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第4話
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「よしっ、これで、まあ、なんとかいいか……」
俺はあらためて、自分の姿を確認する。
シャツも青い上衣も、ズボンも、黒いブーツも男物。シャツとズボンはどちらも丈が長すぎるが、女物のドレスを着ているよりはずっとましだ。
どれもネリーに頼んで、屋敷の収納部屋から、兄貴二人が昔身に着けていたものを探し出してきてもらったのだ。
前世、スタイリストとして名を馳せていたころの俺からしたら、ありえないほどひどいコーディネートだが、とりあえず今は致し方ない。
「ああああああ!! なんということでしょう……、ククリ様のあんなに美しかった御髪まで!」
ネリーは両手で口を覆って、さっきからオロオロと俺の周りをまわっている。
ちなみに、あのぼさぼさの長い髪はさきほど、机の引き出しにあったハサミで一思いにばっさり切り落としてしまったのだ。
「大丈夫だよ、ネリー。今から理髪師を呼んで、ちゃんと整えてもらうから! さすがにこんなザンバラのままいるつもりはないって!」
「そういうことを申し上げているわけではないのですっ!! ああっ、私はいったいどうすれば……、
ククリ様がショックのあまりおかしくなってしまわれて……」
青い顔で、ぎゅっとエプロンを握り締めるネリー。
しかし前世を思い出した俺にとっては、今までの俺の「男の娘」の恰好こそおかしく、異常そのものだったのだ!
「ネリー、よく聞いて! 俺はようやく目が覚めたんだよ!
女の子の恰好をしていたって、俺が男であることに変わりはない。そもそも、俺がアスランと結婚したのが間違いだったんだよ!」
「ククリ様!!!!」
ネリーは息を呑んだ。
「俺は今までいろいろ無茶をして、周りに迷惑をかけてきた、でもこれからは……」
ネリーは目を真ん丸に見開いて俺を見た。
「ククリ様っ、そんな!!!! ひどいですわ! ひどすぎます!
今までどれだけククリ様が旦那様と結婚するために努力してきたのか、このネリーが一番よく知っているのですよ!
それはもう、つらく、苦しく、長く、険しい道のりでございました。
でもククリ様はそれを血を吐く思いで耐えて、ようやく、旦那様との結婚にこぎつけたのではありませんか!?
それを、なんです? 旦那様があんな赤毛の女と一度浮気をしたくらいで、なにもかもなかったことにしてしまうのですかっ!?」
「ネリー……」
そうだ、毎朝細身のドレスを着るために俺の腹をコルセットで締め上げてくれるのも、くせっ毛の砂色の髪を綺麗な縦ロールに整えてくれるのも、ネリーの仕事だった。
俺はネリーにも、いままで信じられないくらい労力と負担を強いてきたのだ……。
「ネリーは悔しゅうございます! あんな跳ねっかえりの女のせいで、ククリ様の今までの努力を無駄に……」
――いや、今までの努力そのものが、今の俺にとって無駄そのものだったんだけど……。
エプロンを握り締めたまま、しくしくと泣き出してしまったネリーの肩に、俺はそっと手を置いた。
「泣かないで、ネリー。俺が悪かった。っていうか、今までの俺が悪すぎた!
でも大丈夫だよ。俺にはこれからもずっとネリーのことが必要だからね!
もう髪を巻く必要はないけど、これからは毎朝、寝癖を直して俺の髪を格好よくセットして!
もっとすっきりした服もそろえたいから、これから町に買い出しに行こう!
あと、それから……、ネリーにしか話せないすごく重要な話があるんだ。
ネリーの協力なくしては、成し遂げられないことだよ! 相談に乗ってくれるよね!?」
ぱっと顔を上げたネリーの暗褐色の瞳は、期待に輝いていた。
「はいッ、ククリ様っ! 私はククリ様のためなら、いつだって、どんなことでも、なんなりとっ!」
――そして俺は、動き始める。
俺のワガママから無理やり俺と結婚させてしまった、夫・アスランとの離婚に向けて!!!!
