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第5話
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「あの、俺……、神子なんかじゃありません! 俺は、日之出陽太っていって、オーロラITソリューションっていうIT企業で働いています」
なんとか声を出せること、そして自分の頭がクリアで、言葉がちゃんと伝わっていることに、俺は安心した。
「おおっ!!」
俺の言葉に、魔法使いのじいさんは目を見開く。
「ヒノデヨータ様とおっしゃるのですね! なんとまた神々しいお名前であられることか!!
しかも、神子様は、あちらの世界でも崇高なお名前のアイティーキギョウというところで、日々のお勤めをなされていたのですね!
どうぞ、ご心配なく!
こちらの世界でも、神子様としてヒノデヨータさまは、神子様のお勤めに励むことができますゆえ!」
「は、はぁ……?」
――伝わっているようで、なんにも伝わっていないこのもどかしい感覚……。
早く、早く戻ってくれー! 俺の脳の誤作動!!
「私は認めないぞ! こんな凡庸な男が、この国を救う神子などと!」
腕を組んだ銀髪イケメンが、忌々し気に俺を見る。
うん、ムカつくけど、俺が神子ではないという認識は正しい!
「しかし、ナセルよ。我々は今、この目で見たではないか!
このお方が、この魔法陣より異世界から召喚されたところを!」
ダンディーイケおじが大げさな身振りで、座ったままの俺に向かって片膝をついた。
「神子様、お待ち申し上げておりました!
私はあいにく妃もおりますゆえ、あなた様のご加護は受けることはできませんが、
この国の第一王子・ナセルが、あなた様のご加護を一身にお受けいたします」
「父上っ!!」
銀髪イケメンが気色ばむ。
王子っ!? ってことは、王子の父上だから、この人が、王様……?
うわぁー、俺の貧困な想像力が作り出しそうな妄想そのまんま!!
早く―、早く目覚めろー、俺!!
イケおじ王様が、魔法使いに掴まれているのとは反対の手を取って、両手で包み込んだ。
「……っ!!」
なぜだかゾッと背すじに悪寒が走る。
「さあ、神子様、参りましょう! 神子様のお部屋はすでに居心地よく整えてあります!
今日はもうお疲れでしょうからゆっくりお休みになって、明日から神子様のお勤めについて
いろいろと説明させていただきますね!
なーに、心配などいりません。神子様の力をもってすれば、何もかもたやすいことばかりです!」
なんでこの人たちは、こうもポジティブに俺を受け入れようとしているのか?
現実世界に目覚める気配もない俺は、なにか突破口を見つけようと辺りを見渡した。
その時……、
石造りの部屋の扉の前に、番兵のように立つ背の高い男と目が合った。
肌は滑らかな褐色。プラチナブロンドの髪に、深い海のような青い瞳……。
――ほら、やっぱりここ、絶対俺のつくりだした妄想の世界だよ!!!!
俺は確信していた。
なぜなら、その男は、まるでCGで作ったかのような完璧すぎる美しさだったからだ!!
なんとか声を出せること、そして自分の頭がクリアで、言葉がちゃんと伝わっていることに、俺は安心した。
「おおっ!!」
俺の言葉に、魔法使いのじいさんは目を見開く。
「ヒノデヨータ様とおっしゃるのですね! なんとまた神々しいお名前であられることか!!
しかも、神子様は、あちらの世界でも崇高なお名前のアイティーキギョウというところで、日々のお勤めをなされていたのですね!
どうぞ、ご心配なく!
こちらの世界でも、神子様としてヒノデヨータさまは、神子様のお勤めに励むことができますゆえ!」
「は、はぁ……?」
――伝わっているようで、なんにも伝わっていないこのもどかしい感覚……。
早く、早く戻ってくれー! 俺の脳の誤作動!!
「私は認めないぞ! こんな凡庸な男が、この国を救う神子などと!」
腕を組んだ銀髪イケメンが、忌々し気に俺を見る。
うん、ムカつくけど、俺が神子ではないという認識は正しい!
「しかし、ナセルよ。我々は今、この目で見たではないか!
このお方が、この魔法陣より異世界から召喚されたところを!」
ダンディーイケおじが大げさな身振りで、座ったままの俺に向かって片膝をついた。
「神子様、お待ち申し上げておりました!
私はあいにく妃もおりますゆえ、あなた様のご加護は受けることはできませんが、
この国の第一王子・ナセルが、あなた様のご加護を一身にお受けいたします」
「父上っ!!」
銀髪イケメンが気色ばむ。
王子っ!? ってことは、王子の父上だから、この人が、王様……?
うわぁー、俺の貧困な想像力が作り出しそうな妄想そのまんま!!
早く―、早く目覚めろー、俺!!
イケおじ王様が、魔法使いに掴まれているのとは反対の手を取って、両手で包み込んだ。
「……っ!!」
なぜだかゾッと背すじに悪寒が走る。
「さあ、神子様、参りましょう! 神子様のお部屋はすでに居心地よく整えてあります!
今日はもうお疲れでしょうからゆっくりお休みになって、明日から神子様のお勤めについて
いろいろと説明させていただきますね!
なーに、心配などいりません。神子様の力をもってすれば、何もかもたやすいことばかりです!」
なんでこの人たちは、こうもポジティブに俺を受け入れようとしているのか?
現実世界に目覚める気配もない俺は、なにか突破口を見つけようと辺りを見渡した。
その時……、
石造りの部屋の扉の前に、番兵のように立つ背の高い男と目が合った。
肌は滑らかな褐色。プラチナブロンドの髪に、深い海のような青い瞳……。
――ほら、やっぱりここ、絶対俺のつくりだした妄想の世界だよ!!!!
俺は確信していた。
なぜなら、その男は、まるでCGで作ったかのような完璧すぎる美しさだったからだ!!
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