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ナイトメア シリーズ【IFルート……のようなストーリー】

ダン編 〜シルヴィアside〜 中編

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 日も高くなってから、ようやくアントンは階下に降りてきた。


「あ……、お母様っ、今日は非番ですか?」

 テラスでお茶を飲んでいるシルヴィアを見つけ、アントンは驚いた表情になる。

「もうお昼よ。アントン、テラスで一緒に食事しましょう」

「はい……、あっ……」

 シルヴィアの視線に、アントンはあわててはだけたシャツの襟元を合わせる。


 シルヴィアは見逃さなかった。これみよがしに鎖骨につけられた赤い吸い痕、そして……噛み跡。


 ――あの獣めがっ……。


 思わずティーカップを粉々に砕きそうになる自分を抑え、シルヴィアはアントンに微笑みかけた。


「アントン、お父様も心配しているのよ。最近だいぶ痩せたんじゃない? 顔色も悪いし」

「いえっ……、そんなこと……」

「ダンとは……、どうなの? うまくやってるの?」

「はい、もちろん……」

 アントンが目を伏せる。最近ぐっと、色っぽく艶めかしい表情をするようになったアントン。

 ――ダンが毎夜我慢できなくなるのも、納得だ。

 


 ――こんなはずじゃなかったのに……。


 シルヴィアはぎりぎりと歯ぎしりする。

 ダン・モーアンは、荒くれ者や血気盛んなものが多い第一騎士団のなかでも、かなり珍しいタイプの物腰の柔らかい優男だった。

 整った容貌。爽やかで、人好きのする笑顔……。もちろん国中の若い娘たちが放っておくはずもなく、行く先々で露骨な誘いを受けることも多かった。

 だが、そんな女たちの色っぽい視線にも、ダンははにかんだような微笑みを返すばかりで、まるで相手にする様子はなかった。

 だからシルヴィアは、ダンのことを、この手のことにはまるで奥手な男だと思っていた……。思っていたのに……。


 ――毎晩、あそこまで激しくさかるなんて、誰が想像できるというのよっ!!


 コンラードの責めるような視線を思い出し、シルヴィアは思わずその手に力を込めた。

 バリッ……。

 鈍い音がして、ティーカップの取手が取れた。

「あの……、俺、着替えてきますね」

 アントンは気づかないふりをして、その場をとりなすと、テラスから出ていった。


 ――安心して、アントン! 今日こそはお母様とお父様が、あの性獣から守ってあげますからね!!



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 そしてその夜……。


 アントンとダンの寝室の前に、シルヴィアとコンラードはいた。

「あれだけ注意したんだから、さすがに今日は大人しくしているわ、きっと……」

 ――屋敷全体が揺れるようなあの激しい交わりを聞かされるのは、もううんざりだ。


「しっ、声がする」

 コンラードは自分の唇に人差し指を当てる。

 しかし、部屋の中から漏れ聞こえる二人のやり取りは、シルヴィアの想像を絶するものだった……。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「アントン様……っ! 逃げないでくださいっ!」

 ダンの熱を帯びた声……。この男、間違いなく、サカッている!!


「だ、ダン兄様……、俺、今日はすっごく疲れてるから、その……」

 対照的に焦りを隠せないアントンの声。


「わかっております。今朝、御母上と御父上からも注意を受けております。
今日は、アントン様を疲労させるようなことは一切いたしませんっ!」

「そうなんだ……。じゃあ、よかった……」

 ホッとしたようなアントンの声。


「じゃあ、明かりを消すね。……ダン兄様? どうしてベッドに入らないの?」

「アントン様っ……、裸になって、ベッドに寝そべっていただけますかっ?」

「はあっ……?? え、何っ? だって、今日は……」



「アントン様……、疲れを癒やしてゆっくり眠れるよう、傷ついたお身体に私がお薬を塗って差し上げますっ!」



 ――そう来たか! ダン!!!!

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