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第24話

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「悪いな、ルカ、急に呼び出したりして!」


「いいえ、またククリ様が私を頼ってくださって、とても嬉しいですよ」


 ルカは俺たちのテーブルまで来ると、すっぽりと頭から被っていた黒いローブを脱いだ。

 ローブの下からは、魔法騎士団の青い騎士服と、美しい銀髪があらわれる。


「……!!」


 隣に座っていたネリーが、思わず息を呑むのがわかった。

 ーーうーん、さすが、ヤバいほどのイケメン! しかもすごい色気!!



 ここは、魔法騎士団近くの、奥まった場所にあるカフェ。

 俺はアスランについての情報を得るため、さっそくそのバディであるルカに話を聞くことにしたのだった。



「あのさ、今日のこと、アスランには……」

 席についたルカに、俺が言いかけると、

「もちろん、アスランには気づかれずに騎士団を出てきましたからご心配なく。
アスランは今は、魔獣討伐の緊急会議に招集されていますので、今ここでククリ様と私が会っていることには、絶対に気づかれませんよ」


 ルカはふわりと俺に微笑んだ。



 さすがはバディ。お互いの行動も、すべて把握しているのか……。

 俺は今日のアスランの魔法騎士団での予定なんて、何も知らない……。




「ククリ様のその様子では、やはりアスランは離婚を承知しなかったようですね」

 ルカの言葉に、俺は頷く。

 やはりルカには、何でもお見通しのようだ。



「なんでアスランが、俺と離婚したくないのか、意味がわからないんだ!
アスランにとって、この結婚生活は苦痛でしかないはずなのに!
しかも、ああやって俺に隠れてアナスタシアと会ったりしているのに……!」


 アスランはもともと、騎士の戒律を重んじる、とても誠実な男だ。

 もし本当に大切な相手ができたなら、あんなふうにコソコソ会ったりする前に、俺にはっきりと告げてくるようなタイプだと思う。



「ククリ様、貴方がアスランと結婚する、と聞いたとき、私は貴方をとても心配しました」

 ルカが思い詰めたような瞳で俺を見つめる。


「それは、どうして……」

「貴方が、アスランという男の上辺しか見ていないことを知っていたからです。
ククリ様、貴方はアスランの表面的な優しさや、その美しい見てくれに惑わされ、あの男の本質というものからずっと目をそらしてきた……」


 ルカの言葉に、俺はヒュッと息を吐いた。


「……っ、それって、どういう、意味だよ……」



 ーー俺はこれまでずっと、アスランの近くにいた。

 誰よりもアスランをわかっていたはずだし、アスランも俺のことを……。



 でも、ルカの言葉は、俺の心に深く突き刺さっていた。


 ーーもしかして、俺は……、

 アスランのことなど、本当は何も知らなかったのか?



「ククリ様、貴方はアスランの部屋に入ったことはありますか?」

 ルカの問いに、俺はうつむいた。



「……ない」


「でしょうね。アスランの部屋には、頑丈な鍵がかかっているだけでなく、強力な結界が張ってある、違いますか?」


 まるで俺の家の中のことを見てきたみたいなルカの言葉……。



「違わ、ない……」



 俺の答えに、ルカはまるでずぶ濡れの仔犬を見るような眼差しを俺に向けた。



「まだ時間はあります。
いまからアスランの部屋に行きましょう。
ククリ様の疑問の答えが、きっとそこで見つかるはずです!」



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