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第18話
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だが俺が息を呑んだコンマ数秒あとには、アスランはすでにいつもの温和な笑みを浮かべた顔に戻っていた。
「……アスラン?」
「ククリ、何を飲む? 好きなものを取ってくるよ」
「何でもいいけど……」
「じゃ、待ってて」
俺の肩に軽く手を置くと、パーティ会場の飲み物ブースへと向かったアスラン。
――もしかして今のあれがアスランの本音なのか?
俺と結婚したため、当然のごとく魔法騎士団に入職させられたアスラン――。
アスランが騎士になりたかったのは本当だが、この国には魔法騎士団でなくとも、王宮と王都を守る近衛師団、教会に属するテンプル騎士団もある。
俺の一族が所属する魔法騎士団に入れられ、付き合いたくもない義理の兄と姉に従わなければならない毎日というのは、アスランにとってどれほどの苦痛に満ちたものなのか?
俺はすっと背筋が寒くなるのを感じた。
その時……、
「あ、あのっ、ククリ様っ! お久しぶりでございますっ!」
俺に声をかけてきた二人組。
「ああ、ザールとテムリじゃないか、久しぶりだな」
俺の目の前に現れたすっきりとした正装姿の男二人は、実を言うと、俺がかつて剣術で負かした貴族の子弟。
アスランが俺の配下に加わるまで、割と長い間俺の子分として活躍?していた二人組だった。
たしか、それなりに身分も高かった二人。
「よかった! ククリ様が元のお姿に戻られたので、つい嬉しくなってしまって声をかけてしまいました!」
「いまはちょうど、おそばにアスラン様もいらっしゃらなかったので!!」
「……お、おう」
――やはり俺の女装姿は散々だったのだろう。
去年もドレス姿でコミュニケーションパーティに参加していたはずだが、俺にこうやって声をかけてくるものは誰一人としていなかった……。
「お前ら、魔法騎士団に入ったのか? 知らなかったよ。元気でやってるのか?」
とっくに俺の部下などではなくなったというのに、なぜか親分口調になる俺。
そんな俺に気を悪くするでもなく、二人は嬉しそうに頷いた。
「ええ、もちろん! それはそうと、俺たち、ずっと心配していたんです!
あれほど剣術に秀でたククリ様が、もう剣を捨てられた、と聞いて!」
「それもこれも、すべてはアスラン様が……。
でも、このお姿を拝見して、確信しました! また、ククリ様は…‥」
そこまで聞いて、俺はまたまた素晴らしいアイデアを閃いてしまった!
「そうだな、また俺も剣の稽古を再開しようかな。……というわけで、お前たち!
また俺の配下に戻らないか?」
アスランと結婚しているというのに、貴族の若き子弟をわがもの顔で自分の傘下に入れて振り回す俺……!
――まさに、悪役令息そのものじゃないか!!
もちろんこの貴族界では恰好の醜聞のネタとなるし、そんな俺を見て、アスランは、きっと……!
「えっ、本当ですかっ!?」
「もちろんですっ、私たち、何を置いても、ククリ様に……っ」
前のめりになる二人に、思わずのけ反る俺。
だが……、
「楽しそうだね。一体何を話してるの? ククリ」
フレッシュジュースを手にしたアスランが俺の背後から現れた途端、二人の顔色は変わった。
「ヒッ、あ、アスラン様っ……」
「あ、あわ、いえ、滅相もありません!! 私たちは、何も、その……っ!」
「……へえ?」
「ああ、あのな、アスラン、俺、また前みたいに、こいつらとチームを……」
言いかけた俺に、目の前の二人は大きくかぶりを振った。
「いやっ、ククリ様、大変残念ですが、その話はっ、なかったことに!!」
「私たちも、騎士団の任務で多忙を極める身でありまして……っ!」
「ええっ!?」
――さっきまでやる気満々だったはずなのに!?
