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第78話
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セファーがその長剣を振り上げると、砂嵐が巻き起こった。
周りの空気が、共鳴するかのように低くうなり、セファーの周りでは青い火花が散っている。
「駄目だっ、セファー!」
俺はセファーに飛びつく。
「離せっ、ヨータ!」
「駄目だ、相手は君の仲間だった騎士たちじゃないか!
傷つけてはいけないっ!」
「くッ……」
セファーが剣を振り下ろす。
その威力は大きな竜巻となって、砂を巻き上げていった。
だが、それは、誰もいない場所へ向かったため、誰も砂漠の上に倒れることはなかった。
「何という力だ!」
師団長は目をむいた。
「師団長、神子は流血を望んでいない。
これで、わかっただろう。あなた達では俺に勝てない。
悪いことは言わない。俺たちは見なかったことにして、サンドロオリヴェに戻れ!」
セファーがその長髪をなびかせ、師団長に語りかけた。
手にした長剣と相まって、まるで軍神のような神々しさだった。
周りではセファーの部族たちが、歓声を上げる。
「セファー、セファー、セファー! ルドビの誇り!」
セファーを囃し立てる声を背に、ロロはふらふらとこっちへ向かってくる。
「このまま逃げきるなんて許さない、セファー・クライツァ!
こうなった責任を取れ!」
「貴様は、自業自得だ! 神子を騙った罪は重い! 大人しく裁きを受けろ!」
きっぱりと拒絶するセファー。
だが……、
「ロロ、本当なのか、ナセルが病気だというのは」
俺の言葉に、ロロはその気の強そうな顔をこちらに向ける。
「ああ、こんなところで嘘なんか言うもんか!
ナセル殿下は、もってあと半月だと医者からも言われている。
だから、僕がここに連れてこられたんだ。
そういう僕も、サンドロオリヴェに戻ったところで即刻八つ裂きにされる身だけどね!
神子様、アンタはいいね。これからセファーと二人、仲良く乳繰り合って暮らすってか!
護衛騎士だったセファーの故郷はきっと神子様の力のおかげで、サンドロオリヴェをしのぐ大国に成り上がるんだろうな。
見届けられないのが残念だよ!」
「俺は、王宮に行くよ」
「え……?」
ロロが、急に脱力したような表情になる。
「なんで……? だって、いま、アンタは……」
「これまでのことと、今の話で、俺にもわかったことがある。
多分、俺ならナセルを回復させられる。
俺はいったん王宮に戻るよ。ロロ、君も裁かれなくてすむように、陛下に頼んでみる」
「嘘だ……、そんな……」
「駄目だっ、ヨータっ!」
セファーが俺の肩を掴む。
「王宮には絶対に行かせない! わからないのか、アンタがどんな目に遭うか!
もう二度と戻れない!」
「大丈夫だよ、セファー」
俺はセファーに微笑んでみせた。
「セファー、俺をあそこから助け出してくれてありがとう。
俺はずっと受け身で……、あのまま王宮にいたら、きっとセファーの言うようにあの薬のせいだけでなくても、そのうちに精神を破綻させられていただろう。
でも……、君が救ってくれた!」
「ヨータ、駄目だ!」
俺は首を振る。
「君が気づかせてくれたんだ!
君が俺をあのとき連れ出してくれなかったら、俺はあのまま、王宮のいいなりの人形にされていたはずだ。
でも、だから余計に俺は行かなきゃいけない。間違いは、正さないといつまでも間違ったままだ。
そしてそれは、きっと俺にしかできない。
心配しないで。俺はもう誰にも搾取されたりしない! 儀式も、薬も、もともと必要ないんだ!
きっと、戻ってくる。……君との約束もあるしね!」
「嫌だっ! ヨータっ!」
俺は背伸びして、青ざめるセファーをぎゅっと抱きしめた。
「俺は神子だよ? ちゃんと約束は守る。
絶対に戻ってくる。そして、ルドビでずっと一緒に暮らそう?
