上 下
61 / 97

第61話

しおりを挟む
「いやー、若いっていいね! お兄さんたち、朝からほんと、元気いっぱいだねー。
でもよ、もうちょっと、声は押さえ気味にしてくれると、助かるんだよな。
ほら、うちのキャラバン、年頃の娘たちもいたりするからさあー」

 福々しい笑みで、メフメドに指摘された俺は凍りついた。


 昨日は誤解されているとセファーに訴えた俺だったが……、うん、たしかにメフメドは正しかった。

 俺たちは、恥ずかしげもなく夜も朝も、テントの中でくんずほぐれつ……。


「すまない、俺もそんなつもりはなかったのだが、この人に朝から可愛くねだられてしまったので、つい……」

 悪びれた様子もなく、さらりとすごいことをメフメドに説明するセファーに俺は目をむいた。



 ハアー、ハアーっ、ハアーッ!!??

 何言っちゃってんの、セファー!!??


「ちょ、ちょっと待って! 俺はねだってなんか……」


「ああ、そりゃ、しょーがねーな! 兄さん、そんなん拒んだら男がすたるってもんよ!」

 わかるわかる、とメフメドは頷く。


「いつになく積極的だったので、俺も我を忘れてしまい……」

「いいってことよ! 今夜から、テントの距離、少しあけて立てておくわー!
気兼ねなく、仲良くしてくれよなっ!」

「恩に着る」


 いや、恩に着ないで!

 どうして、こう激しく誤解を招くようなことをっ!! っていうか、厳密に言えば、誤解ではないんだけどっ!!


「セファー、恥ずかしいからもうやめてっ!」

 俺はセファーの腕を引っ張る。


「何がだ?」

 セファーはキョトンとした顔をする。


「あのねっ、ああいうことは、オープンにはしないんだよ、普通っ!」


「ああ……、そうだな」


 セファーはくすっと笑うと、俺の耳をさらりと撫でた。

「たしかに、あんなに可愛い神子の声を、ほかの誰かに聞かせるわけにはいかない」


「……っ! そういうことじゃなくって!!」


 くそっ、笑顔までぐぅ可愛いとか!!!!


「神子、今朝の神子は素晴らしかった」

「!!!!」


 耳元で囁かれた俺!


 ーーもう俺、完全に、セファーに翻弄されてる!!!!




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 そんなこんなで、ヘルビナまでのキャラバンの旅は、昼は大変快適なラクダの上、夜はテントの中でセファーとなし崩し的に気持ちいいことをする、という毎日になってしまった。

 俺だって、毎晩セファーとこんなことをするのには抵抗があったのだが、セファーと一緒の毛布にくるまると、必然的にお互いの身体は反応し、そうするとセファーが俺の身体をなだめると言って俺を触り始めて、俺も最初はちょっとばかり抵抗するんだけど、そのままセファーにキスされたら、俺も我慢できなくなって……、の繰り返し!!


「はあ……」

 ラクダに揺られ、ため息をついたところで、前方に大きな白い都市が見えてきた。


「着いたぞ、ヘルビナの町だ!」

 前方のラクダに乗ったメフメドが、笑顔で俺たちを振り返る。


 コストーを出発して5日目。

 たどり着いたヘルビナは、商業で栄えるオアシス都市だった。


「ここで、神子がルドビで暮らすためのものを揃えていく」

 コストーでひと稼ぎして、懐が温かいセファーは、俺が生活に困らないようにヘルビナの町で身の回りのものを揃えてくれるという。


「高級品はやめてね! 普通でいいんだよ、普通で!」

「神子にみすぼらしい格好など、させられない」

 聞く耳をもたないセファーは、メフメドたちと別れると、さっそく高級そうな衣料品店へ入っていく。



「この店で一番良い仕立ての良い服を!」

 俺の希望を全く無視した注文をするセファー。


「セファー、あのね、俺、さっき言っただろう? 服は……」



「えっ!? セファーっ!? 本当にセファーなのっ!? なんでこんなところにっ!?」


 高い声に振り返ると、褐色の肌に亜麻色の髪のとんでもない美女が、驚いた顔でこちらを見ていた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

奴の執着から逃れられない件について

B介
BL
幼稚園から中学まで、ずっと同じクラスだった幼馴染。 しかし、全く仲良くなかったし、あまり話したこともない。 なのに、高校まで一緒!?まあ、今回はクラスが違うから、内心ホッとしていたら、放課後まさかの呼び出され..., 途中からTLになるので、どちらに設定にしようか迷いました。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

やめて抱っこしないで!過保護なメンズに囲まれる!?〜異世界転生した俺は死にそうな最弱プリンスだけど最強冒険者〜

ゆきぶた
BL
異世界転生したからハーレムだ!と、思ったら男のハーレムが出来上がるBLです。主人公総受ですがエロなしのギャグ寄りです。 短編用に登場人物紹介を追加します。 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎ あらすじ 前世を思い出した第5王子のイルレイン(通称イル)はある日、謎の呪いで倒れてしまう。 20歳までに死ぬと言われたイルは禁呪に手を出し、呪いを解く素材を集めるため、セイと名乗り冒険者になる。 そして気がつけば、最強の冒険者の一人になっていた。 普段は病弱ながらも執事(スライム)に甘やかされ、冒険者として仲間達に甘やかされ、たまに兄達にも甘やかされる。 そして思ったハーレムとは違うハーレムを作りつつも、最強冒険者なのにいつも抱っこされてしまうイルは、自分の呪いを解くことが出来るのか?? ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎ お相手は人外(人型スライム)、冒険者(鍛冶屋)、錬金術師、兄王子達など。なにより皆、過保護です。 前半はギャグ多め、後半は恋愛思考が始まりラストはシリアスになります。 文章能力が低いので読みにくかったらすみません。 ※一瞬でもhotランキング10位まで行けたのは皆様のおかげでございます。お気に入り1000嬉しいです。ありがとうございました! 本編は完結しましたが、暫く不定期ですがオマケを更新します!

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?

クズ王子、弟にざまあされる

相沢京
BL
「貴様を追放するっ!」 弟である第三王子の祝いの会でそう叫んだのは第一王子でクズ王子と言われているダグラスだった。 「え、誰を・・?」 「決まっておろう。カイン、貴様だっ!」 断罪から始まった事件が、この後、思いもよらない陰謀へと発展していく。 ***************************** BL要素が少なめですが、楽しんで頂ければ嬉しいです。 誤字脱字の報告、ありがとうございます。 短編のつもりですが、今後もしかしたら長編となるかもしれません。

処理中です...