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第58話

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「神子……」

 セファーが俺の首筋に唇を寄せる。


「ちょ、ちょっと、ちょっと待って、セファー!」

 俺は両手をセファーの胸に突っ張って、させまいとした。


「どうした?」


「あ、あのさっ、こういうのって、良くないと思うんだ。その……、この間あんなことしちゃった俺が、こんな事言うのはアレなんだけど……」

 俺の言葉に、セファーは怪訝な顔になる。


「良くない? ……神子はあの時言った。これは神子を穢す行為ではない、助ける行為だと……」

「!!」


 ーー言った! 言った! 俺、たしかにあの時言った!

 媚薬でトロトロにされて、セファーにどうしても俺の身体を触ってほしくて、苦し紛れの言い訳として……!


 でもまさか、今その話を蒸し返されるとは……!



「俺は、神子を助ける。神子を助けるのが、俺の使命だ!」

 青い瞳の奥が、キラリと光る。


 いや、そんなことに、使命感を覚えてもらわなくても!!


 こんなんじゃ、俺ってば、まるで……。



「神子、俺に任せて欲しい。神子は何もしなくてもいい……」


「んあっ、ああっ!!」

 問答無用で、ズボンと下穿きを同時に下げられ、俺自身を握り込まれた。


「神子は約束した! 俺だけに、この身体を委ねてくれると……」

「え、あっ……?」


 ーーそんなこと、約束したっけ……?



  だが、その約束を思い出そうとしても、俺を追い詰めるセファーの指に、思考を中断されてしまった。


「神子は、一度した約束を、破るのか……?」


 咎めるような響きに、俺はセファーをまじまじと見つめる。

 セファーは真剣な表情で、俺を見返してくる。


 ーーそうか、セファーは騎士として、俺との約束と、責任感からこのような行動に出ているのだ。



「ううん、約束は破らない。でも、こんなの、やっぱり……っ、ああっ」

 握り込まれて、上下にこすられると、嫌でも身体は反応する。


「なら、俺に任せてほしい。
それとも……、もしかして、神子は、俺以外の誰かに、その身を委ねたいというのか……」


 セファーの顔。

 一見、無表情に見えるが、俺にはわかる!


 俺の答えいかんによっては、めちゃくちゃ怒っちゃうやつだ!!



「あのね、セファー、んっ……」


 うまくはぐらかそうとするが、これ以上の話し合いは無意味だとばかりに、セファーに唇を塞がれる。


 セファーの口づけは、俺を酩酊させるには十分すぎるほど、甘く……。



 ーーだから、俺は、これ以上なく、ずるい賭けに出た。





「……じゃあ、セファーも、脱いで」

 俺はセファーの背中に、両手を回した。



「……」


「俺だけが、気持ち良くなるのは、嫌だ。
俺も、セファーを気持ちよくしたい。
セファーと裸で、抱き合いたい……。そうしてくれるなら、いいよ……」



 
 


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