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第76話
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「セファー……」
セファーの言葉に、俺は愕然としていた。
ーーあの儀式のときに飲まされていた薬が、まさか毒薬だったとは……。
「サンドロオリヴェは、長い歴史の間、ずっと神子を食い物にしていた。
己の繁栄のためなら、己の欲望のためなら、神子自身がどうなろうとどうだっていいのだ。
いいなりにならない神子には毒薬を使い、自我をなくさせ、思い通りの人形にする。
そして神子が使い物にならなくなれば、新しい神子をまた召喚する。
そうやって、サンドロオリヴェは……」
セファーは唇を噛みしめる。
「なら、お前にいつも儀式の立番を命じていた私にも、責任の一旦があるのだろう……」
師団長は静かに言った。
「セファー、お前は他の護衛騎士と違い、儀式の立番のときでも、神子様に性的な関心を寄せることがなかった。
殿下と神子様の儀式を、扉の外で最初から最後まで聞き届けることで、他の護衛騎士たちは悪戯に神子を淫らな目で見るようになってしまっていた。
だから、神子様を性的な目でみていないお前を、ナセル殿下も私も信頼し、他の騎士ではなくお前に立番を命じることが多くなってしまった……。
でもそのせいで、お前をそんな衝動に走らせることになってしまったとは……」
「ほら、だから言っただろう! 僕は神子様の誘拐には関与していない!」
ロロが勝ち誇ったような顔で立ち上がる。
「だから、僕は悪くない! 処刑されるのは、セファー一人で十分だっ!」
「セファーを捕えろ!
歯向かうものがあれば、同様に捕えろ!」
「はっ!」
師団長の言葉に、俺たちを囲んでいた騎士たちが、一斉に臨戦体制に入る。
「待ってください!」
俺は大声で言った。
「俺は逃げません!
でも、何があったか知りたい!
だから、きちんと、最初から整理しましょう。それぞれが、どんな思惑で、どんな行動をしたのか。
そうすれば、事の全容が明らかになると思うんです!
本当のことを知るためにも、ロロにちゃんと話をさせてください!
誰が何の罪に問われるべきなのか……、それはすべてがわかってからにすべきです!」
「神子様……」
師団長が、馬の手綱を引いた。
「わかりました。私もここで無駄な血を流したくはありません。
セファー、お前も一旦剣をしまえ。女子供もいる。お前の仲間たちに手をかけたくない」
「……」
セファーも長剣を鞘に収めた。
「ロロ、説明して。
あの日、たしかに俺はナセルに砂漠に捨てられた。
あれは、いったいどういうことだったんだ?」
「簡単なことだよ」
ロロは砂のついた唇を、その手首で拭ってニヤリと笑った。
「ナセル殿下は、神子様……、アンタを愛してた。それも心の底からね!
でもアンタはそんな殿下に見向きもしなかった。七夜の儀式だって、いつもイヤイヤで、薬に頼らざるを得なかったんだって?
ナセル殿下の方はいっつもやる気満々で、最初の一回以降は薬は一度も飲んでなかったっていうのにね!
可愛そうなナセル殿下! まあ、殿下もあの性格だったから、神子様に素直に愛を乞うなんて、死んでもできなかっただろうけどね。
そこで、僕が一計を案じたってワケ!
ナセル殿下に僕がもちかけたんだ。神子様、アンタをナセル殿下の言いなりのいい子ちゃんにしてあげる代わりに、セファーを僕に頂戴って!」
セファーの言葉に、俺は愕然としていた。
ーーあの儀式のときに飲まされていた薬が、まさか毒薬だったとは……。
「サンドロオリヴェは、長い歴史の間、ずっと神子を食い物にしていた。
己の繁栄のためなら、己の欲望のためなら、神子自身がどうなろうとどうだっていいのだ。
いいなりにならない神子には毒薬を使い、自我をなくさせ、思い通りの人形にする。
そして神子が使い物にならなくなれば、新しい神子をまた召喚する。
そうやって、サンドロオリヴェは……」
セファーは唇を噛みしめる。
「なら、お前にいつも儀式の立番を命じていた私にも、責任の一旦があるのだろう……」
師団長は静かに言った。
「セファー、お前は他の護衛騎士と違い、儀式の立番のときでも、神子様に性的な関心を寄せることがなかった。
殿下と神子様の儀式を、扉の外で最初から最後まで聞き届けることで、他の護衛騎士たちは悪戯に神子を淫らな目で見るようになってしまっていた。
だから、神子様を性的な目でみていないお前を、ナセル殿下も私も信頼し、他の騎士ではなくお前に立番を命じることが多くなってしまった……。
でもそのせいで、お前をそんな衝動に走らせることになってしまったとは……」
「ほら、だから言っただろう! 僕は神子様の誘拐には関与していない!」
ロロが勝ち誇ったような顔で立ち上がる。
「だから、僕は悪くない! 処刑されるのは、セファー一人で十分だっ!」
「セファーを捕えろ!
歯向かうものがあれば、同様に捕えろ!」
「はっ!」
師団長の言葉に、俺たちを囲んでいた騎士たちが、一斉に臨戦体制に入る。
「待ってください!」
俺は大声で言った。
「俺は逃げません!
でも、何があったか知りたい!
だから、きちんと、最初から整理しましょう。それぞれが、どんな思惑で、どんな行動をしたのか。
そうすれば、事の全容が明らかになると思うんです!
本当のことを知るためにも、ロロにちゃんと話をさせてください!
誰が何の罪に問われるべきなのか……、それはすべてがわかってからにすべきです!」
「神子様……」
師団長が、馬の手綱を引いた。
「わかりました。私もここで無駄な血を流したくはありません。
セファー、お前も一旦剣をしまえ。女子供もいる。お前の仲間たちに手をかけたくない」
「……」
セファーも長剣を鞘に収めた。
「ロロ、説明して。
あの日、たしかに俺はナセルに砂漠に捨てられた。
あれは、いったいどういうことだったんだ?」
「簡単なことだよ」
ロロは砂のついた唇を、その手首で拭ってニヤリと笑った。
「ナセル殿下は、神子様……、アンタを愛してた。それも心の底からね!
でもアンタはそんな殿下に見向きもしなかった。七夜の儀式だって、いつもイヤイヤで、薬に頼らざるを得なかったんだって?
ナセル殿下の方はいっつもやる気満々で、最初の一回以降は薬は一度も飲んでなかったっていうのにね!
可愛そうなナセル殿下! まあ、殿下もあの性格だったから、神子様に素直に愛を乞うなんて、死んでもできなかっただろうけどね。
そこで、僕が一計を案じたってワケ!
ナセル殿下に僕がもちかけたんだ。神子様、アンタをナセル殿下の言いなりのいい子ちゃんにしてあげる代わりに、セファーを僕に頂戴って!」
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