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第77話
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「セファー、を?」
突然のロロの告白に、俺は戸惑っていた。
そんな俺に、ロロは唇を歪めた。
「そうだよ。知らなかったでしょ。僕はね、この世界に来て、初めて会ったときから、セファーに夢中だったんだ!
セファーは、この世界に飛ばされて右も左もわからなかった僕を、あの村まで迎えに来てくれた! セファーは僕の救世主だったんだ。
僕は一目で恋に落ちたよ! 全然僕になびいてくれないところも、たまらなく素敵だった。
だから、僕はナセル殿下に言ったんだ。
ーー殿下が神子様を手に入れたら、神子様の護衛騎士のセファーを僕に頂戴って!
もちろん、殿下は快諾してくれたよ。そして、神子様にいつも使ってる薬も僕にくれたんだ。
これを使って寝台に押し倒せば、いくらその気のないセファーでもひとたまりもないだろうって!
既成事実さえ作ってしまえば、セファーは真面目を絵に描いたような男だから、僕への責任を取ってくれるだろうって。
それなのに……っ」
ギリ、とロロは歯ぎしりした。
「それなのに、神子様!
アンタは、セファーまで独り占めした!
本当なら、僕がセファーの故郷に連れて行ってもらうはずだったのに!
なんなんだよ、アンタはっ!
僕とアンタで、なにが違うっていうんだよ! 僕のほうが若くて、見た目もいい!
王宮に召喚された神子様がそんなに偉いのかよっ!
アンタなんて、アンタなんて……、あのまま砂漠で干からびて死んじゃえばよかったんだ!」
「コイツっ!」
「やめてくださいっ!」
ロロの襟首を掴んで締め上げようとする師団長を、俺は止めた。
「ロロ、じゃあ、君の考えだったのか?
俺を、ナセルが砂漠に捨てたのは……」
「ははっ、そうだよ!
神子様は衣食住に恵まれすぎてるから、ちょっと調子に乗ってるんだって、殿下に教えてあげたんだ。
一度、砂漠の真ん中に放り出して、自分の無力さに気づけば、きっと泣いて殿下にすがってくるだろうって!
どれだけ殿下が大切だったかってことに気づけば、きっと自分から脚を開いてくるだろうって!」
「貴様っ! 神子を冒涜するな!」
セファーが再び長剣を抜いた。
ロロは鼻で笑う。
「だって、そうだろ? 神子様、アンタは本当に調子づいてた!
王様や大魔道士様にちやほやされて!
可愛そうなナセル殿下を無視して、神官長を従えて、偉そうに王宮をふんぞり返って歩いてさ!
アンタなんて……、いなくなればよかった!
だから、ちょっと砂漠に迎えに行くのをわざと遅らせたんだ。そのほうが有り難みが出るって、心配するナセル殿下を説き伏せて。
そしたら……、アンタは消えてた。護衛騎士のセファーと一緒に!!」
ーーそういうことだったのか……。
ナセルははじめから俺を捨てるつもりではなかったのか……。
「でも知らなかったよ!アンタがセファーまでたらしこんでたなんて!
僕としたら大誤算だったよ!
おかげで今は、大罪人で処刑を待つ身だ。
神子様を連れ帰れなかったら、八つ裂きの刑にするって王様に言われたよ!
そして、ナセル殿下は原因不明の病で、死にかけてる!
大魔道士様は呪いだって言ってたけど、僕に言わせれば全部、アンタのせいだ!!」
「なんだって!? ナセルがっ……」
ロロから告げられた事実に、俺は強い衝撃を受けていた。
「お前はっ、まだそんな口を聞けるのか!」
師団長はロロの首根っこを掴むと、強い力で砂の上に引き倒した。
「……っ、アンタなんて、大っきらいだ!!」
砂まみれになった顔で、ロロが俺を炎のような目で睨む。
「神子様を砂漠へ置き去りにしたとき、護衛騎士たちには何も告げられてはいなかったが、
誰も本当に神子様を砂漠に捨てたとは信じていなかった。ナセル殿下が神子様に執着していたことは、王宮の護衛騎士なら誰でも知っていたからだ。
神子様の気を引くためのナセル殿下の一芝居であるということは、騎士たちの間でも暗黙の了解だった。
だが……、その時セファーはその状況を利用し、何も知らない神子様を王宮から連れ出すことを思いついた。
王宮へ自分の乗っていた馬だけ帰して目くらましをして、そのすきに神子様とともに、自分の故郷へ向かった。
……そういうことで、間違いはないな」
師団長がセファーに確認する。
「俺は神子を、サンドロオリヴェから救いたかった……。それだけだ!」
セファーが大きく息を吸い込んだ。
構えられた長剣からは、すでに火花が散っている。
「セファーっ!」
「俺はここで、捕らえられるわけにはいかない!
俺が神子を守る! 神子を王宮に戻すわけにはいかない!
