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第17話
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――俺はありがたい木彫りの仏様か何かか!?
ちなみに、このジェノ兄様は、エルミラお母様と同種の存在。
俺を「天使」とたたえ、ワガママ三男坊である俺を全肯定する、大変残念な人種である。
「はい、大変ありがたいことに、私はククリと結婚できて、毎日幸せをかみしめています。
それはもう大切に、大切にしておりますのでご安心ください、お義兄様。
あと、ククリはお義兄様のものではなく、私の伴侶ですのでそこはお忘れなきよう……」
表情を一切変えず、まるでお経を読み上げるみたいにすらすらと答えるアスラン。
心からのセリフではないことは明らかだ。
「ぬぁああんだと!! おのれっ、アスラン・ベリーエフっ! お前に兄呼ばわりされる覚えなど、俺にはないっ!!
しかも、なんだそのっ、毎回毎回、俺を副団長と思わぬその愚弄した態度はっ!?
貴様っ、許せんっ! やはり、一度決着をつけるべきだなっ! いいか、今度っ……」
「今度……、なんだって!?」
よく響くアルトの声。
ジェノ兄様の後ろに現れたのは、その妻にして魔法騎士団トップのエリザ・アントニアンだった。
エリザは美しい栗色の巻き毛を高い位置でまとめ、いつもの騎士服とはちがうエレガントな青いドレスに身を包んでいた。
まさにトップオブ魔法騎士団! 強さも美しさも半端ない!
「ひっ、え、エリザ!!」
青ざめるジェノ兄様。
「ジェノ、何度言えばわかるのかな? あなたが部下に意味のない言いがかりをつけてイビることで、どれだけ魔法騎士団内の風紀を乱しているか、ということをっ!?」
眉間にシワを寄せたエリザ義姉様の後ろに、青い稲光が見えるようだった!
こわ!!
「ひゃ、あ、ちがう、違うんだっ、俺はそんなつもりじゃ!」
その美しさと強さに憧れて猛アタックの末、やっとの思いでエリザと結婚したジェノ兄様。
しかし、婚約後数秒で、嫌というほど二人の力関係を思い知らされたようだ。
鍛錬と任務に忙しいエリザが、まったく自分にかまってくれないこと、それゆえ夫婦生活も期待していたよりずっと少ないとジェノ兄様はいつも愚痴をこぼしていた。
――前世を思い出す前の俺には、なんのことだかさっぱりわからなかったが……。
「ククリ、久しぶりだね。ドレス姿はもうやめたのかな?
うん、でも今日のその格好は、とても素敵だね。君によく似合ってるよ!」
エリザの青い瞳がすっと細められる。
「ありがとうございます、エリザお義姉様」
「ククリ、君の夫のアスランは、魔法騎士団でも申し分のない活躍を見せてくれているよ。アスランは君がいるから毎日頑張れているんだと思うよ。
――アスラン、魔法騎士団のエースとして、今後も一層、任務に励むように!」
「はっ、団長。ありがたいお言葉に存じます」
俺の横でアスランが敬礼する。
軽く頷いて、ジェノ兄様を連行するように引き連れていくエリザの後ろ姿を、俺はぼーっと見送っていた。
――強くて美しい女性……! 最高だ!!
「よかったね、アスラン、エリザ団長に褒めてもらえて……」
言いながらアスランをふと振り向いたとき、俺は見てしまった……。
――今まで見たことのないほど、暗く、苛立った表情のアスランを!!!!
ちなみに、このジェノ兄様は、エルミラお母様と同種の存在。
俺を「天使」とたたえ、ワガママ三男坊である俺を全肯定する、大変残念な人種である。
「はい、大変ありがたいことに、私はククリと結婚できて、毎日幸せをかみしめています。
それはもう大切に、大切にしておりますのでご安心ください、お義兄様。
あと、ククリはお義兄様のものではなく、私の伴侶ですのでそこはお忘れなきよう……」
表情を一切変えず、まるでお経を読み上げるみたいにすらすらと答えるアスラン。
心からのセリフではないことは明らかだ。
「ぬぁああんだと!! おのれっ、アスラン・ベリーエフっ! お前に兄呼ばわりされる覚えなど、俺にはないっ!!
しかも、なんだそのっ、毎回毎回、俺を副団長と思わぬその愚弄した態度はっ!?
貴様っ、許せんっ! やはり、一度決着をつけるべきだなっ! いいか、今度っ……」
「今度……、なんだって!?」
よく響くアルトの声。
ジェノ兄様の後ろに現れたのは、その妻にして魔法騎士団トップのエリザ・アントニアンだった。
エリザは美しい栗色の巻き毛を高い位置でまとめ、いつもの騎士服とはちがうエレガントな青いドレスに身を包んでいた。
まさにトップオブ魔法騎士団! 強さも美しさも半端ない!
「ひっ、え、エリザ!!」
青ざめるジェノ兄様。
「ジェノ、何度言えばわかるのかな? あなたが部下に意味のない言いがかりをつけてイビることで、どれだけ魔法騎士団内の風紀を乱しているか、ということをっ!?」
眉間にシワを寄せたエリザ義姉様の後ろに、青い稲光が見えるようだった!
こわ!!
「ひゃ、あ、ちがう、違うんだっ、俺はそんなつもりじゃ!」
その美しさと強さに憧れて猛アタックの末、やっとの思いでエリザと結婚したジェノ兄様。
しかし、婚約後数秒で、嫌というほど二人の力関係を思い知らされたようだ。
鍛錬と任務に忙しいエリザが、まったく自分にかまってくれないこと、それゆえ夫婦生活も期待していたよりずっと少ないとジェノ兄様はいつも愚痴をこぼしていた。
――前世を思い出す前の俺には、なんのことだかさっぱりわからなかったが……。
「ククリ、久しぶりだね。ドレス姿はもうやめたのかな?
うん、でも今日のその格好は、とても素敵だね。君によく似合ってるよ!」
エリザの青い瞳がすっと細められる。
「ありがとうございます、エリザお義姉様」
「ククリ、君の夫のアスランは、魔法騎士団でも申し分のない活躍を見せてくれているよ。アスランは君がいるから毎日頑張れているんだと思うよ。
――アスラン、魔法騎士団のエースとして、今後も一層、任務に励むように!」
「はっ、団長。ありがたいお言葉に存じます」
俺の横でアスランが敬礼する。
軽く頷いて、ジェノ兄様を連行するように引き連れていくエリザの後ろ姿を、俺はぼーっと見送っていた。
――強くて美しい女性……! 最高だ!!
「よかったね、アスラン、エリザ団長に褒めてもらえて……」
言いながらアスランをふと振り向いたとき、俺は見てしまった……。
――今まで見たことのないほど、暗く、苛立った表情のアスランを!!!!
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