約束だ!」
「ヨータっ……」
周りの空気が、共鳴するかのように低くうなり、セファーの周りでは青い火花が散っている。
「駄目だっ、セファー!」
俺はセファーに飛びつく。
「離せっ、ヨータ!」
「駄目だ、相手は君の仲間だった騎士たちじゃないか!
傷つけてはいけないっ!」
「くッ……」
セファーが剣を振り下ろす。
その威力は大きな竜巻となって、砂を巻き上げていった。
だが、それは、誰もいない場所へ向かったため、誰も砂漠の上に倒れることはなかった。
「何という力だ!」
師団長は目をむいた。
「師団長、神子は流血を望んでいない。
これで、わかっただろう。あなた達では俺に勝てない。
悪いことは言わない。俺たちは見なかったことにして、サンドロオリヴェに戻れ!」
セファーがその長髪をなびかせ、師団長に語りかけた。
手にした長剣と相まって、まるで軍神のような神々しさだった。
周りではセファーの部族たちが、歓声を上げる。
「セファー、セファー、セファー! ルドビの誇り!」
セファーを囃し立てる声を背に、ロロはふらふらとこっちへ向かってくる。
「このまま逃げきるなんて許さない、セファー・クライツァ!
こうなった責任を取れ!」
「貴様は、自業自得だ! 神子を騙った罪は重い! 大人しく裁きを受けろ!」
きっぱりと拒絶するセファー。
だが……、
「ロロ、本当なのか、ナセルが病気だというのは」
俺の言葉に、ロロはその気の強そうな顔をこちらに向ける。
「ああ、こんなところで嘘なんか言うもんか!
ナセル殿下は、もってあと半月だと医者からも言われている。
だから、僕がここに連れてこられたんだ。
そういう僕も、サンドロオリヴェに戻ったところで即刻八つ裂きにされる身だけどね!
神子様、アンタはいいね。これからセファーと二人、仲良く乳繰り合って暮らすってか!
護衛騎士だったセファーの故郷はきっと神子様の力のおかげで、サンドロオリヴェをしのぐ大国に成り上がるんだろうな。
見届けられないのが残念だよ!」
「俺は、王宮に行くよ」
「え……?」
ロロが、急に脱力したような表情になる。
「なんで……? だって、いま、アンタは……」
「これまでのことと、今の話で、俺にもわかったことがある。
多分、俺ならナセルを回復させられる。
俺はいったん王宮に戻るよ。ロロ、君も裁かれなくてすむように、陛下に頼んでみる」
「嘘だ……、そんな……」
「駄目だっ、ヨータっ!」
セファーが俺の肩を掴む。
「王宮には絶対に行かせない! わからないのか、アンタがどんな目に遭うか!
もう二度と戻れない!」
「大丈夫だよ、セファー」
俺はセファーに微笑んでみせた。
「セファー、俺をあそこから助け出してくれてありがとう。
俺はずっと受け身で……、あのまま王宮にいたら、きっとセファーの言うようにあの薬のせいだけでなくても、そのうちに精神を破綻させられていただろう。
でも……、君が救ってくれた!」
「ヨータ、駄目だ!」
俺は首を振る。
「君が気づかせてくれたんだ!
君が俺をあのとき連れ出してくれなかったら、俺はあのまま、王宮のいいなりの人形にされていたはずだ。
でも、だから余計に俺は行かなきゃいけない。間違いは、正さないといつまでも間違ったままだ。
そしてそれは、きっと俺にしかできない。
心配しないで。俺はもう誰にも搾取されたりしない! 儀式も、薬も、もともと必要ないんだ!
きっと、戻ってくる。……君との約束もあるしね!」
「嫌だっ! ヨータっ!」
俺は背伸びして、青ざめるセファーをぎゅっと抱きしめた。
「俺は神子だよ? ちゃんと約束は守る。
絶対に戻ってくる。そして、ルドビでずっと一緒に暮らそう?
約束だ!」
「ヨータっ……」
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