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第34話

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 ロロは、何の前触れもなく、王宮にいきなり現れた。

 自分は新しい神子であると主張するロロに、大魔導士のじいさんをはじめ、イケおじ王様、その他重鎮貴族の方たちは、若干胡散臭げ、かつ遠巻きにロロの様子を観察しているようだった。


 だが、第一王子のナセルだけは、違った。

「見てください。ロロのこの光り輝くような美しい姿!
やはり、神子にふさわしい容姿というのはあるとは思いませんか!?」

 俺へのあてつけも盛り込みながら、さっそく王様に進言するナセル。


 ナセルは一目見て、ロロを気に入ってしまったようだ。

 ナセルは可愛いロロを常に自分の隣に置いて、俺との祈りの巡行に出向く際も、これみよがしに俺の前でロロといちゃつくようになった。


 また、ロロは本当に不思議な力を持っているらしく、ロロが祈ると植えたばかりの種からあっという間に芽が出たり、まだつぼみだった王宮の中庭の薔薇が、ロロが訪れただけで満開になったりと「これぞ神子様!」的なエピソードにも事欠かなかった。

 そして一応「神子」かもしれないということで、王宮から放り出すわけにもいかなくなったロロは、その可愛らしい容姿とコミュニケーション能力の高さから、あれよあれよといううちに、王宮でも人気者となり、自分の居場所をしっかり確保していた。

 一方、もともと神子として目立った実績もなかったお地味な俺の存在は、ロロという新しい神子の出現により、すっかりかすんでしまった感があった……。



 といいつつも、俺の召喚に成功し、俺を無条件で「最推し」している大魔導士のじいさんや、「私は自分で見たものしか信じない」とのたまうイケおじ王様たちは、相変わらず俺を「神子」として変わらず扱ってくれた。

 だが……、ナセルの俺に対する態度は、もはや「塩対応」を通り越して、激辛スパイスなみに酷いものになってしまっていた。
 もう、同じ部屋の空気すら吸いたくない、というようなゴキブリ並みの嫌われように、さすがの俺もちょっとへこんだ。


 しかしナセルの気持ちも、俺には理解できた。

 ナセルとしても、せっかく新しい神子のロロが現れたというのに、いつまでたってもお古の俺があたりまえのように神子として居座っていることが、とてつもなく腹立たしかったのだろう。


 そして、お互いの憂鬱の種も、消えることはなかった……。



 それはもちろん『七夜の儀式』のこと……。




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