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第55話
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セファーの力強い言葉に、なぜかキュンとときめいてしまう俺……。
やばい、セファーは純粋に俺を神子として守ってくれているだけなのに、俺が自分の邪な想いを自覚してしまった分、恥ずかしさが半端ない!
「それにしても、あの闇ギルトのヤバい案件は、やっぱりセファーが担当してたんだな。しっかし、魔獣の毒にやられたくらいですんで、良かったと思うよ。下手すりゃ今頃、アンタはここにはいないぜ」
バルロがあきれたようにセファーを見る。
セファーが闇ギルドで請け負った案件とは、この国の権力者である有力貴族が長年行ってきた魔獣の裏取引を阻止するというものだった。この案件は、すでに内偵は済んでいたらしいのだが、実行に移すためには、魔獣を一度に何体も倒せるだけの相当の実力者が必要だったため、セファーが闇ギルドに現れるまでペンディングとなっていたそうだ。
そして、見事、セファーはこの任務を遂行し、悪事はすべて暴かれ、魔獣の裏取引をして国禁を犯していた権力者はお縄となった。
この案件の成功報酬は、破格の金貨20枚!
また、その他の案件でのセファーの活躍により、闇ギルドから受け取った報酬はプラス金貨2枚。
闇ギルドで金貨22枚を受け取ったセファーと俺は、その足でバルロの店の出張所に向かったというわけだ。
「危険なことはわかっていたが、短期間で金を稼ぐにはあの案件しかなかった。
しかし、それでかえって神子に迷惑をかけてしまったことは痛恨の極みだ……」
ギリ、と奥歯を噛み締めてバルロを睨むセファー。
――やばい、またあの時のことを思い出している顔だ!
「と、とにかく! 結果オーライだよ。これで、ルドビに出発できることになったんだから!
ね、セファー?」
俺がセファーの腕をつかむと、セファーは俺を責めるような目で見た。
「俺はもう絶対に、神子をあんな目には遭わせない!」
「セファー、大丈夫だよ。俺ももう、あんな無茶はしないって……」
「神子はわかっていない! 俺がどれほどあの時……」
「はーい、わかったわかった! 頼むから、痴話げんかはよそでやってくれ。
で、はいっ、これが先生の報酬ね。銀貨50枚!
なっ、悪くない小遣い稼ぎになっただろ?」
バルロは目の前のテーブルにドンっと、重そうな麻袋を置いた。
「今までいろいろとありがとう、バルロさん」
俺はその銀貨の入った麻袋を受け取った。
バルロに金貨20枚を支払っても、まだ俺たちの手元には金貨2枚と、銀貨50枚が残っている。
――ルドビまでの旅の装備を整えるには、十分すぎる額だ。
「先生、もう、すぐにでも経つの?」
名残惜しそうな顔で、ボルカが聞いてきた。
「うん、なんだか俺たち、お尋ね者みたいになってるみたいだし、一刻も早くこの町を出た方がいいかなって」
――一体何がどうなっているのかはわからないが、ナセルはポイ捨てした俺を、今あちこち探し回っているらしい。
「……」
セファーはムッとした表情で、俺の隣で押し黙っている。
「コストーの周りで、サンドロオリヴェの騎士を見たって話を聞いたから、二人でこの町を出るのは危険だ。
俺の知り合いの商人が、ちょうどヘルビナに出発するところだから、そのキャラバンに紛れてしばらく一緒に行動したほうがいい。
途中までは同じ道のりだしな!」
「わかった。何から何までありがとう」
俺は頷く。
ーーいずれにせよ、俺はもうナセルの元へ戻るつもりはない。
「助かる。恩に着る」
セファーも今度は素直にバルロに礼を言った。
「いいってことよ。無事にルドビまでたどり着けることを祈ってるぜ!
またな、神子様、たまにはほかの男を試したくなったら、俺を呼んでくれよな! アレの続きをしよーぜ!」
にかっと白い歯を見せたバルロだったが……、
「やはり、殺す!」
瞬時に背後にまわられたセファーに羽交い絞めにされてしまった。
「ぐはっ、じょ、冗談だよっ、冗談っ!!」
顏が青紫に変色しながらも、バルロはまだへらへらしている。
「今のは全然冗談に聞こえなかった! 兄貴っ、まだあきらめてなかったのっ!?」
ボルカも牙をむく。
「わあああっ、冗談だよ! そんなの絶対冗談だからっ、セファー、バルロさんを離してあげて!」
俺は慌ててバルロに駆け寄るが、セファーはますますその腕に力を込める。
「んぐぇっ……!」
「やっちゃえセファー! 兄貴みたいな救いのないタラシは、一度痛い目みないと反省なんかしないんだから!」
兄を助ける気などさらさらないボルカが、はやし立てる。
「ぐえええええっ、た、たすけて、神子様ぁっ……!!」
「セファー、やめてっ! ほんとに、ほんとに死んじゃうからっ!!」
結局、俺がなんとかセファーをバルロから引き離したころには、バルロはかなりぐったりしてしまっていた……。
やばい、セファーは純粋に俺を神子として守ってくれているだけなのに、俺が自分の邪な想いを自覚してしまった分、恥ずかしさが半端ない!
