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第56話

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 コストーの町で、水、食料、装備、そして移動のためのラクダなどすべてを買いそろえた俺たち。

 バルロが紹介してくれたキャラバンの隊長は、メフメドという、いかにも商人然とした恰幅のいい中年の男だった。


「バルロから聞いてるよ! お宅らには特別に二人用のテントを用意してるから、夜も気兼ねなくすごしてもらえるよ。どうか安心してくれ!
でもまあ、隣のテントに聞こえないように、声はできれば控えめにしてもらえると助かるけどなっ!」


「!!!!」

 満面の笑みでそう言われた俺は、言葉を失った。



 ――いったいバルロから何をどう聞いているのか!?



「気を遣わせて悪いな」

 だがセファーはまったく顔色を変えることなく、メフメドに礼を言うのだった。



「ねえ、セファー、なんか俺たち、誤解されてない?」

 俺はセファーの袖を引いて小声で囁いた。


「何をだ? テントは二人の方が都合がいい」

「それは……っ、そうなんだけど……!」


「砂漠の夜は冷えるから、俺が神子を抱いて眠る」

 大真面目なセファーの顔。


「……っ!!!!」


 だーかーらっ、そういうところなんだってば!!!!




 セファーが、メフメドのキャラバンの目的地であるヘルビナまでの護衛を買って出たため、俺たちは前回のように、キャラバン参加のためにメフメドに多額の金額を支払うことはなかった。

 それどころか、護衛のお礼だといって、食事は毎回メフメドのキャラバンから提供してくれることになった。


 ーーどうやら、今回の砂漠の旅は、そこそこ快適なものになりそうだった。

 そして今回の俺は、きちんと砂漠の気候にも対応できる恰好で、セファーとおそろいのクリーム色のマントも装備している。靴だって、もうサンダルなんかじゃない! ブーツだ!

 前回はラクダにもおっかなびっくり乗っていたが、さすがに2回目ともなれば、慣れたものである。

 すっかりキャラバン隊にとけこんでいる自分に、俺は満足していた。



 そして、メフメドはその体型からもわかるようにかなりの美食家らしく、キャラバンでの移動中とは思えないほどのご馳走を俺たちに出してくれた。

 生きるか死ぬかの瀬戸際だった前回の砂漠越えとは、何もかも大違いだ。


 そして、ルドビに出発して、一日目の夜が更けた……。




 メフメドの言葉通り、二人っきりのテントを用意された俺とセファー。

「!!!!」


 なぜか中に用意されていたのは、大きめの毛布が一枚きりで……。



 ――これは、俺とセファーがくっついて寝ること前提っ!?



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