「じゃあ、これで二人の話は済んだのかな? それでは失礼するね、ザール、テムリ……」
二人の名前を呼ぶとき、アスランの声は一段低くなった。
「「ハイっ!! 大変申し訳ありませんっ、アスラン様ッ!!!!」」
――とうわけで、あっという間に計画失敗……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「……アスラン?」
「ククリ、何を飲む? 好きなものを取ってくるよ」
「何でもいいけど……」
「じゃ、待ってて」
俺の肩に軽く手を置くと、パーティ会場の飲み物ブースへと向かったアスラン。
――もしかして今のあれがアスランの本音なのか?
俺と結婚したため、当然のごとく魔法騎士団に入職させられたアスラン――。
アスランが騎士になりたかったのは本当だが、この国には魔法騎士団でなくとも、王宮と王都を守る近衛師団、教会に属するテンプル騎士団もある。
俺の一族が所属する魔法騎士団に入れられ、付き合いたくもない義理の兄と姉に従わなければならない毎日というのは、アスランにとってどれほどの苦痛に満ちたものなのか?
俺はすっと背筋が寒くなるのを感じた。
その時……、
「あ、あのっ、ククリ様っ! お久しぶりでございますっ!」
俺に声をかけてきた二人組。
「ああ、ザールとテムリじゃないか、久しぶりだな」
俺の目の前に現れたすっきりとした正装姿の男二人は、実を言うと、俺がかつて剣術で負かした貴族の子弟。
アスランが俺の配下に加わるまで、割と長い間俺の子分として活躍?していた二人組だった。
たしか、それなりに身分も高かった二人。
「よかった! ククリ様が元のお姿に戻られたので、つい嬉しくなってしまって声をかけてしまいました!」
「いまはちょうど、おそばにアスラン様もいらっしゃらなかったので!!」
「……お、おう」
――やはり俺の女装姿は散々だったのだろう。
去年もドレス姿でコミュニケーションパーティに参加していたはずだが、俺にこうやって声をかけてくるものは誰一人としていなかった……。
「お前ら、魔法騎士団に入ったのか? 知らなかったよ。元気でやってるのか?」
とっくに俺の部下などではなくなったというのに、なぜか親分口調になる俺。
そんな俺に気を悪くするでもなく、二人は嬉しそうに頷いた。
「ええ、もちろん! それはそうと、俺たち、ずっと心配していたんです!
あれほど剣術に秀でたククリ様が、もう剣を捨てられた、と聞いて!」
「それもこれも、すべてはアスラン様が……。
でも、このお姿を拝見して、確信しました! また、ククリ様は…‥」
そこまで聞いて、俺はまたまた素晴らしいアイデアを閃いてしまった!
「そうだな、また俺も剣の稽古を再開しようかな。……というわけで、お前たち!
また俺の配下に戻らないか?」
アスランと結婚しているというのに、貴族の若き子弟をわがもの顔で自分の傘下に入れて振り回す俺……!
――まさに、悪役令息そのものじゃないか!!
もちろんこの貴族界では恰好の醜聞のネタとなるし、そんな俺を見て、アスランは、きっと……!
「えっ、本当ですかっ!?」
「もちろんですっ、私たち、何を置いても、ククリ様に……っ」
前のめりになる二人に、思わずのけ反る俺。
だが……、
「楽しそうだね。一体何を話してるの? ククリ」
フレッシュジュースを手にしたアスランが俺の背後から現れた途端、二人の顔色は変わった。
「ヒッ、あ、アスラン様っ……」
「あ、あわ、いえ、滅相もありません!! 私たちは、何も、その……っ!」
「……へえ?」
「ああ、あのな、アスラン、俺、また前みたいに、こいつらとチームを……」
言いかけた俺に、目の前の二人は大きくかぶりを振った。
「いやっ、ククリ様、大変残念ですが、その話はっ、なかったことに!!」
「私たちも、騎士団の任務で多忙を極める身でありまして……っ!」
「ええっ!?」
――さっきまでやる気満々だったはずなのに!?
「じゃあ、これで二人の話は済んだのかな? それでは失礼するね、ザール、テムリ……」
二人の名前を呼ぶとき、アスランの声は一段低くなった。
「「ハイっ!! 大変申し訳ありませんっ、アスラン様ッ!!!!」」
――とうわけで、あっという間に計画失敗……。
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