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【番外編】

アスランの物語 7

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 誓いのキスすらない、ちぐはぐな結婚式を終えた俺とククリ……。


 やはり、何もかもがうまくいくわけにはいかなかった。


 メルア公爵家の敷地内に建てられた屋敷で暮らすことになった俺たち。

 俺が間違いを起こさないよう、屋敷の中でも、常に義父母の目が光っていた。



 つまり……、



「旦那様、おかえりなさいませ。ご夕食の準備ができております。ククリ様もお待ちでございます」


 ククリのお付きのメイドだという、このネリーという娘……。


 一見、どこにでもいそうなのっぺりとした顔立ちの、平凡なお下げ髪の娘だが……、

 その暗褐色の髪と瞳、そして「ユエ」という変わった家名からピンときた。



 ーーこの娘、代々王宮で間諜をしているユエ一族の頭領の娘だ!



 おそらく、メルア公爵または、エルミラ・元王女がククリの身の安全をまもるために遣わせた娘なのだろう。

 そのスキのない立ち姿、常に周りに目を配る鋭い目つき……。


 俺がククリに、間違って手を出さないよう、ネリーはいつもククリのそばに張り付いていた……。



 そして……、


「アスランっ、おかえりっ!
今日、魔法騎士団の公開練習見に行ったんだよ!?
俺に気づいた? 一番前で見てたのに、アスランってば全然こっちを見ないんだから!
アスラン、すごくかっこよかったー!」


 飛びつくように俺に駆け寄ってくる可愛いククリ……。

 俺と結婚してから、ククリはますます俺に懐いて、そのむきだしの好意を俺に向けてくるようになっていた。



 ーーだが、それに応えることは、今の俺には、できない……。


「くっ……」



 ーーこの生き地獄を、あと2年も、俺はいったいどう乗り切ればいいのか……!?



 俺は日々、この鬱屈した感情を日記にしたため、魔法騎士団では監視のためにバディを組んだルカ・レオンスカヤといがみ合い、義理の兄であるジェノ副団長へ笑顔で嫌味の応酬をしながら、夜になれば自分の部屋の壁を破壊して、なんとか日々の憂さを晴らしていた……。


 そして、俺のククリへの行き場のない感情を知る唯一の人物……、アナスタシアと定期的に会い、このほとばしるククリへの心情を吐き出していた。
 

 アナスタシアは、ククリが女装する原因を作ってしまったことに自責の念を感じていたため、渋々だが俺の愚痴に付き合うことに了承し、たまには俺へのアドバイスなどもしてくれていたのだった……。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 だが、明けぬ夜などない。

 終わりのない苦しみもついに終わりを迎えようとしたころ……、



 ーーなぜか、ククリは、変わってしまった……。





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