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第9話

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 結局、見つかったのはサボテンの変異種のような、トゲトゲした植物だった。


「神子、これで水分は確保できたぞ!」

 セファーが嬉しそうな声を上げる。


「え、これが?」

 俺は2メートルはあるかと思われる、茶色と緑色の間の物体を見上げる。


 セファーは、腰の短剣を取り出すと、その幹の部分に深く刃を入れた。

 すると、そこから水滴がどんどん滴り落ちてくる。


「神子、ここに口をつけて、飲んで」


 セファーに示されたところに唇を寄せて、そこからこぼれてくる樹液で俺は喉を潤した。


「美味しい!」

 その樹液は少し甘く、身体の中に染み込んでいくようだった。


 俺は夢中で、その幹の部分に吸い付いて、舌を這わせて……、



「……っ」

 気がつくと、なぜか頬を高潮させたセファーが俺を凝視していて……。



「あっ、ごめん、俺ばっかり、セファーも飲んで!」

 俺がその植物から口を離すと、セファーは口元に手を当てた。


「いやっ、俺は、あとで……」

「そう?」


 それから、セファーは俺に植物の幹をきれいにカットしたものを持たせてくれて、持っていた水筒には樹液をたっぷりと補充することができた。



 どうやらこの植物は、この世界の砂漠でいうところの、ヤシの実みたいな存在らしい。

 その樹液には、おそらく天然のミネラルが多分に含まれ、スポーツドリンクみたいな役割を果たしてくれている……ようだ。


 ーーというわけで、俺とセファーの脱水は、見事解消した!!



 
「やはり、神子のおかげだ」

「……!!!!」


 白い歯を見せるセファーに、またもやトゥクンと鳴る俺の心臓。


 ーー待て待て待て!


 さっきから、俺、どうかしてる!

 いくら、見たこともないほど整った顔貌だからといって、何が何でも、節操なさすぎるだろ!!


 でも、護衛騎士とはいえ、いままで口もきいたこともなかったセファーと俺が、こんなふうに砂漠を二人で旅する羽目になるなんて、人生本当に何が起こるかわかったもんじゃない。




 そして、水分を十分補給できた俺達は、計画通り、日暮れ前に山の麓につくことができた。



「今日はここで夜を明かす」

 お誂え向きにみつかった小さな洞窟内に、焚き火をおこしたセファーが言った。



「ずいぶん、冷えてきたね……」

 俺はぶるっと身体を震わせる。



 砂漠特有の気候。

 昼間は灼熱の高温なのに、朝晩は氷点下になるほど冷え切ってしまう。



「この焚き火だけでは、十分に暖をとれない」

 言うと、セファーは着ていた服を、がばっと脱ぎ捨てた。



「眠るときに凍えないためにも、互いの体温で暖を取る必要がある。
神子、服を脱いで」



 ええぇえええええっ!!!!????




 
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