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第42話
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「なぜ、こんなメルア家とベリーエフ家しか知らない秘密を私が知っていると思いますか?
ふふっ、これを聞いたらククリ様はきっとびっくりしますよ!
なんと私に、エルミラ様から直接打診があったのです。『この条件で、ククリと結婚する気はないか?』と!
ええ、もちろんすぐにお受けすると伝えました。私はどんな事があってもククリ様のおそばにいたかったのです。
ですが、エルミラ様はそんな私の想いを逆手にとって……!
……結局、私が条件を呑んだことで、エルミラ様はアスランを決断させることに成功したのです!
どうしてもククリ様に触れたいアスランに、結婚の条件を呑ませるために『お前が結婚しないのなら、ククリはルカ・レオンスカヤと婚姻を結ばせる。ルカはこの条件を呑んで結婚すると言っている』と脅してね!
それで、アスランはこの生殺しの結婚に、ついに了承したのですよ! そして私は喜び虚しく、ただの当て馬として利用された、というわけです」
ルカの瞳が仄暗く光った。
「その後、私は復讐のため、アスランと同じ魔法騎士団に入り、アスランのバディとなってアスランを日々監視し、あの男の弱みを握ろうとしていた。
そんな時、アスランがククリ様の幼馴染のあの赤毛のご令嬢と密会していると知ったのです。
実は、私も今朝、あのご令嬢に会いに行っていたのですよ。確かにアスランの相手にしては、無理のある方でしたね。長剣片手に、けんもほろろに追い返されてしまいました……。
ええ、もちろんアスランが浮気しているなど、私もはなから思っていませんでしたよ。ただ、ククリ様がアスランに不信感を持ってくれればそれでよかった。
あの密告の手紙を見て、アスランの浮気現場だと誤解して、慌てふためくククリ様は本当に可愛らしかったです。
……ついに、ククリ様が私のものになるチャンスが巡ってきたのだと、ゾクゾクしましたよ」
俺の匂いをかぐように、ルカは俺の首元に顔を埋めた。
「や……、め……」
「貴方は、アスランの部屋に結界が敷かれていることを私が知っていて、とても動揺していましたね。
だが、私はもともと知っていたのです。
そもそも、結婚の条件として『ククリ様に夜這いをかけないため、不埒な行動を起こさないために、己の部屋に結界を張って管理すること』という項目がありましたからね!
そして、あのアスランの日記は、本当にラッキーでした! あの男が密かに日記をつけて、日々の悶々とした想いを吐き出していることは知っていました。でもまさかあんな内容だったとは!
実はあの時、私はあのご令嬢と浮気していると思わせる記述だけをククリ様に読ませたんです。もちろん他のページは、ククリ様へのえげつない劣情が綿々と綴られていましたよ。
当初の予定では、純真無垢なククリ様にアスランのその性欲にまみれた本性をわからせて、幻滅して貰う予定だったのですが……。まあ結果として、ククリ様はアスランの浮気を確信し、私はアスランの確固たる浮気の証拠を手に入れた、ということです」
クスクスと笑いながら、ルカが俺の首筋をぺろりと舐める。
「んっ、あ……」
嫌悪感に、背筋にゾクリと悪寒が走る。
「ああ、ククリ様……、私のこれからの計画をお聞かせしましょうか?
アスランとあのご令嬢が密会していたのは、紛れもない事実! そして私は、あの日記の内容を魔法で記録して保存しているのです。
……この証拠をエルミラ様、そして貴方のお父上に見せれば、アスランは即刻離縁されるでしょう。
そして……、今から私と結ばれる貴方は、私を新しい夫として迎え入れることになる……。
ククリ様、私が貴方の初めての男になります。……私と一緒に、幸せに、なりましょう?」
ルカが俺の鎖骨にキスを落とす。
美しい銀髪が、むき出しになった俺の肩にかかった。
「ル……、カ……」
俺はなんとか言葉をつぐむと、覆いかぶさっているルカの背に両手を回した。
「ククリ様っ! 私を受け入れてくださるのですねっ!」
感極まったルカの声。
ルカはそのまま俺の身体を掻き抱いた。
ーー今だっ!
俺はルカの身体に必死ですがりつき、その耳元に口を寄せた。
「ディスペル!」
ふふっ、これを聞いたらククリ様はきっとびっくりしますよ!
なんと私に、エルミラ様から直接打診があったのです。『この条件で、ククリと結婚する気はないか?』と!
ええ、もちろんすぐにお受けすると伝えました。私はどんな事があってもククリ様のおそばにいたかったのです。
ですが、エルミラ様はそんな私の想いを逆手にとって……!
……結局、私が条件を呑んだことで、エルミラ様はアスランを決断させることに成功したのです!
どうしてもククリ様に触れたいアスランに、結婚の条件を呑ませるために『お前が結婚しないのなら、ククリはルカ・レオンスカヤと婚姻を結ばせる。ルカはこの条件を呑んで結婚すると言っている』と脅してね!
それで、アスランはこの生殺しの結婚に、ついに了承したのですよ! そして私は喜び虚しく、ただの当て馬として利用された、というわけです」
ルカの瞳が仄暗く光った。
「その後、私は復讐のため、アスランと同じ魔法騎士団に入り、アスランのバディとなってアスランを日々監視し、あの男の弱みを握ろうとしていた。
そんな時、アスランがククリ様の幼馴染のあの赤毛のご令嬢と密会していると知ったのです。
実は、私も今朝、あのご令嬢に会いに行っていたのですよ。確かにアスランの相手にしては、無理のある方でしたね。長剣片手に、けんもほろろに追い返されてしまいました……。
ええ、もちろんアスランが浮気しているなど、私もはなから思っていませんでしたよ。ただ、ククリ様がアスランに不信感を持ってくれればそれでよかった。
あの密告の手紙を見て、アスランの浮気現場だと誤解して、慌てふためくククリ様は本当に可愛らしかったです。
……ついに、ククリ様が私のものになるチャンスが巡ってきたのだと、ゾクゾクしましたよ」
俺の匂いをかぐように、ルカは俺の首元に顔を埋めた。
「や……、め……」
「貴方は、アスランの部屋に結界が敷かれていることを私が知っていて、とても動揺していましたね。
だが、私はもともと知っていたのです。
そもそも、結婚の条件として『ククリ様に夜這いをかけないため、不埒な行動を起こさないために、己の部屋に結界を張って管理すること』という項目がありましたからね!
そして、あのアスランの日記は、本当にラッキーでした! あの男が密かに日記をつけて、日々の悶々とした想いを吐き出していることは知っていました。でもまさかあんな内容だったとは!
実はあの時、私はあのご令嬢と浮気していると思わせる記述だけをククリ様に読ませたんです。もちろん他のページは、ククリ様へのえげつない劣情が綿々と綴られていましたよ。
当初の予定では、純真無垢なククリ様にアスランのその性欲にまみれた本性をわからせて、幻滅して貰う予定だったのですが……。まあ結果として、ククリ様はアスランの浮気を確信し、私はアスランの確固たる浮気の証拠を手に入れた、ということです」
クスクスと笑いながら、ルカが俺の首筋をぺろりと舐める。
「んっ、あ……」
嫌悪感に、背筋にゾクリと悪寒が走る。
「ああ、ククリ様……、私のこれからの計画をお聞かせしましょうか?
アスランとあのご令嬢が密会していたのは、紛れもない事実! そして私は、あの日記の内容を魔法で記録して保存しているのです。
……この証拠をエルミラ様、そして貴方のお父上に見せれば、アスランは即刻離縁されるでしょう。
そして……、今から私と結ばれる貴方は、私を新しい夫として迎え入れることになる……。
ククリ様、私が貴方の初めての男になります。……私と一緒に、幸せに、なりましょう?」
ルカが俺の鎖骨にキスを落とす。
美しい銀髪が、むき出しになった俺の肩にかかった。
「ル……、カ……」
俺はなんとか言葉をつぐむと、覆いかぶさっているルカの背に両手を回した。
「ククリ様っ! 私を受け入れてくださるのですねっ!」
感極まったルカの声。
ルカはそのまま俺の身体を掻き抱いた。
ーー今だっ!
俺はルカの身体に必死ですがりつき、その耳元に口を寄せた。
「ディスペル!」
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