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第16話

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「難儀なものだな。どうせ薬を使うなら、最初から最後まで、すべて記憶を失くせばいいものを!
そうすれば、私も神子も、ここまで互いに不快な思いをすることもなかっただろう。
……どうせあのクソ魔導士にでも言われて、最初のうちはしっかりと互いの記憶が残るように、魔力で薬も調節しているのだろう?
なあ、神官長よ」

 ナセルは舌打ちする。ナディアは顔を伏せたままだ。


 ナセルが、寝台の上に乗る。

 うつ伏せに拘束された俺は、首をひねってナセルの姿をとらえた。


「ナセル……っ、こんなこと、やめさせてくれ!」

「やめさせる……? そんなことが私にできるなら、もうとうにやっている」

 皮肉げに口をゆがめると、ナセルは着ていた薄い羽織を脱ぎ捨てた。


 ナセルの鍛えられた筋肉質な身体……。


「おい、いつまで口を開けて見ているつもりだ?
神官長、私がきちんと『できる』か、王に最後まで確認しろとでも命じられたか?
私たちは、見世物にまでなるつもりはないぞ。
ーー全員、出ていけっ!!」

 ナセルの強い口調に、ナディアと護衛騎士たちは、すごすごと部屋から立ち去った。


 扉が閉まると、ナセルは思いのほか優しい手つきで、縛られた俺の背中を撫で始めた。



「二人きりだな……、神子……」


「……っ、ナセルっ、早くほどいてくれ! 俺たちがこんなことをする必要なんてない!
そもそも俺は神子じゃないんだっ、だからっ!」

 俺はナセルに訴えかける。


「神子かどうかは、こちらが決めること!
神子……、そうまでして俺を拒むとはな……、少しは優しくしてやろうと思っていたが……」

 ナセルはその薄緑の瞳を細めると、俺が着せられていたネグリジェの裾を、一気にめくった。


「!!!!」

「ああ……、やはり男だな……。ははっ、男だ…‥、男の神子だ。しかも十も年上の!
王は、男の神子を、私に……っ」

 何がおかしいのか、ナセルは急に笑い出した。


「ナセル……?」

 俺がいぶかし気にナセルとみると、ナセルはぐいと俺の身体の上に乗り上げてきた。


「……っ、やめろっ!」

「ああ、なんて馬鹿らしい……。神子の加護、だと?
私は最初から、そんなもの望んでいなかったのにっ!」

 ナセルが荒々しい手つきで、俺の下穿きの紐に手をかける。



「嫌だっ、ナセルっ……」

 紐はするりと解け、俺の下半身がすべてあらわになった。

 ナセルがその熱い手のひらで、俺の尻を一撫でした。


「っ……!」


「こうやって後ろから見れば、男だとしてもなかなか煽情的な眺めだ。
……薬も効いてきたようだな。
神子、力を抜いていろ。すぐに終わらせてやる」








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