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ナイトメア シリーズ【IFルート……のようなストーリー】
ヴィクトル編 〜ソフィアside〜 前編
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ソフィアは、目の前で繰り広げられている光景に戦慄していた。
「あっ、駄目っ、殿下っ……! そこはっ……」
「ここか、ここだなっ……!」
ヴィクトルの肩に脚をかけられ、その腰が高く持ち上げられる。
「はっ、ああっ……、いやっ、怖いっ……」
「大丈夫だ、力を抜いていろ」
あやすようにその額に唇を落とすと、ヴィクトルはぐっと腰を進めた。
「あっ、んんっ、深いっ、深いっ……! 殿下っ……! ああっ……!」
激しく肌と肌がぶつかり合う。
そして、衣擦れの音がやけになまめかしくソフィアの耳に残る……。
「くっ、凄い締付けだ……っ、もう少し力を抜けっ、
――アントン!」
――アントン!!!!?????
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
思えばその日は、朝からなにかがおかしかった。
目覚めは最悪で、明け方ごろ悪夢にうなされた記憶がある。
だが目覚めると、夢の内容はすっかりソフィアの記憶から抜け落ちていた。
王宮で寸分違わず、規則正しく行われる生活……。今日もそんな代わり映えのない一日が始まるはずだった。
――だが、
朝の支度、着替え、朝食と過ぎて、ソフィアは周りの王宮の使用人たちの視線が、いつもと違うことに気づく。
いつもは、称賛、憧れ、賛美といった眼差しを惜しみなく向けてくる王宮の者たち……、だが今日はその視線にその熱量は一切感じられない。
礼儀正しく、王族としての経緯は払われているが、いつもとはまるで何かが違う……。
――気の所為、ではないようね……。
人の心の機微に人一倍敏感なソフィア。だが、その理由に全く心当たりはない。
――まあ、いいわ。こんなときはヴィクトルをからかって気分転換でもしましょう。
弟のヴィクトルは、騎士団長の長男であるアントン・ソールバルグに熱を上げている。自分勝手で自己中心的なヴィクトルが、他人に心を奪われたということだけでも面白いのに、あの不器用な弟が巻き起こす学園での騒動は、聞いているだけでも血湧き肉躍るものだった。
もちろん姉としても、ヴィクトルの恋路はぜひ応援してやりたいところだが、いかんせん相手が悪かった。
――あの男が相手じゃ、王族のヴィクトルといえども勝ち目はないわよね。だって……。
そこまで考えてソフィアは首をひねる。
――あの男って、誰のことだったっけ!?
ヴィクトルの私室の前まできて、またいつもと違うことに気づく。
――なんであの子、結界なんて張ってるの?
ソフィアにとって、ヴィクトルの部屋は自室同様、出入り自由な場所のはずだ。
だが、結界を破るのはソフィアにとって造作もないこと。大した魔力を使うことなく、ソフィアは簡単にヴィクトルの私室に足を踏み入れることができた。
――だが、そこで目にした光景は、目を疑うものだった……。
目の前にあるのは、組み敷いた相手と激しく交わっているヴィクトルの姿……。
そして、その交合の相手は、あのアントン・ソールバルグ。
アントンは、ソフィアが贈ったあの白いレースでできたベビードールを着せられていた。
その淫靡なレースから、アントンの肢体が透けて見え、倒錯的な雰囲気を醸し出していた。
――でも、ちょっと待って!? あのベビードールは、婚約祝いと称して、私があの男に贈ったものなのよ!? それがなぜここに……。
もちろんあの下着は、ただのベビードールなどではない。着せた相手に対峙したとき、その人物の性癖をすべてあからさまにしてしまうというれっきとした魔道具なのだ。
――あれを使って、あの男のえげつない性癖をアントンに晒せば、きっとアントンも逃げ出すに違いないと……。
……でも何度考えても、「あの男」についてソフィアは何も思い出すことができなかった。
まさかソフィアが結界を破ってここにいることなど、考えてもいないのだろう。
ヴィクトルも、アントンも、この状況に固まっているソフィアに気づくことなく、お互いの身体を貪欲に求めあっている。
「ああああっ、殿下っ、凄いっ、凄いっ……、奥っ、奥に入っちゃうっ!!!」
ヴィクトルが、抜き差しを繰り返すたびに、アントンの身体がはねる。
「アントンっ、アントンっ、好きだっ、愛しているっ……!」
激しい腰の動きとは真逆に、両手で頬をはさみ、ヴィクトルは愛しげにアントンに口づける。
「ああんっ、ヴィクトルっ、ヴィクトルっ! 俺もっ、愛してるっ……」
アントンがヴィクトルの背に手を回す。
「お前を伴侶に迎えることができて、俺はっ、幸せだ……」
「俺もっ、ヴィクトルと結婚できて、嬉しいっ!!」
――結婚!!!!????
「はあっ、アントンっ、まだ、これからだぞ……、すぐには終わってやれないっ……」
荒い息で、上気した頬のヴィクトルがアントンを見下ろす。
「いいよっ、ヴィクトルっ! もっとっ、もっとキスしてっ……」
見つめ合う二人……。愛情であふれるその表情……。
「アントンっ!!!!」
――と、そのとき、額の汗を払うために顔を上げたヴィクトルが、ソフィアの存在に気づいた。
「!!!!!!!」
青ざめ、立ちすくむソフィアに、ヴィクトルはニヤリと笑うと、顎をしゃくって退出しろと合図する。
交合をやめる気など、さらさらない、という表情で。
――一体どういうことなの!!!!!????
「あっ、駄目っ、殿下っ……! そこはっ……」
「ここか、ここだなっ……!」
ヴィクトルの肩に脚をかけられ、その腰が高く持ち上げられる。
「はっ、ああっ……、いやっ、怖いっ……」
「大丈夫だ、力を抜いていろ」
あやすようにその額に唇を落とすと、ヴィクトルはぐっと腰を進めた。
「あっ、んんっ、深いっ、深いっ……! 殿下っ……! ああっ……!」
激しく肌と肌がぶつかり合う。
そして、衣擦れの音がやけになまめかしくソフィアの耳に残る……。
「くっ、凄い締付けだ……っ、もう少し力を抜けっ、
――アントン!」
――アントン!!!!?????
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
思えばその日は、朝からなにかがおかしかった。
目覚めは最悪で、明け方ごろ悪夢にうなされた記憶がある。
だが目覚めると、夢の内容はすっかりソフィアの記憶から抜け落ちていた。
王宮で寸分違わず、規則正しく行われる生活……。今日もそんな代わり映えのない一日が始まるはずだった。
――だが、
朝の支度、着替え、朝食と過ぎて、ソフィアは周りの王宮の使用人たちの視線が、いつもと違うことに気づく。
いつもは、称賛、憧れ、賛美といった眼差しを惜しみなく向けてくる王宮の者たち……、だが今日はその視線にその熱量は一切感じられない。
礼儀正しく、王族としての経緯は払われているが、いつもとはまるで何かが違う……。
――気の所為、ではないようね……。
人の心の機微に人一倍敏感なソフィア。だが、その理由に全く心当たりはない。
――まあ、いいわ。こんなときはヴィクトルをからかって気分転換でもしましょう。
弟のヴィクトルは、騎士団長の長男であるアントン・ソールバルグに熱を上げている。自分勝手で自己中心的なヴィクトルが、他人に心を奪われたということだけでも面白いのに、あの不器用な弟が巻き起こす学園での騒動は、聞いているだけでも血湧き肉躍るものだった。
もちろん姉としても、ヴィクトルの恋路はぜひ応援してやりたいところだが、いかんせん相手が悪かった。
――あの男が相手じゃ、王族のヴィクトルといえども勝ち目はないわよね。だって……。
そこまで考えてソフィアは首をひねる。
――あの男って、誰のことだったっけ!?
ヴィクトルの私室の前まできて、またいつもと違うことに気づく。
――なんであの子、結界なんて張ってるの?
ソフィアにとって、ヴィクトルの部屋は自室同様、出入り自由な場所のはずだ。
だが、結界を破るのはソフィアにとって造作もないこと。大した魔力を使うことなく、ソフィアは簡単にヴィクトルの私室に足を踏み入れることができた。
――だが、そこで目にした光景は、目を疑うものだった……。
目の前にあるのは、組み敷いた相手と激しく交わっているヴィクトルの姿……。
そして、その交合の相手は、あのアントン・ソールバルグ。
アントンは、ソフィアが贈ったあの白いレースでできたベビードールを着せられていた。
その淫靡なレースから、アントンの肢体が透けて見え、倒錯的な雰囲気を醸し出していた。
――でも、ちょっと待って!? あのベビードールは、婚約祝いと称して、私があの男に贈ったものなのよ!? それがなぜここに……。
もちろんあの下着は、ただのベビードールなどではない。着せた相手に対峙したとき、その人物の性癖をすべてあからさまにしてしまうというれっきとした魔道具なのだ。
――あれを使って、あの男のえげつない性癖をアントンに晒せば、きっとアントンも逃げ出すに違いないと……。
……でも何度考えても、「あの男」についてソフィアは何も思い出すことができなかった。
まさかソフィアが結界を破ってここにいることなど、考えてもいないのだろう。
ヴィクトルも、アントンも、この状況に固まっているソフィアに気づくことなく、お互いの身体を貪欲に求めあっている。
「ああああっ、殿下っ、凄いっ、凄いっ……、奥っ、奥に入っちゃうっ!!!」
ヴィクトルが、抜き差しを繰り返すたびに、アントンの身体がはねる。
「アントンっ、アントンっ、好きだっ、愛しているっ……!」
激しい腰の動きとは真逆に、両手で頬をはさみ、ヴィクトルは愛しげにアントンに口づける。
「ああんっ、ヴィクトルっ、ヴィクトルっ! 俺もっ、愛してるっ……」
アントンがヴィクトルの背に手を回す。
「お前を伴侶に迎えることができて、俺はっ、幸せだ……」
「俺もっ、ヴィクトルと結婚できて、嬉しいっ!!」
――結婚!!!!????
「はあっ、アントンっ、まだ、これからだぞ……、すぐには終わってやれないっ……」
荒い息で、上気した頬のヴィクトルがアントンを見下ろす。
「いいよっ、ヴィクトルっ! もっとっ、もっとキスしてっ……」
見つめ合う二人……。愛情であふれるその表情……。
「アントンっ!!!!」
――と、そのとき、額の汗を払うために顔を上げたヴィクトルが、ソフィアの存在に気づいた。
「!!!!!!!」
青ざめ、立ちすくむソフィアに、ヴィクトルはニヤリと笑うと、顎をしゃくって退出しろと合図する。
交合をやめる気など、さらさらない、という表情で。
――一体どういうことなの!!!!!????
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