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第32話
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まだ頭はぼんやりしていたが、いろいろとほっとしたせいか、急にお腹がぐぅーっと鳴った俺。
セファーは、そんな俺に、ここコストーの名産だという南国フルーツを切ってくれた。
――これは、パパイヤのような、マンゴーのような……、つまりは……、
「美味しいっ!! すごく甘いっ!!」
「神子の口にあったなら、よかった」
くすりと笑うセファー。
「!!!!」
くっ、顔が、顔が……、良すぎる……!
いままで、なんだかんだ大変だったので、きちんと直視してこなかったが、こうやって改めて見ると、本当に実在しているのか疑うレベルの美形である。
そんなセファーと、俺は裸で抱き合って暖を取ったり、ぎゅっと抱きしめられて眠ったり、あまつさえ食事の世話まで……!!
ーーやばい、俺、このままだと天罰がくだるかも!?
「神子、明日から俺は闇ギルドに行く。神子は危険なのでなるべく外に出ないでほしい」
セファーの真剣な顔に、俺はごくりと果物を飲み干した。
「セファー、闇ギルドって、危ないところなんだろう?」
バルロによると通称「闇ギルド」とは、通常の「ギルド」では扱えないような危険な依頼を扱う、法が及ぶことのない闇の集団らしい。
もちろん、加入にはそれなりの腕前と実績が必要で、その任務には命の保証すらされない、とか……。
「大丈夫だ。きちんと依頼は選ぶ。人の道に外れるようなことは、決してしない」
「うん、それもそうだけど、俺はセファーの身体が心配で……、セファーが、怪我したりとか、痛い思いをするのは……」
俺の言葉に、セファーはふわりとほほ笑んだ。
「神子に心配してもらえるとは、光栄だ。
だが、心配は無用だ。自分がどの程度なのかは、知っている」
――おそらく、セファーは強い。それも規格外に!
セファーの部族は、見目麗しいだけではなく、特に男性は筋骨たくましく、狩猟民族の遺伝子を色濃く継いでいると聞く。
王宮にいた騎士たちは、皆一様に一流の剣の腕を持っていたが、その中でも王族たちを警護する「護衛騎士」は、とりわけ優れた者たちの集団だった。
その護衛騎士の中でも、セファーは「群を抜いて強い」とほかの騎士や貴族たちからも噂されていた……。
「セファー、それでも俺は心配なんだ」
「言っただろう? 神子がいる限り、俺はここに生きて戻ってくる」
セファーの敬虔さが、そうさせるのだろうか?
俺は改めて、名ばかりの神子だった自分自身が恥ずかしくなった。
「セファー、あのさ、俺、明日バルロさんに会いに行こうと思うんだ!」
「あの男にっ!? 絶対に駄目だっ!!」
間髪入れず、拒否感をあらわにするセファー。
「いや、あのね……、もしかしたら、俺も、なにか……、稼ぎ口を、紹介してもらえないかなって、思って……」
「稼ぎ口?」
「ほら、バルロさん、言ってただろう?
綺麗な男が好きな富豪がいるって!」
もちろん俺はセファーみたいな美形じゃないけど、ひょっとしたら俺みたいな平凡な容姿でも、どこかに需要があれば、すこしは金になるかもしれない……。
セファーのように、際立った才能がない俺は、自分の身を売って、少しでもセファーの力になれれば……。
そう思って俺は言ったのだが……。
「神子、それは、つまり……」
低い声で、セファーは俺に問う。
「そう、セファーも知ってただろ? 俺が、ナセルと『七夜の儀式』で何をしてたか。
だから俺、そういうことには、慣れてるし、もしそれがお金になれば……」
「ふざけるなっ!!!!」
セファーの大声に、俺は思わず身をすくませる。
「神子、アンタは、自分が何を言っているのか、わかっているのか?
アンタは、はした金を手にするために、自分の神聖な身体を、薄汚い男どもに捧げようというのかっ!?」
セファーは、そんな俺に、ここコストーの名産だという南国フルーツを切ってくれた。
――これは、パパイヤのような、マンゴーのような……、つまりは……、
「美味しいっ!! すごく甘いっ!!」
「神子の口にあったなら、よかった」
くすりと笑うセファー。
「!!!!」
くっ、顔が、顔が……、良すぎる……!
いままで、なんだかんだ大変だったので、きちんと直視してこなかったが、こうやって改めて見ると、本当に実在しているのか疑うレベルの美形である。
そんなセファーと、俺は裸で抱き合って暖を取ったり、ぎゅっと抱きしめられて眠ったり、あまつさえ食事の世話まで……!!
ーーやばい、俺、このままだと天罰がくだるかも!?
「神子、明日から俺は闇ギルドに行く。神子は危険なのでなるべく外に出ないでほしい」
セファーの真剣な顔に、俺はごくりと果物を飲み干した。
「セファー、闇ギルドって、危ないところなんだろう?」
バルロによると通称「闇ギルド」とは、通常の「ギルド」では扱えないような危険な依頼を扱う、法が及ぶことのない闇の集団らしい。
もちろん、加入にはそれなりの腕前と実績が必要で、その任務には命の保証すらされない、とか……。
「大丈夫だ。きちんと依頼は選ぶ。人の道に外れるようなことは、決してしない」
「うん、それもそうだけど、俺はセファーの身体が心配で……、セファーが、怪我したりとか、痛い思いをするのは……」
俺の言葉に、セファーはふわりとほほ笑んだ。
「神子に心配してもらえるとは、光栄だ。
だが、心配は無用だ。自分がどの程度なのかは、知っている」
――おそらく、セファーは強い。それも規格外に!
セファーの部族は、見目麗しいだけではなく、特に男性は筋骨たくましく、狩猟民族の遺伝子を色濃く継いでいると聞く。
王宮にいた騎士たちは、皆一様に一流の剣の腕を持っていたが、その中でも王族たちを警護する「護衛騎士」は、とりわけ優れた者たちの集団だった。
その護衛騎士の中でも、セファーは「群を抜いて強い」とほかの騎士や貴族たちからも噂されていた……。
「セファー、それでも俺は心配なんだ」
「言っただろう? 神子がいる限り、俺はここに生きて戻ってくる」
セファーの敬虔さが、そうさせるのだろうか?
俺は改めて、名ばかりの神子だった自分自身が恥ずかしくなった。
「セファー、あのさ、俺、明日バルロさんに会いに行こうと思うんだ!」
「あの男にっ!? 絶対に駄目だっ!!」
間髪入れず、拒否感をあらわにするセファー。
「いや、あのね……、もしかしたら、俺も、なにか……、稼ぎ口を、紹介してもらえないかなって、思って……」
「稼ぎ口?」
「ほら、バルロさん、言ってただろう?
綺麗な男が好きな富豪がいるって!」
もちろん俺はセファーみたいな美形じゃないけど、ひょっとしたら俺みたいな平凡な容姿でも、どこかに需要があれば、すこしは金になるかもしれない……。
セファーのように、際立った才能がない俺は、自分の身を売って、少しでもセファーの力になれれば……。
そう思って俺は言ったのだが……。
「神子、それは、つまり……」
低い声で、セファーは俺に問う。
「そう、セファーも知ってただろ? 俺が、ナセルと『七夜の儀式』で何をしてたか。
だから俺、そういうことには、慣れてるし、もしそれがお金になれば……」
「ふざけるなっ!!!!」
セファーの大声に、俺は思わず身をすくませる。
「神子、アンタは、自分が何を言っているのか、わかっているのか?
アンタは、はした金を手にするために、自分の神聖な身体を、薄汚い男どもに捧げようというのかっ!?」
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