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第54話
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「18、19、20っと! よっしゃ、これで金貨20枚、確かにいただきましたっと!
ホイ、これ、預かってた腕輪! ちゃーんと綺麗に磨いておいたぜ!」
約束通り金貨20枚を受け取ったバルロは、ホクホクした表情で、セファーの前に青い宝石がはまったあの腕輪を置いた。
俺とセファーは、あのバルロの店の出張所だという、大きな白いテントを訪れていた。
「1枚の利息分は?」
腕輪を受け取ったセファーの問いに、
「ああ、アレね! うちの愚妹が、こちらの先生のご指導おかげでえらく賢くなったってわけで、こちらはその成功報酬として金貨1枚は引かせていただきました。ねっ、先生?」
バルロが俺にウィンクして寄越す。
「妹……、ご指導……?」
俺を振り返るセファー。
あっ、またセファーの雰囲気が怖くなってきてる!!
「へへっ、セファー、アタシね、内緒で先生に算術を教えてもらってたんだー!
先生のおかげでアタシ、ちゃんと計算、できるようになったんだよ!
セファーには振られちゃったけど、アタシ、そのうち大店の女主人になって、セファーみたいな騎士様と結婚するんだから、絶対!」
「……」
にこにこ顔のボルカに、さすがのセファーも毒気を抜かれたらしい。
「ボルカ、君ならきっとお兄さんを凌ぐ、一流の商人になれる! 頑張って!」
俺の言葉に、ボルカは頷くと、俺の手を取り何かを握らせた。
「これ、アタシと兄貴から!」
「へ?」
見ると、俺の手にあったのは、なんと金貨1枚!
「おいっ、こらっ、ボルカっ! 大事な金貨をなに気軽に渡してんだよ!」
バルロが、声を荒げる。
「兄貴っ、誰のおかげで命拾いしたか忘れたの!?
これは、先生とセファーへのお詫び!
あんなことしといて、まだなんか文句あるわけっ!?」
「いや……、特には……」
ボルカの迫力に、小さくなるバルロ。
あの連れ込み宿での一件以来、兄妹の力関係は大きく変わってしまったらしい。
この分では、ボルカが大店の女主人になる日も、きっとそう遠くないだろう。
「にしてもよ、あの宿屋の天井の修理代に、ボルカが持っていった超特級SSランクのポーションといい、
俺は大損害を被ったぜ……、ったく……」
バルロがぼやく。
「兄貴が適当に見繕って持っていけっていうからでしょ!
あの時、スケベ根性丸出しの兄貴が何考えてたかなんて、アタシにはお見通しだったんだからね!」
腰に両手を当てて威張るボルカ。
そう、あの時ボルカが機転を利かせて、解毒したセファーにありえないほど高級なポーションを与えて、超高速で回復させてくれたおかげで、俺はすんでのところで助かったのだった……。
「その件に関しては改めて礼を言う。ありがとう、ボルカ」
セファーの言葉に、ボルカはゆでダコみたいに真っ赤になった。
「いいんだってば! それより、先生、セファー、二人は幸せにならなきゃ、アタシが許さないんだからねっ!」
「神子は必ず俺が守る!」
「……!!」
「18、19、20っと! よっしゃ、これで金貨20枚、確かにいただきましたっと!
ホイ、これ、預かってた腕輪! ちゃーんと綺麗に磨いておいたぜ!」
約束通り金貨20枚を受け取ったバルロは、ホクホクした表情で、セファーの前に青い宝石がはまったあの腕輪を置いた。
俺とセファーは、あのバルロの店の出張所だという、大きな白いテントを訪れていた。
「1枚の利息分は?」
腕輪を受け取ったセファーの問いに、
「ああ、アレね! うちの愚妹が、こちらの先生のご指導おかげでえらく賢くなったってわけで、こちらはその成功報酬として金貨1枚は引かせていただきました。ねっ、先生?」
バルロが俺にウィンクして寄越す。
「妹……、ご指導……?」
俺を振り返るセファー。
あっ、またセファーの雰囲気が怖くなってきてる!!
「へへっ、セファー、アタシね、内緒で先生に算術を教えてもらってたんだー!
先生のおかげでアタシ、ちゃんと計算、できるようになったんだよ!
セファーには振られちゃったけど、アタシ、そのうち大店の女主人になって、セファーみたいな騎士様と結婚するんだから、絶対!」
「……」
にこにこ顔のボルカに、さすがのセファーも毒気を抜かれたらしい。
「ボルカ、君ならきっとお兄さんを凌ぐ、一流の商人になれる! 頑張って!」
俺の言葉に、ボルカは頷くと、俺の手を取り何かを握らせた。
「これ、アタシと兄貴から!」
「へ?」
見ると、俺の手にあったのは、なんと金貨1枚!
「おいっ、こらっ、ボルカっ! 大事な金貨をなに気軽に渡してんだよ!」
バルロが、声を荒げる。
「兄貴っ、誰のおかげで命拾いしたか忘れたの!?
これは、先生とセファーへのお詫び!
あんなことしといて、まだなんか文句あるわけっ!?」
「いや……、特には……」
ボルカの迫力に、小さくなるバルロ。
あの連れ込み宿での一件以来、兄妹の力関係は大きく変わってしまったらしい。
この分では、ボルカが大店の女主人になる日も、きっとそう遠くないだろう。
「にしてもよ、あの宿屋の天井の修理代に、ボルカが持っていった超特級SSランクのポーションといい、
俺は大損害を被ったぜ……、ったく……」
バルロがぼやく。
「兄貴が適当に見繕って持っていけっていうからでしょ!
あの時、スケベ根性丸出しの兄貴が何考えてたかなんて、アタシにはお見通しだったんだからね!」
腰に両手を当てて威張るボルカ。
そう、あの時ボルカが機転を利かせて、解毒したセファーにありえないほど高級なポーションを与えて、超高速で回復させてくれたおかげで、俺はすんでのところで助かったのだった……。
「その件に関しては改めて礼を言う。ありがとう、ボルカ」
セファーの言葉に、ボルカはゆでダコみたいに真っ赤になった。
「いいんだってば! それより、先生、セファー、二人は幸せにならなきゃ、アタシが許さないんだからねっ!」
「神子は必ず俺が守る!」
「……!!」
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