30 / 97
第30話
しおりを挟む
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ちょっと眠るだけのつもりが、すっかり眠り込んでしまったらしい。
次に目を覚ますと、すでに時刻は深夜を回っていた。
「あれ……、セファー……?」
心配そうに俺の顔を覗き込むセファーと目が合う。
一瞬、ここがどこかわからなかった。
――ああ、そうだ。俺たちはコストーにたどり着いて、今は宿屋のベッドの上。
「神子……、大丈夫か? 熱があるようだ」
セファーが俺の額に手を置く。
そう言えば、身体が熱い。
セファーの大きな手が、ひんやりと心地よかった。
「ん……、そういえば、ちょっとふらふらする、かも……」
半身を起こした俺は、高熱を出したとき特有の、浮遊した感覚に襲われる。
セファーが慌てて俺の背を支えた。
セファーは俺が眠っているうちに、一通り身支度を整えたようだった。
湯浴みをしたのか、その逞しい身体からはいい香りがするし、すでにこざっぱりとした服装に着替えている。
下ろしていたプラチナブロンドの長い髪は後ろで一つに束ねており、一見したところ、この町の住人といっても誰も疑わないだろう。
「水を飲んで! それから冷たい水で、身体を拭いた方がいい!」
セファーは俺に水を渡すと、慌ただしく部屋の外へ出て行ってしまう。
しばらくすると、セファーは大きな木の桶を抱えて戻ってきた。
水の入った桶に、大き目の布を浸して、セファーはそれを固く絞った。
「俺が、神子の身体を清める!」
「……え!!??」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「神子、つらくないか?」
セファーが俺の背中を拭きながら聞いてくる。
「……うん、冷たくて気持ちいいよ。
あの、でも……、自分でも、できるから……、もう……」
押し問答の末、結局、セファーが俺の身体を綺麗に拭き清めてくれるということになった。
王宮では侍女のお姉さんたちにさんざんされてきたことだが、相手がセファーとなると、俺もこう、なんというか……!
「駄目だ。汗をかいたままだと、体調の回復が遅れる!
先に全身を、綺麗に拭かないと!」
「……全身、を……?」
拭いてもらったばかりの俺の背中に、冷や汗が浮かぶ。
いくら裸で抱き合った仲とはいえ、そこまでしてもらうのはいくら何でも!!!!
だが、背中を拭き終えたセファーは、当然のごとく、俺の白いズボンに手をかけた。
「ちょ、ちょっと待って、セファー、そこは、ほら、自分でっ!!」
「駄目だ! 神子は熱がある!!」
「!!!! あーっ、ちょ、ちょっと、待って! 脱がさないでっ! 駄目だからっ! ああっ、セファーっ!!!!」
――しかし、セファーは俺が何と言っても譲らず、俺は下穿き一枚の情けない恰好で、セファーに全身をふきふきされるという辱めを受ける結果となったのだった……。
ちょっと眠るだけのつもりが、すっかり眠り込んでしまったらしい。
次に目を覚ますと、すでに時刻は深夜を回っていた。
「あれ……、セファー……?」
心配そうに俺の顔を覗き込むセファーと目が合う。
一瞬、ここがどこかわからなかった。
――ああ、そうだ。俺たちはコストーにたどり着いて、今は宿屋のベッドの上。
「神子……、大丈夫か? 熱があるようだ」
セファーが俺の額に手を置く。
そう言えば、身体が熱い。
セファーの大きな手が、ひんやりと心地よかった。
「ん……、そういえば、ちょっとふらふらする、かも……」
半身を起こした俺は、高熱を出したとき特有の、浮遊した感覚に襲われる。
セファーが慌てて俺の背を支えた。
セファーは俺が眠っているうちに、一通り身支度を整えたようだった。
湯浴みをしたのか、その逞しい身体からはいい香りがするし、すでにこざっぱりとした服装に着替えている。
下ろしていたプラチナブロンドの長い髪は後ろで一つに束ねており、一見したところ、この町の住人といっても誰も疑わないだろう。
「水を飲んで! それから冷たい水で、身体を拭いた方がいい!」
セファーは俺に水を渡すと、慌ただしく部屋の外へ出て行ってしまう。
しばらくすると、セファーは大きな木の桶を抱えて戻ってきた。
水の入った桶に、大き目の布を浸して、セファーはそれを固く絞った。
「俺が、神子の身体を清める!」
「……え!!??」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「神子、つらくないか?」
セファーが俺の背中を拭きながら聞いてくる。
「……うん、冷たくて気持ちいいよ。
あの、でも……、自分でも、できるから……、もう……」
押し問答の末、結局、セファーが俺の身体を綺麗に拭き清めてくれるということになった。
王宮では侍女のお姉さんたちにさんざんされてきたことだが、相手がセファーとなると、俺もこう、なんというか……!
「駄目だ。汗をかいたままだと、体調の回復が遅れる!
先に全身を、綺麗に拭かないと!」
「……全身、を……?」
拭いてもらったばかりの俺の背中に、冷や汗が浮かぶ。
いくら裸で抱き合った仲とはいえ、そこまでしてもらうのはいくら何でも!!!!
だが、背中を拭き終えたセファーは、当然のごとく、俺の白いズボンに手をかけた。
「ちょ、ちょっと待って、セファー、そこは、ほら、自分でっ!!」
「駄目だ! 神子は熱がある!!」
「!!!! あーっ、ちょ、ちょっと、待って! 脱がさないでっ! 駄目だからっ! ああっ、セファーっ!!!!」
――しかし、セファーは俺が何と言っても譲らず、俺は下穿き一枚の情けない恰好で、セファーに全身をふきふきされるという辱めを受ける結果となったのだった……。
1,478
お気に入りに追加
2,101
あなたにおすすめの小説
奴の執着から逃れられない件について
B介
BL
幼稚園から中学まで、ずっと同じクラスだった幼馴染。
しかし、全く仲良くなかったし、あまり話したこともない。
なのに、高校まで一緒!?まあ、今回はクラスが違うから、内心ホッとしていたら、放課後まさかの呼び出され...,
途中からTLになるので、どちらに設定にしようか迷いました。
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪
やめて抱っこしないで!過保護なメンズに囲まれる!?〜異世界転生した俺は死にそうな最弱プリンスだけど最強冒険者〜
ゆきぶた
BL
異世界転生したからハーレムだ!と、思ったら男のハーレムが出来上がるBLです。主人公総受ですがエロなしのギャグ寄りです。
短編用に登場人物紹介を追加します。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
あらすじ
前世を思い出した第5王子のイルレイン(通称イル)はある日、謎の呪いで倒れてしまう。
20歳までに死ぬと言われたイルは禁呪に手を出し、呪いを解く素材を集めるため、セイと名乗り冒険者になる。
そして気がつけば、最強の冒険者の一人になっていた。
普段は病弱ながらも執事(スライム)に甘やかされ、冒険者として仲間達に甘やかされ、たまに兄達にも甘やかされる。
そして思ったハーレムとは違うハーレムを作りつつも、最強冒険者なのにいつも抱っこされてしまうイルは、自分の呪いを解くことが出来るのか??
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
お相手は人外(人型スライム)、冒険者(鍛冶屋)、錬金術師、兄王子達など。なにより皆、過保護です。
前半はギャグ多め、後半は恋愛思考が始まりラストはシリアスになります。
文章能力が低いので読みにくかったらすみません。
※一瞬でもhotランキング10位まで行けたのは皆様のおかげでございます。お気に入り1000嬉しいです。ありがとうございました!
本編は完結しましたが、暫く不定期ですがオマケを更新します!
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談? 本気? 二人の結末は?
美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる