97 / 97
【番外編】
約束の場所 ~1~
しおりを挟む「もう我慢できない!」
低い声とともに、俺は草むらに押し倒されていた。
夜空は、深い藍色で、三日月が金色に輝いている。
星は俺がいた世界からしたら考えられないくらい一面にキラキラと広がっていて、改めて俺はこの世界の美しさに息を呑んだ。
そして……、
「ヨータ……、俺を見て……」
切なげな声を漏らすのは、吸い込まれそうな青い瞳の俺の恋人……、いや、正式に婚約者と言っても、もういいんだろうか?
「セファー……っ」
そのまま重なる唇。
セファーは俺の手を掴むと、そのまま柔らかい草の上に押し付けるようにした。
俺の身体を押しつぶさないように配慮しながらも、セファーはその昂りを見せつけるかのように、俺の身体に自分の逞しい身体を触れ合わせてきた。
「ヨータっ、ヨータっ!」
俺のシャツの中に潜り込ませようとするその手を、俺は止めた。
「駄目だよ……っ、セファー……!」
「もう無理なんだっ! こんなの、我慢できないっ……」
俺の首筋に顔を埋めるセファー。
短くなってしまったそのごく淡い金色の髪に、俺は指を差し入れ、やさしく梳いた。
「でも、約束しただろう?」
俺の言葉に、セファーは俺の瞳を覗き込んだ。
「二人が黙っていれば、わからない!」
「……セファー!」
俺は大きなため息をついた。
――うん、セファーはこういうところがあるんだよな……。
俺はセファーのその広い背中に、両腕をまわした。
「セファー、君は長の息子なんだよ。
君が決まりを破ったら、皆に示しがつかないだろう?」
俺はこつんと自分のおでこをセファーのそれにくっつけた。
「そんなこと、構わない! 両親はただ、自分たちの体面を守りたいだけだ!
もう俺たちは心身とも結ばれている。あの二人だって、それをわかっているくせに、ただ、この村の掟に縛られて……」
ぎりぎりと歯ぎしりしながらも、俺の服をなんとかはぎ取ろうとしてくるセファー。
俺は頭に血が上ったその頬を、軽くつねってやった。
「セファー! 違うだろ? 君は次の長になる人間だろ?
それが、その君自ら掟を破って、規律を乱したら、この村はどんなふうになると思う?」
「……でも、この村の若い奴らだって、きっと、隠れて……」
「セファー!」
俺は身体を起こすと、セファーの身体をぎゅっと抱きしめてやった。
「もう耐えられないんだ! 寝る場所も別! ヨータは神事や式の準備で忙しく、俺は魔獣狩りにかりだされて、日中も満足に会えない!!
明日だって……!」
「でもあと10日の辛抱だろ? それにルドビに着くまでは、毎日嫌っていうほどしてたじゃないか!
おかげで、村に着くのが何日も遅れちゃったし……。それに、結婚式が終わったら、いっぱいできるんだから……」
「毎日、する!」
ぎゅっとセファーは俺を抱き返してきた。
「……うん、まい、にち、ね……」
――俺の身体は持つのだろうか‥‥…?
結婚式までに、少し体力をつけておいた方がいいかもしれない……。
その時……、
「神子様ーっ、神子様ぁーっ!」
遠くから俺を呼ぶ声がした。
「母上だ!」
セファーが目を見開く。
「じゃ、行くよ。セファーも見つからないようにね!」
俺は服についた草を払うと、立ち上がった。
「ヨータ……っ」
ふいに強く腕を引かれ、唇を奪われる。
「……っ!」
「また、明日……」
ほほ笑むセファー。
美しすぎる顔面に、俺はいつまでたっても慣れそうにない……。
773
お気に入りに追加
2,092
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(56件)
あなたにおすすめの小説
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません
柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。
父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。
あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない?
前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。
そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。
「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」
今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。
「おはようミーシャ、今日も元気だね」
あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない?
義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け
9/2以降不定期更新
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?
み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました!
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!
灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」
そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。
リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。
だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く。が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。
みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。
追いかけてくるまで説明ハイリマァス
※完結致しました!お読みいただきありがとうございました!
※11/20 なんかアクセスが最近増えてて、今でも読んでくださってる方がいて嬉しいので、短編(いちまんじ)新しく書きました。時間有る時にでも読んでくださいw
親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺
toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染)
※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。
pixivでも同タイトルで投稿しています。
https://www.pixiv.net/users/3179376
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/98346398
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
mizutamaさん体調悪い中書いてくださってありがとうございました😭すごくすごく嬉しいです!早くよくなってmizutamaさんの新作が読めるのを、過去作を読みながら楽しみに待っています!それではどうかお大事に!無理されないようにゆっくり休んで、しっかり治してください!
まきまき様❤
感想ありがとうございます!!承認がめちゃくちゃ遅くなって申し訳ないです!
実はあまり体調が良くない状態が続いており、更新はしばらくお休みする予定です・・・しっか休養して万全の体制を整えたいので今しばらくお待ち下さい・・・m(_ _)m
応援ありがとうございます!!こうやって感想いただけると本当に元気がでます!
体調が優れず、なんだか挫けそうになっているので・・・
本当に感謝です❤
番外編嬉しいです!しかも二作品も!
ずっとセファー視点が読みたいと願っていたので、喜びで転げ回りました。
セファーは狂おしい一年を過ごして思いが煮詰まっていったんですね。最高です。
セファーの故郷についたお話もとても楽しみです、ヨータは本当に優しいし包容力がありつつ叱ってくれる理想の姉さん女房ですね。
更新嬉しいです、暑い日が続きますのでご自愛ください
感想ありがとうございます!
番外編喜んでいただけてめちゃくちゃうれしいです!
二人のその後の番外編もつづけて更新していきたいのですが、ちょっとこの夏の暑さで体力と気力がかなり低下しております・・・。あまり無理ができませんので、ぼちぼち更新になると思いますが、引き続きお楽しみくださいませ~❤️
番外編キター(゚∀゚*)
王宮でセファーがどんな風に神子に惹かれていったのか知れて良かったです!
有難うございます!
それにしても神子の喘ぎ声、そうとう色っぽいんでしょうね…(周りの護衛騎士の話から)
今後もいろんな視点のお話、楽しみにしてますっっ
感想ありがとうございます❤️
すみません、本当に夏バテ(というか熱中症?)がヤバいことになっていて、お返事もできませんでした。
番外編楽しんでいただけてうれしいです!
続いて二人の婚約~結婚編までお届けしたいのですが、まだ体調が良くないため、体調回復までしばらくお待ちください!