俺はあらためて、自分の姿を確認する。
シャツも青い上衣も、ズボンも、黒いブーツも男物。シャツとズボンはどちらも丈が長すぎるが、女物のドレスを着ているよりはずっとましだ。
どれもネリーに頼んで、屋敷の収納部屋から、兄貴二人が昔身に着けていたものを探し出してきてもらったのだ。
前世、スタイリストとして名を馳せていたころの俺からしたら、ありえないほどひどいコーディネートだが、とりあえず今は致し方ない。
「ああああああ!! なんということでしょう……、ククリ様のあんなに美しかった御髪まで!」
ネリーは両手で口を覆って、さっきからオロオロと俺の周りをまわっている。
ちなみに、あのぼさぼさの長い髪はさきほど、机の引き出しにあったハサミで一思いにばっさり切り落としてしまったのだ。
「大丈夫だよ、ネリー。今から理髪師を呼んで、ちゃんと整えてもらうから! さすがにこんなザンバラのままいるつもりはないって!」
「そういうことを申し上げているわけではないのですっ!! ああっ、私はいったいどうすれば……、
ククリ様がショックのあまりおかしくなってしまわれて……」
青い顔で、ぎゅっとエプロンを握り締めるネリー。
しかし前世を思い出した俺にとっては、今までの俺の「男の娘」の恰好こそおかしく、異常そのものだったのだ!
「ネリー、よく聞いて! 俺はようやく目が覚めたんだよ!
女の子の恰好をしていたって、俺が男であることに変わりはない。そもそも、俺がアスランと結婚したのが間違いだったんだよ!」
「ククリ様!!!!」
ネリーは息を呑んだ。
「俺は今までいろいろ無茶をして、周りに迷惑をかけてきた、でもこれからは……」
ネリーは目を真ん丸に見開いて俺を見た。
「ククリ様っ、そんな!!!! ひどいですわ! ひどすぎます!
今までどれだけククリ様が旦那様と結婚するために努力してきたのか、このネリーが一番よく知っているのですよ!
それはもう、つらく、苦しく、長く、険しい道のりでございました。
でもククリ様はそれを血を吐く思いで耐えて、ようやく、旦那様との結婚にこぎつけたのではありませんか!?
それを、なんです? 旦那様があんな赤毛の女と一度浮気をしたくらいで、なにもかもなかったことにしてしまうのですかっ!?」
「ネリー……」
そうだ、毎朝細身のドレスを着るために俺の腹をコルセットで締め上げてくれるのも、くせっ毛の砂色の髪を綺麗な縦ロールに整えてくれるのも、ネリーの仕事だった。
俺はネリーにも、いままで信じられないくらい労力と負担を強いてきたのだ……。
「ネリーは悔しゅうございます! あんな跳ねっかえりの女のせいで、ククリ様の今までの努力を無駄に……」
――いや、今までの努力そのものが、今の俺にとって無駄そのものだったんだけど……。
エプロンを握り締めたまま、しくしくと泣き出してしまったネリーの肩に、俺はそっと手を置いた。
「泣かないで、ネリー。俺が悪かった。っていうか、今までの俺が悪すぎた!
でも大丈夫だよ。俺にはこれからもずっとネリーのことが必要だからね!
もう髪を巻く必要はないけど、これからは毎朝、寝癖を直して俺の髪を格好よくセットして!
もっとすっきりした服もそろえたいから、これから町に買い出しに行こう!
あと、それから……、ネリーにしか話せないすごく重要な話があるんだ。
ネリーの協力なくしては、成し遂げられないことだよ! 相談に乗ってくれるよね!?」
ぱっと顔を上げたネリーの暗褐色の瞳は、期待に輝いていた。
「はいッ、ククリ様っ! 私はククリ様のためなら、いつだって、どんなことでも、なんなりとっ!」
――そして俺は、動き始める。
俺のワガママから無理やり俺と結婚させてしまった、夫・アスランとの離婚に向けて!!!!
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