俺が神子を連れていく、もう誰にも搾取されることのない安全な場所へ!」
突然のロロの告白に、俺は戸惑っていた。
そんな俺に、ロロは唇を歪めた。
「そうだよ。知らなかったでしょ。僕はね、この世界に来て、初めて会ったときから、セファーに夢中だったんだ!
セファーは、この世界に飛ばされて右も左もわからなかった僕を、あの村まで迎えに来てくれた! セファーは僕の救世主だったんだ。
僕は一目で恋に落ちたよ! 全然僕になびいてくれないところも、たまらなく素敵だった。
だから、僕はナセル殿下に言ったんだ。
ーー殿下が神子様を手に入れたら、神子様の護衛騎士のセファーを僕に頂戴って!
もちろん、殿下は快諾してくれたよ。そして、神子様にいつも使ってる薬も僕にくれたんだ。
これを使って寝台に押し倒せば、いくらその気のないセファーでもひとたまりもないだろうって!
既成事実さえ作ってしまえば、セファーは真面目を絵に描いたような男だから、僕への責任を取ってくれるだろうって。
それなのに……っ」
ギリ、とロロは歯ぎしりした。
「それなのに、神子様!
アンタは、セファーまで独り占めした!
本当なら、僕がセファーの故郷に連れて行ってもらうはずだったのに!
なんなんだよ、アンタはっ!
僕とアンタで、なにが違うっていうんだよ! 僕のほうが若くて、見た目もいい!
王宮に召喚された神子様がそんなに偉いのかよっ!
アンタなんて、アンタなんて……、あのまま砂漠で干からびて死んじゃえばよかったんだ!」
「コイツっ!」
「やめてくださいっ!」
ロロの襟首を掴んで締め上げようとする師団長を、俺は止めた。
「ロロ、じゃあ、君の考えだったのか?
俺を、ナセルが砂漠に捨てたのは……」
「ははっ、そうだよ!
神子様は衣食住に恵まれすぎてるから、ちょっと調子に乗ってるんだって、殿下に教えてあげたんだ。
一度、砂漠の真ん中に放り出して、自分の無力さに気づけば、きっと泣いて殿下にすがってくるだろうって!
どれだけ殿下が大切だったかってことに気づけば、きっと自分から脚を開いてくるだろうって!」
「貴様っ! 神子を冒涜するな!」
セファーが再び長剣を抜いた。
ロロは鼻で笑う。
「だって、そうだろ? 神子様、アンタは本当に調子づいてた!
王様や大魔道士様にちやほやされて!
可愛そうなナセル殿下を無視して、神官長を従えて、偉そうに王宮をふんぞり返って歩いてさ!
アンタなんて……、いなくなればよかった!
だから、ちょっと砂漠に迎えに行くのをわざと遅らせたんだ。そのほうが有り難みが出るって、心配するナセル殿下を説き伏せて。
そしたら……、アンタは消えてた。護衛騎士のセファーと一緒に!!」
ーーそういうことだったのか……。
ナセルははじめから俺を捨てるつもりではなかったのか……。
「でも知らなかったよ!アンタがセファーまでたらしこんでたなんて!
僕としたら大誤算だったよ!
おかげで今は、大罪人で処刑を待つ身だ。
神子様を連れ帰れなかったら、八つ裂きの刑にするって王様に言われたよ!
そして、ナセル殿下は原因不明の病で、死にかけてる!
大魔道士様は呪いだって言ってたけど、僕に言わせれば全部、アンタのせいだ!!」
「なんだって!? ナセルがっ……」
ロロから告げられた事実に、俺は強い衝撃を受けていた。
「お前はっ、まだそんな口を聞けるのか!」
師団長はロロの首根っこを掴むと、強い力で砂の上に引き倒した。
「……っ、アンタなんて、大っきらいだ!!」
砂まみれになった顔で、ロロが俺を炎のような目で睨む。
「神子様を砂漠へ置き去りにしたとき、護衛騎士たちには何も告げられてはいなかったが、
誰も本当に神子様を砂漠に捨てたとは信じていなかった。ナセル殿下が神子様に執着していたことは、王宮の護衛騎士なら誰でも知っていたからだ。
神子様の気を引くためのナセル殿下の一芝居であるということは、騎士たちの間でも暗黙の了解だった。
だが……、その時セファーはその状況を利用し、何も知らない神子様を王宮から連れ出すことを思いついた。
王宮へ自分の乗っていた馬だけ帰して目くらましをして、そのすきに神子様とともに、自分の故郷へ向かった。
……そういうことで、間違いはないな」
師団長がセファーに確認する。
「俺は神子を、サンドロオリヴェから救いたかった……。それだけだ!」
セファーが大きく息を吸い込んだ。
構えられた長剣からは、すでに火花が散っている。
「セファーっ!」
「俺はここで、捕らえられるわけにはいかない!
俺が神子を守る! 神子を王宮に戻すわけにはいかない!
俺が神子を連れていく、もう誰にも搾取されることのない安全な場所へ!」
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