「それにしても、あの闇ギルトのヤバい案件は、やっぱりセファーが担当してたんだな。しっかし、魔獣の毒にやられたくらいですんで、良かったと思うよ。下手すりゃ今頃、アンタはここにはいないぜ」
バルロがあきれたようにセファーを見る。
セファーが闇ギルドで請け負った案件とは、この国の権力者である有力貴族が長年行ってきた魔獣の裏取引を阻止するというものだった。この案件は、すでに内偵は済んでいたらしいのだが、実行に移すためには、魔獣を一度に何体も倒せるだけの相当の実力者が必要だったため、セファーが闇ギルドに現れるまでペンディングとなっていたそうだ。
そして、見事、セファーはこの任務を遂行し、悪事はすべて暴かれ、魔獣の裏取引をして国禁を犯していた権力者はお縄となった。
この案件の成功報酬は、破格の金貨20枚!
また、その他の案件でのセファーの活躍により、闇ギルドから受け取った報酬はプラス金貨2枚。
闇ギルドで金貨22枚を受け取ったセファーと俺は、その足でバルロの店の出張所に向かったというわけだ。
「危険なことはわかっていたが、短期間で金を稼ぐにはあの案件しかなかった。
しかし、それでかえって神子に迷惑をかけてしまったことは痛恨の極みだ……」
ギリ、と奥歯を噛み締めてバルロを睨むセファー。
――やばい、またあの時のことを思い出している顔だ!
「と、とにかく! 結果オーライだよ。これで、ルドビに出発できることになったんだから!
ね、セファー?」
俺がセファーの腕をつかむと、セファーは俺を責めるような目で見た。
「俺はもう絶対に、神子をあんな目には遭わせない!」
「セファー、大丈夫だよ。俺ももう、あんな無茶はしないって……」
「神子はわかっていない! 俺がどれほどあの時……」
「はーい、わかったわかった! 頼むから、痴話げんかはよそでやってくれ。
で、はいっ、これが先生の報酬ね。銀貨50枚!
なっ、悪くない小遣い稼ぎになっただろ?」
バルロは目の前のテーブルにドンっと、重そうな麻袋を置いた。
「今までいろいろとありがとう、バルロさん」
俺はその銀貨の入った麻袋を受け取った。
バルロに金貨20枚を支払っても、まだ俺たちの手元には金貨2枚と、銀貨50枚が残っている。
――ルドビまでの旅の装備を整えるには、十分すぎる額だ。
「先生、もう、すぐにでも経つの?」
名残惜しそうな顔で、ボルカが聞いてきた。
「うん、なんだか俺たち、お尋ね者みたいになってるみたいだし、一刻も早くこの町を出た方がいいかなって」
――一体何がどうなっているのかはわからないが、ナセルはポイ捨てした俺を、今あちこち探し回っているらしい。
「……」
セファーはムッとした表情で、俺の隣で押し黙っている。
「コストーの周りで、サンドロオリヴェの騎士を見たって話を聞いたから、二人でこの町を出るのは危険だ。
俺の知り合いの商人が、ちょうどヘルビナに出発するところだから、そのキャラバンに紛れてしばらく一緒に行動したほうがいい。
途中までは同じ道のりだしな!」
「わかった。何から何までありがとう」
俺は頷く。
ーーいずれにせよ、俺はもうナセルの元へ戻るつもりはない。
「助かる。恩に着る」
セファーも今度は素直にバルロに礼を言った。
「いいってことよ。無事にルドビまでたどり着けることを祈ってるぜ!
またな、神子様、たまにはほかの男を試したくなったら、俺を呼んでくれよな! アレの続きをしよーぜ!」
にかっと白い歯を見せたバルロだったが……、
「やはり、殺す!」
瞬時に背後にまわられたセファーに羽交い絞めにされてしまった。
「ぐはっ、じょ、冗談だよっ、冗談っ!!」
顏が青紫に変色しながらも、バルロはまだへらへらしている。
「今のは全然冗談に聞こえなかった! 兄貴っ、まだあきらめてなかったのっ!?」
ボルカも牙をむく。
「わあああっ、冗談だよ! そんなの絶対冗談だからっ、セファー、バルロさんを離してあげて!」
俺は慌ててバルロに駆け寄るが、セファーはますますその腕に力を込める。
「んぐぇっ……!」
「やっちゃえセファー! 兄貴みたいな救いのないタラシは、一度痛い目みないと反省なんかしないんだから!」
兄を助ける気などさらさらないボルカが、はやし立てる。
「ぐえええええっ、た、たすけて、神子様ぁっ……!!」
「セファー、やめてっ! ほんとに、ほんとに死んじゃうからっ!!」
結局、俺がなんとかセファーをバルロから引き離したころには、バルロはかなりぐったりしてしまっていた……。
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