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第3話 公爵家の双子

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 アムルは、サマラス公爵家の長男として生を受けた。

 サマラス家は、王族にも近く、多くの優秀なアルファを輩出する家柄としても知られていた。
 アルファ同士の両親から生まれたアムルは、両親からも将来を嘱望されていた。

 そして、アムルには双子の弟・アミードがいた。

 双子といっても、アムルとアミードが一卵性ではないのは誰の目から見ても明らかで、二人は性格も見た目もまるで違っていた。

 アムルは透き通るような水色の瞳と水色の髪。

 アミードは輝くような金色の瞳と金色の髪。


 双子の両親は、二人がアルファであると確信しており、それゆえ幼少期から様々な英才教育を受けさせていた。

 そして、アムルとアミードには、仲の良い幼馴染がいた。

 同い年のマーリクは、国の王太子だったが、子供のころから飾らない人柄で、人好きする笑顔で周りを和やかにさせていた。
 燃えるような赤毛と、若葉のような輝く緑色の瞳に均整の取れた体格。そしてたぐいまれな美しさが、彼が高位のアルファであることを物語っていた。

 アムルとアミードとも、マーリクとあっという間にうちとけて、まるで兄弟のように3人で過ごすことが多くなっていた。

 そして、幼い3人は誓い合った。将来王になるマーリクを、アムルとアミードが騎士として支えていこうと……。


 だが、変容は突然訪れた。
 それは3人が16歳になった夏……。
 微熱や体のだるさなど体調不良が続いていたアムルが、医師からオメガであると診断されたのだ。

 アルファとして、家督を継ぐ者としてアムルを育てていた両親はひどく落胆した。だが、残された双子の片割れ――アミードが間違いなくアルファであると診断されると、両親はアムルのことは諦め、アミードへ期待をつないだ。

 今までアルファとして育てられていたのに、突然オメガと診断されたアムルは、自分の身になにが起こったのか、しばらくの間理解できなかった。
 しかも、オメガと診断された途端、今までアミードと一緒に受けていた剣術や馬術の稽古、そして座学まですべて取りやめされられ、代わりにアムルは礼儀作法や刺繍、植物の手入れやオメガとしてのたしなみについての教育を強制的に受けさせられることになった。

 今まで短くしていた髪は伸ばすように言われ、シャツはフリルのあしらわれたブラウスに交換され、ズボンはぴったりとした足の形がわかる女性的なデザインのものに取り換えられた。そして、首には黒い革のベルトがはめられた。

 ――これからはオメガらしく生きていきなさい。

 アルファの母親は、アミルに告げると、家族たちからアムルを隔離した。
 まだヒートは迎えていなかったが、ヒートを起こしたアムルが、アミードや父親を誘うことを恐れたのだ。


 だが、なによりアムルを失望させたのは、親友だと思っていたマーリクからの仕打ちだった。

 ――王太子のマーリクは、自分の将来の側室として、オメガのアムルを所望したのだ。



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