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第71話
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「共に生きていく、だと? セファー、お前……っ」
チャジルは立ち尽くしていた。
セファーはズボンだけ素早く身に着けると、俺のそばまで歩み寄り、後ろから俺の肩を抱いた。
「俺がこの人を一生守る! 誰にもこの人は渡さない!」
「セファー……」
セファーの強い口調に、チャジルは二の句がつげないようだった。
「あの、チャジルさん、セファーを責めないでください。
こうなったのは、実は俺に責任があって……、だから……」
俺が取りなすように、チャジルに言いかけると、
「ヨータは何も悪くない!」
セファーは俺の首筋に顔を埋める。
「セファー、お前……、変わったな……」
チャジルはぽつりと言った。
「とにかく、本当にセファーは悪くないんです、俺が!」
「神子様」
チャジルは俺に向き直った。
「経緯がどうであれ、セファーは部族の禁忌を破った。
この件は、とうてい私では判断できません。セファーの父である、部族の長に報告する必要があります。
ルドビに着いてから、今後のことを話し合いましょう。
セファー、お前はしばらくは神子様とは離れていろ! 代わりに俺が護衛につく」
「嫌だ!」
セファーは後ろから俺を抱き寄せる。
「セファー、お前っ!」
気色ばむチャジルを、俺が止めた。
「まあまあ、チャジルさん、落ち着いてくださいっ!
もしかしたら……、もしかしたらですけど、本当は何もなかったかもしれないんです!」
「「は??」」
セファーとチャジルが二人同時に声をあげる。
「俺、昨晩はひどく酔ってて……、だからセファーになにかちょっかいをかけたことまでは覚えてるんですけど、
決定的なことはなにも記憶になくて!
だから、きっと何もなかった、そう、何もなかったんです!
暑かったからお互い服を脱いで、そのまま寝ていただけで! ね、セファーっ」
「……」
セファーがじとっとした目で俺を睨んでくる。
「本当なのか、セファー」
チャジルが、セファーの反応を伺う。
「違う、昨晩、俺は……っ」
「わあー、わあー、わあーっ! とにかく、なにも、何もなかったんです!
当事者の俺が言うから、間違いないんです!
ね、そうだろ、セファー!」
俺は反論しようとするセファーの口を、慌てて後ろから塞ぐ。
「み、神子様のお話はわかりました。とにかく、この件は……、ルドビに帰ってからにしましょう!
もちろん、他言無用で!
セファー、すぐに経つから用意をしろ! お前は酔っぱらって町のはずれで寝ていたことにしとくから!」
チャジルは後ずさると、もうこれ以上は関わりたくない、と言わんばかりには部屋を出て行ってしまった。
「……はあ、びっくりした」
扉を閉めた俺は、大きなため息をついた。
「ヨータ……」
俺の後ろからは、地獄の底から響いてくるような暗い声。
振り返るのも怖いが、振り返るしかない……。
「せ、セファー、き、きのうは……」
「ヨータ、本当なのか……、なにも覚えていない、というのは……」
セファーは、これ以上なく恨みがましい顔をしている!
だが俺はその時、大人特有の、なんともいやらしい解決方法をとることを選択してしまった。
「う、うん、そうなんだ。昨日はめちゃくちゃ酔ってたから、全然、何も……。
だからさ、昨日は俺たちの間にはなにもなかった、そういうことにしておこうよ、ね、セファー?」
俺と寝たことで、部族の禁忌を破ったとまで言われていたセファー。
でも俺とセファーが何もなかったと言い張れば、それ以上はセファーの父であろうと追及できないだろう。
この世界にはウソ発見器もなければ、DNA検査もないのだから!
何もなかったことにすれば、万事解決!
いわゆる大人の対応ってやつで乗り切れば、セファーもルドビに堂々と帰ることができるし、ファティマともきっと……。
「わかった」
セファーは低く言うと、俺に近づいてきた。
そして、俺をそのままひょいと肩に担ぐと、ものの数歩で寝台まで移動して……、
「セ、セファーっ、何を……っ」
どさりと寝台に落とされた俺がセファーを見上げると、その青い瞳は怒りの炎で燃えさかっていた。
「忘れたというなら、もう一度思い出させてやる!
ここで昨晩、何があったのか!」
チャジルは立ち尽くしていた。
セファーはズボンだけ素早く身に着けると、俺のそばまで歩み寄り、後ろから俺の肩を抱いた。
「俺がこの人を一生守る! 誰にもこの人は渡さない!」
「セファー……」
セファーの強い口調に、チャジルは二の句がつげないようだった。
「あの、チャジルさん、セファーを責めないでください。
こうなったのは、実は俺に責任があって……、だから……」
俺が取りなすように、チャジルに言いかけると、
「ヨータは何も悪くない!」
セファーは俺の首筋に顔を埋める。
「セファー、お前……、変わったな……」
チャジルはぽつりと言った。
「とにかく、本当にセファーは悪くないんです、俺が!」
「神子様」
チャジルは俺に向き直った。
「経緯がどうであれ、セファーは部族の禁忌を破った。
この件は、とうてい私では判断できません。セファーの父である、部族の長に報告する必要があります。
ルドビに着いてから、今後のことを話し合いましょう。
セファー、お前はしばらくは神子様とは離れていろ! 代わりに俺が護衛につく」
「嫌だ!」
セファーは後ろから俺を抱き寄せる。
「セファー、お前っ!」
気色ばむチャジルを、俺が止めた。
「まあまあ、チャジルさん、落ち着いてくださいっ!
もしかしたら……、もしかしたらですけど、本当は何もなかったかもしれないんです!」
「「は??」」
セファーとチャジルが二人同時に声をあげる。
「俺、昨晩はひどく酔ってて……、だからセファーになにかちょっかいをかけたことまでは覚えてるんですけど、
決定的なことはなにも記憶になくて!
だから、きっと何もなかった、そう、何もなかったんです!
暑かったからお互い服を脱いで、そのまま寝ていただけで! ね、セファーっ」
「……」
セファーがじとっとした目で俺を睨んでくる。
「本当なのか、セファー」
チャジルが、セファーの反応を伺う。
「違う、昨晩、俺は……っ」
「わあー、わあー、わあーっ! とにかく、なにも、何もなかったんです!
当事者の俺が言うから、間違いないんです!
ね、そうだろ、セファー!」
俺は反論しようとするセファーの口を、慌てて後ろから塞ぐ。
「み、神子様のお話はわかりました。とにかく、この件は……、ルドビに帰ってからにしましょう!
もちろん、他言無用で!
セファー、すぐに経つから用意をしろ! お前は酔っぱらって町のはずれで寝ていたことにしとくから!」
チャジルは後ずさると、もうこれ以上は関わりたくない、と言わんばかりには部屋を出て行ってしまった。
「……はあ、びっくりした」
扉を閉めた俺は、大きなため息をついた。
「ヨータ……」
俺の後ろからは、地獄の底から響いてくるような暗い声。
振り返るのも怖いが、振り返るしかない……。
「せ、セファー、き、きのうは……」
「ヨータ、本当なのか……、なにも覚えていない、というのは……」
セファーは、これ以上なく恨みがましい顔をしている!
だが俺はその時、大人特有の、なんともいやらしい解決方法をとることを選択してしまった。
「う、うん、そうなんだ。昨日はめちゃくちゃ酔ってたから、全然、何も……。
だからさ、昨日は俺たちの間にはなにもなかった、そういうことにしておこうよ、ね、セファー?」
俺と寝たことで、部族の禁忌を破ったとまで言われていたセファー。
でも俺とセファーが何もなかったと言い張れば、それ以上はセファーの父であろうと追及できないだろう。
この世界にはウソ発見器もなければ、DNA検査もないのだから!
何もなかったことにすれば、万事解決!
いわゆる大人の対応ってやつで乗り切れば、セファーもルドビに堂々と帰ることができるし、ファティマともきっと……。
「わかった」
セファーは低く言うと、俺に近づいてきた。
そして、俺をそのままひょいと肩に担ぐと、ものの数歩で寝台まで移動して……、
「セ、セファーっ、何を……っ」
どさりと寝台に落とされた俺がセファーを見上げると、その青い瞳は怒りの炎で燃えさかっていた。
「忘れたというなら、もう一度思い出させてやる!
ここで昨晩、何があったのか!」
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