人だったのに、どうして?」
シャンタルが目を丸くする。
まさか原因は貴方の夫です、などとは言えない。
「いろいろ、考えてのことです……」
俺は目を伏せる。
「ジュール、そんなに結論を急ぐことはないわ。まだ二十歳になったばかりなのだし、この件については、じっくり考えましょう」
落ち着いた表情で母親が俺を見る。
真面目な母親らしい諭し方だった。
「ま、まあ、そうだな。まだ結婚を急ぐような歳でもないのだし」
父親が咳払いする。
だが、この時の俺は、もうすでに心は決まっていた。早くイネスとは婚約破棄し、イネスには新しい男性を見つけてもらいたかった。イネスは気立ての優しい可愛い子のなので、相手はいくらでもいるはずだ。
気の乗らない晩餐を終えた俺は、ひとり部屋に戻りため息をつく。
「せっかくの誕生日に、そんな浮かない顔はいけないな」
上着をクローゼットにかけていた俺は、不意に後ろから抱きつかれた。
「ーーマリユスっ!!」
どこからか俺の部屋に忍び込んでいたマリユスだった。
「ごめんね、ジュール。遅くなってしまった」
マリユスは手にしていた花束を俺に差し出した。
「ジュール、二十歳の誕生日おめでとう。愛してるよ」
「マリユスっ!」
俺はマリユスに抱きついた。俺が好きだと言っていた花、ーー青いアネモネの花束が床に落ちる。
マリユスは俺を横抱きにしたまま、俺を寝台まで運んだ。
「ねえ、今日は忙しいんじゃなかったの?」
思わずでる憎まれ口に、マリユスは微笑んだ。
「どんなに忙しくても、今日は俺の愛するジュールの誕生日だよ。
たとえ、どんな用事があっても、君におめでとうを言いに駆けつけるさ!」
「マリユス、大好きだよ……、もう俺から離れないで!」
俺は俺の上に乗るマリユスの首に手を回した。
「もちろん……、君は一生俺のものだよ……」
口づけは深く、甘く、俺を酩酊させるのに十分だった。
「ジュール、君の淫紋を見せて……、ああ、すごくきれいだよ。興奮してるんだね……、赤く光っている……」
「マリユス、身体が熱いんだ……、早く、早く来て……。欲しいんだよ、マリユス!」
マリユスに淫紋を刻まれたことで、俺は前よりずっと性に貪欲になっていた。
ーーおそらくそれが、マリユスの本当の狙いだったんだろう。
マリユスの従順な性の玩具と化した俺は、マリユスの欲望を満たすためにはなんだってできた……。
そして、二十歳の誕生日の夜、俺の寝台の上で始まった二人の交合は、なかなか終わることができなかった。
ーーだから、突然の訪問者に俺たちはなすすべもなかった。
「ねえ、ジュール、もう一回……」
裸でみだらに絡み合ったまま、マリユスが俺の首筋に舌を這わせてきた。
「だめ、だよ……、マリユス、もう……っ」
「嘘つきだね、ジュール。まだ淫紋は光ってるよ」
マリユスの手が、俺の下腹部に伸びる。
「あっ、んっ、ダメッ、イッたばっかりだからっ、ああっ……」
「力抜いてて、大丈夫、柔らかいままだからすぐに入るよ」
マリユスが俺の片足を抱え上げたその時……、
「お前たちっ、一体何をしているんだっ!!」
父親の怒号が、部屋に響いていた。
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