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第30話

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 ちょっと眠るだけのつもりが、すっかり眠り込んでしまったらしい。

 次に目を覚ますと、すでに時刻は深夜を回っていた。


「あれ……、セファー……?」

 心配そうに俺の顔を覗き込むセファーと目が合う。
 
 一瞬、ここがどこかわからなかった。


 ――ああ、そうだ。俺たちはコストーにたどり着いて、今は宿屋のベッドの上。



「神子……、大丈夫か? 熱があるようだ」


 セファーが俺の額に手を置く。

 そう言えば、身体が熱い。


 セファーの大きな手が、ひんやりと心地よかった。


「ん……、そういえば、ちょっとふらふらする、かも……」


 半身を起こした俺は、高熱を出したとき特有の、浮遊した感覚に襲われる。

 セファーが慌てて俺の背を支えた。



 セファーは俺が眠っているうちに、一通り身支度を整えたようだった。

 湯浴みをしたのか、その逞しい身体からはいい香りがするし、すでにこざっぱりとした服装に着替えている。

 下ろしていたプラチナブロンドの長い髪は後ろで一つに束ねており、一見したところ、この町の住人といっても誰も疑わないだろう。



「水を飲んで! それから冷たい水で、身体を拭いた方がいい!」

 セファーは俺に水を渡すと、慌ただしく部屋の外へ出て行ってしまう。


 しばらくすると、セファーは大きな木の桶を抱えて戻ってきた。

 水の入った桶に、大き目の布を浸して、セファーはそれを固く絞った。


「俺が、神子の身体を清める!」


「……え!!??」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「神子、つらくないか?」

 セファーが俺の背中を拭きながら聞いてくる。



「……うん、冷たくて気持ちいいよ。
あの、でも……、自分でも、できるから……、もう……」


 押し問答の末、結局、セファーが俺の身体を綺麗に拭き清めてくれるということになった。

 王宮では侍女のお姉さんたちにさんざんされてきたことだが、相手がセファーとなると、俺もこう、なんというか……!



「駄目だ。汗をかいたままだと、体調の回復が遅れる!
先に全身を、綺麗に拭かないと!」


「……全身、を……?」

 拭いてもらったばかりの俺の背中に、冷や汗が浮かぶ。


 いくら裸で抱き合った仲とはいえ、そこまでしてもらうのはいくら何でも!!!!

 だが、背中を拭き終えたセファーは、当然のごとく、俺の白いズボンに手をかけた。



「ちょ、ちょっと待って、セファー、そこは、ほら、自分でっ!!」

「駄目だ! 神子は熱がある!!」



「!!!! あーっ、ちょ、ちょっと、待って! 脱がさないでっ! 駄目だからっ! ああっ、セファーっ!!!!」




 ――しかし、セファーは俺が何と言っても譲らず、俺は下穿き一枚の情けない恰好で、セファーに全身をふきふきされるという辱めを受ける結果となったのだった……。









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