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【番外編】
明日は騎士団休みます。【前編】
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私はルカ・レオンスカヤ。
見目麗しい類まれなる魔法の使い手で、現在はベリーエフ騎士団に所属している騎士でもある。
――ところで私は今、とてつもない怒りの炎に包まれている。
それは……、
「ちょ、アスラン、ちょっと、ダメだって……!」
「ふふ、ククリ、可愛い……」
「もぅっ、ダメだって、早くおろして! ほら、この前も同じことして、お母様に怒られただろ? ジェノ兄様にも!」
「いいじゃないか、ククリ。ククリの定位置は、いつだって俺の膝の上だよ」
――そんなワケ、あるかーーーーーっ!!!!
ちなみにここは、ベリーエフ領に建てられたベリーエフ騎士団本部。
そして今は、作戦会議の真っ最中!!
このククリ団長とアスラン副団長は、婚姻関係であることをいいことに、騎士団の任務やこうした会議においても常にいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃ……(以下略)!!!!
「おいっ、アナスタシア、お前はこの状況をなんとも思わないのか!? いい加減注意したらどうだ!」
私は隣に座る、さきほどからまったくやる気の感じられない赤毛の小娘に小声で言う。
「は? いいじゃない、新婚なんだし。大目に見てあげなさいよ。どうせそのうち飽きるって!」
――そのセリフ、確か約3か月前にも聞いた!
――しかも、飽きるどころか、二人の密着度合いは日に日に上がっていくようで……。
「ねえ、そんなことより、この前の討伐でアンタにかけてもらった『全回復』の魔法!
私、あのあとすっごくお肌の調子がいいのよねー。
私、明日デートなの。しかもね、わかる? そろそろプロポーズの予感ってやつ!
だからね、ルカ、この会議終わったら、もう一回私にあの魔法、かけてくれない?」
恥ずかしげもなく、私に頼むアナスタシア。
私は憤怒のあまり、思わず白目になる。
――私の崇高な魔法を、美容目的に使うなど!!
私はアナスタシアを無視し、ついにその場に立ち上がった。
「ええーいっ、もう、辛抱ならん!
ククリ団長、今日という今日は言わせていただきますよっ!
あなた方お二人は、公私混同もいいところですっ! 騎士団内の風紀が乱れます!
どうか今後はお控えくださいっ!」
私の進言に、ククリははっとした表情になる。
「あっ、ごめん! ごめんね、ルカ!
ほら、言っただろ! アスラン離してっ!」
さすがは私のククリ様。私の要望にすぐに応えて、ひらりとアスラン副団長の膝の上から飛び降りた。
相変わらず美しい身のこなし……。惚れる……。結婚して!
「ルカ……、貴様、いい度胸だな」
愛しのククリから注意されてしまったアスランは、もちろんその行き場のない怒りを私へ向けてくる。
「自業自得だ。少しはわきまえたらどうだ、アスラン!」
「公私混同、だと?
悪いがルカ、ここは私設の騎士団、つまりは俺の騎士団だ!
ここには、はじめから『公』など存在しない! あるのはすべて『私』だ。
つまりは、俺がなにをしようと、お前に注意される筋合いなどない!!」
ーーこの男、もとからどこかおかしなところがあると思っていたが、最近それにますます磨きがかかっている!!
「そうそう! それに最初っから、この騎士団に風紀なんてなかったしねー」
私とアスランのやりとりを面白がっているとしか思えないアナスタシアが、横から茶々を入れる。
そんな私達に、我が愛しのククリは慌てた様子で仲裁に入った。
「ああ、もう!! やめてよ、二人とも!
えーっと、とにかく、次の魔獣討伐は、いつもみたいにアナスタシアが突撃して、その後俺とアスランが援護しつつ攻撃、アスランは攻撃魔法も使って、ルカが防御魔法でシールド張りつつ回復魔法で、いつもみたいにチョチョイのチョイって、そんな感じでOK?」
「「ラジャー!」」
ーーなんだその適当な作戦はっ!!
しかし、毎度この調子で、なんだかんだうまくいき、このベリーエフ騎士団は類を見ないような魔獣討伐の実績を残しているのも事実である……。
ーー本当に何なんだ、この作戦会議!
ーー本当に何なんだ、この騎士団はっ!!
「じゃ、私はこれから王都にドレスを取りに行くから失礼するわね!」
何のためにここにいるのかもわからないアナスタシアが、そそくさと帰る支度をする。
「では、私もこれで失礼する!」
これ以上ここにいて、最愛のククリと憎むべきアスランが目の前でいちゃつくのを見ているのも耐え難いため、私も席をたった。
「あっ、待って、ルカ!」
そんな私に、ククリは声をかけてきた。
「何でしょう、ククリ様?」
平然を装ってはいるが、内心は飛び上がりたいほどの歓喜であふれている私。
いつだって、私はククリ様の虜! もう、どうにでもして欲しい!!!!
「あのさ、ルカ。あれからだいぶ時間経っちゃったんだけど、前、コミュニケーションパーティで約束しただろ?
あの時はあげられなかったから、クッキー作ってきたんだ!
よかったら、もらってくれる?」
見目麗しい類まれなる魔法の使い手で、現在はベリーエフ騎士団に所属している騎士でもある。
――ところで私は今、とてつもない怒りの炎に包まれている。
それは……、
「ちょ、アスラン、ちょっと、ダメだって……!」
「ふふ、ククリ、可愛い……」
「もぅっ、ダメだって、早くおろして! ほら、この前も同じことして、お母様に怒られただろ? ジェノ兄様にも!」
「いいじゃないか、ククリ。ククリの定位置は、いつだって俺の膝の上だよ」
――そんなワケ、あるかーーーーーっ!!!!
ちなみにここは、ベリーエフ領に建てられたベリーエフ騎士団本部。
そして今は、作戦会議の真っ最中!!
このククリ団長とアスラン副団長は、婚姻関係であることをいいことに、騎士団の任務やこうした会議においても常にいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃ……(以下略)!!!!
「おいっ、アナスタシア、お前はこの状況をなんとも思わないのか!? いい加減注意したらどうだ!」
私は隣に座る、さきほどからまったくやる気の感じられない赤毛の小娘に小声で言う。
「は? いいじゃない、新婚なんだし。大目に見てあげなさいよ。どうせそのうち飽きるって!」
――そのセリフ、確か約3か月前にも聞いた!
――しかも、飽きるどころか、二人の密着度合いは日に日に上がっていくようで……。
「ねえ、そんなことより、この前の討伐でアンタにかけてもらった『全回復』の魔法!
私、あのあとすっごくお肌の調子がいいのよねー。
私、明日デートなの。しかもね、わかる? そろそろプロポーズの予感ってやつ!
だからね、ルカ、この会議終わったら、もう一回私にあの魔法、かけてくれない?」
恥ずかしげもなく、私に頼むアナスタシア。
私は憤怒のあまり、思わず白目になる。
――私の崇高な魔法を、美容目的に使うなど!!
私はアナスタシアを無視し、ついにその場に立ち上がった。
「ええーいっ、もう、辛抱ならん!
ククリ団長、今日という今日は言わせていただきますよっ!
あなた方お二人は、公私混同もいいところですっ! 騎士団内の風紀が乱れます!
どうか今後はお控えくださいっ!」
私の進言に、ククリははっとした表情になる。
「あっ、ごめん! ごめんね、ルカ!
ほら、言っただろ! アスラン離してっ!」
さすがは私のククリ様。私の要望にすぐに応えて、ひらりとアスラン副団長の膝の上から飛び降りた。
相変わらず美しい身のこなし……。惚れる……。結婚して!
「ルカ……、貴様、いい度胸だな」
愛しのククリから注意されてしまったアスランは、もちろんその行き場のない怒りを私へ向けてくる。
「自業自得だ。少しはわきまえたらどうだ、アスラン!」
「公私混同、だと?
悪いがルカ、ここは私設の騎士団、つまりは俺の騎士団だ!
ここには、はじめから『公』など存在しない! あるのはすべて『私』だ。
つまりは、俺がなにをしようと、お前に注意される筋合いなどない!!」
ーーこの男、もとからどこかおかしなところがあると思っていたが、最近それにますます磨きがかかっている!!
「そうそう! それに最初っから、この騎士団に風紀なんてなかったしねー」
私とアスランのやりとりを面白がっているとしか思えないアナスタシアが、横から茶々を入れる。
そんな私達に、我が愛しのククリは慌てた様子で仲裁に入った。
「ああ、もう!! やめてよ、二人とも!
えーっと、とにかく、次の魔獣討伐は、いつもみたいにアナスタシアが突撃して、その後俺とアスランが援護しつつ攻撃、アスランは攻撃魔法も使って、ルカが防御魔法でシールド張りつつ回復魔法で、いつもみたいにチョチョイのチョイって、そんな感じでOK?」
「「ラジャー!」」
ーーなんだその適当な作戦はっ!!
しかし、毎度この調子で、なんだかんだうまくいき、このベリーエフ騎士団は類を見ないような魔獣討伐の実績を残しているのも事実である……。
ーー本当に何なんだ、この作戦会議!
ーー本当に何なんだ、この騎士団はっ!!
「じゃ、私はこれから王都にドレスを取りに行くから失礼するわね!」
何のためにここにいるのかもわからないアナスタシアが、そそくさと帰る支度をする。
「では、私もこれで失礼する!」
これ以上ここにいて、最愛のククリと憎むべきアスランが目の前でいちゃつくのを見ているのも耐え難いため、私も席をたった。
「あっ、待って、ルカ!」
そんな私に、ククリは声をかけてきた。
「何でしょう、ククリ様?」
平然を装ってはいるが、内心は飛び上がりたいほどの歓喜であふれている私。
いつだって、私はククリ様の虜! もう、どうにでもして欲しい!!!!
「あのさ、ルカ。あれからだいぶ時間経っちゃったんだけど、前、コミュニケーションパーティで約束しただろ?
あの時はあげられなかったから、クッキー作ってきたんだ!
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