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第23話

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 バルロが自分を一流の商人だ、と言ったことはあながち嘘ではなかったようだ。

 俺たちが合流できたこのキャラバンは、とてもつもなく規模が大きかった。
 
 運んでいる大量の商品もそれなりの品、そしてこの隊列に参加してる商人たちも、大きな商売をしているしっかりした者たちばかり。雇われている傭兵たちも、荒くれ者などではなく、全員が規律正しい。

 隊長のバルロだけは、どうにもうさんくささが否めないが、セファーと俺は『金貨21枚の上得意』として、ラクダを二頭あてがわれ、水と食料もたっぷりと、バルロの妹のボルカから支給してもらった。

 そして今、セファーと俺は、バルロのすぐ後ろを、ゆったりとした足取りのラクダの背に揺られて進んでいた。



 最初セファーは、自分はラクダには乗らず、俺の乗ったラクダの手綱を引くといってきかなかったが、俺が何とか説得してセファーもラクダに乗せた。

 ……いくら騎士と言っても、昨日と今日でセファーはかなりの体力を消耗しているはずだ。俺はこれ以上、セファーに灼熱の砂漠を歩かせたくなかった。


 それにしても……、


 ――本当に、よかった!


 俺はしみじみ思う。

 もしこのキャラバンに巡り合えなかったら、遅かれ早かれ、セファーも俺も、砂漠で力尽きていたことだろう。

 セファーの言う通り、山を越えてよかった。やはり、俺にとってはセファー自身が救いの神子だ!



「ほら、神官様、食えよ!」

 バルロがくるっと振り向くと、俺に麻袋を放ってきた。


「……?」

「……っ! この人に気安く口をきくな!」


 なぜか俺にくれたはずの麻袋をセファーが取り上げると、セファーはバルロに向かって牙をむく。


 ーーそう、さっきから、セファーはずっとこの調子だ。


 さきほどバルロにからかわれたのが、よっぽど騎士としてのプライドを傷つけられたのか、セファーはすっかりバルロを「敵認定」してしまったようだ。


「おー、おっかねえ、番犬君だな! ただのナツメヤシだよ。毒なんか入っちゃいない。
そんなに心配なら、お前が先に口に入れて、それを彼氏に口移しでもしてやったらどうだ!?」

 またバルロが、セファーの神経を逆なでするようなことを言う。


「貴様っ……、この人を侮辱するのは、許さない……っ」


「まあまあまあ、セファー、いいから、ほら落ち着いて。
ナツメヤシは栄養豊富で、砂漠の恵みの果実って呼ばれてるんだよ!
砂漠を旅するにはとっておきの栄養補給になる! 俺たちはこれまで砂漠でかなりの体力を消耗しただろ?
それを回復させようとして、バルロさんはこれをくれたんだよ。
ほら、セファーも食べよう、元気になるよ!」

 俺はセファーからその麻袋を受け取ると、大粒のナツメヤシを一つとりだした。


「……」


「ふぅん、あんた、神官様のわりに、いろいろと物知りみたいだな。
……やっぱり、神官様じゃ、ないとか?」

 バルロが俺を値踏みするように見た。


 ――まあ、この世界に来るまでは、社会人としても経験もまあまああるのだが!



「バルロさん、コストーにはどれくらいでつくんだ?」

 俺の質問に、バルロはその色っぽい目元で俺を振り返る。


「まあ、せいぜいあと2、3日ってところかな?
心配いらないぜ。ちゃんと夜はテントも張るから安眠できる。
……ただ、野郎どもと雑魚寝だけどな!」


 



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