9 / 97
第9話
しおりを挟む
結局、見つかったのはサボテンの変異種のような、トゲトゲした植物だった。
「神子、これで水分は確保できたぞ!」
セファーが嬉しそうな声を上げる。
「え、これが?」
俺は2メートルはあるかと思われる、茶色と緑色の間の物体を見上げる。
セファーは、腰の短剣を取り出すと、その幹の部分に深く刃を入れた。
すると、そこから水滴がどんどん滴り落ちてくる。
「神子、ここに口をつけて、飲んで」
セファーに示されたところに唇を寄せて、そこからこぼれてくる樹液で俺は喉を潤した。
「美味しい!」
その樹液は少し甘く、身体の中に染み込んでいくようだった。
俺は夢中で、その幹の部分に吸い付いて、舌を這わせて……、
「……っ」
気がつくと、なぜか頬を高潮させたセファーが俺を凝視していて……。
「あっ、ごめん、俺ばっかり、セファーも飲んで!」
俺がその植物から口を離すと、セファーは口元に手を当てた。
「いやっ、俺は、あとで……」
「そう?」
それから、セファーは俺に植物の幹をきれいにカットしたものを持たせてくれて、持っていた水筒には樹液をたっぷりと補充することができた。
どうやらこの植物は、この世界の砂漠でいうところの、ヤシの実みたいな存在らしい。
その樹液には、おそらく天然のミネラルが多分に含まれ、スポーツドリンクみたいな役割を果たしてくれている……ようだ。
ーーというわけで、俺とセファーの脱水は、見事解消した!!
「やはり、神子のおかげだ」
「……!!!!」
白い歯を見せるセファーに、またもやトゥクンと鳴る俺の心臓。
ーー待て待て待て!
さっきから、俺、どうかしてる!
いくら、見たこともないほど整った顔貌だからといって、何が何でも、節操なさすぎるだろ!!
でも、護衛騎士とはいえ、いままで口もきいたこともなかったセファーと俺が、こんなふうに砂漠を二人で旅する羽目になるなんて、人生本当に何が起こるかわかったもんじゃない。
そして、水分を十分補給できた俺達は、計画通り、日暮れ前に山の麓につくことができた。
「今日はここで夜を明かす」
お誂え向きにみつかった小さな洞窟内に、焚き火をおこしたセファーが言った。
「ずいぶん、冷えてきたね……」
俺はぶるっと身体を震わせる。
砂漠特有の気候。
昼間は灼熱の高温なのに、朝晩は氷点下になるほど冷え切ってしまう。
「この焚き火だけでは、十分に暖をとれない」
言うと、セファーは着ていた服を、がばっと脱ぎ捨てた。
「眠るときに凍えないためにも、互いの体温で暖を取る必要がある。
神子、服を脱いで」
ええぇえええええっ!!!!????
「神子、これで水分は確保できたぞ!」
セファーが嬉しそうな声を上げる。
「え、これが?」
俺は2メートルはあるかと思われる、茶色と緑色の間の物体を見上げる。
セファーは、腰の短剣を取り出すと、その幹の部分に深く刃を入れた。
すると、そこから水滴がどんどん滴り落ちてくる。
「神子、ここに口をつけて、飲んで」
セファーに示されたところに唇を寄せて、そこからこぼれてくる樹液で俺は喉を潤した。
「美味しい!」
その樹液は少し甘く、身体の中に染み込んでいくようだった。
俺は夢中で、その幹の部分に吸い付いて、舌を這わせて……、
「……っ」
気がつくと、なぜか頬を高潮させたセファーが俺を凝視していて……。
「あっ、ごめん、俺ばっかり、セファーも飲んで!」
俺がその植物から口を離すと、セファーは口元に手を当てた。
「いやっ、俺は、あとで……」
「そう?」
それから、セファーは俺に植物の幹をきれいにカットしたものを持たせてくれて、持っていた水筒には樹液をたっぷりと補充することができた。
どうやらこの植物は、この世界の砂漠でいうところの、ヤシの実みたいな存在らしい。
その樹液には、おそらく天然のミネラルが多分に含まれ、スポーツドリンクみたいな役割を果たしてくれている……ようだ。
ーーというわけで、俺とセファーの脱水は、見事解消した!!
「やはり、神子のおかげだ」
「……!!!!」
白い歯を見せるセファーに、またもやトゥクンと鳴る俺の心臓。
ーー待て待て待て!
さっきから、俺、どうかしてる!
いくら、見たこともないほど整った顔貌だからといって、何が何でも、節操なさすぎるだろ!!
でも、護衛騎士とはいえ、いままで口もきいたこともなかったセファーと俺が、こんなふうに砂漠を二人で旅する羽目になるなんて、人生本当に何が起こるかわかったもんじゃない。
そして、水分を十分補給できた俺達は、計画通り、日暮れ前に山の麓につくことができた。
「今日はここで夜を明かす」
お誂え向きにみつかった小さな洞窟内に、焚き火をおこしたセファーが言った。
「ずいぶん、冷えてきたね……」
俺はぶるっと身体を震わせる。
砂漠特有の気候。
昼間は灼熱の高温なのに、朝晩は氷点下になるほど冷え切ってしまう。
「この焚き火だけでは、十分に暖をとれない」
言うと、セファーは着ていた服を、がばっと脱ぎ捨てた。
「眠るときに凍えないためにも、互いの体温で暖を取る必要がある。
神子、服を脱いで」
ええぇえええええっ!!!!????
1,545
お気に入りに追加
2,092
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています
謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません
柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。
父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。
あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない?
前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。
そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。
「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」
今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。
「おはようミーシャ、今日も元気だね」
あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない?
義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け
9/2以降不定期更新
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺
toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染)
※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。
pixivでも同タイトルで投稿しています。
https://www.pixiv.net/users/3179376
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/98346398
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる