【完結】前世の記憶が転生先で全く役に立たないのだが?! ~逆チートの俺が異世界で生き延びる方法~

.mizutama.

文字の大きさ
上 下
76 / 95

第76話

しおりを挟む
 アルベルトに転移魔法で連れてこられたのは、やはり俺達の新居用に建てられたという例の屋敷だった。

「ねえ、アルベルト、俺たちちょっと話し合ったほうがいいんじゃないかなっ!?」

 問答無用で寝室へ直行し、ベッドに沈められた俺。アルベルトが何をしようとしているかは明白だ。

「話し合う……? 隠し事ばかりの兄さんと、今更何を話すことがあるの?
それとも、何か他にも俺に告白しなければならないことがあるのかな?」

 俺の上に乗ったアルベルトが、自身の上着を脱ぎ捨てる。

「だからそれが全部誤解なんだって! 俺っ、アルベルトが思ってるようなことなにもしてないしっ、
アルベルトが心配するようなことなんてなにもないんだからっ!!」

 俺の上着のボタンを外そうとするアルベルトの手をつかむ。

「なにも、してない……?」

 アルベルトの青紫色の瞳が光る。その瞬間、俺の上着を乱暴に剥ぎ取られた。飾りの金ボタンが弾け飛ぶ。

「だからっ……」


「そう……、あの魔法大臣の息子に兄さんの全裸を見せて、全身を洗わせて、香油にまみれた身体を触れさせたことが?
それから、あの王子に魔力譲渡と称して口づけを受けて、舌を絡み合わせたことが……、何もしていないって!?」

 はだけたシャツから、アルベルトの手が侵入する。
 熱い手のひらで素肌を撫でられると、思わず息が上がった。

「アルベルト……っ!」

「そんな顔して、他の男も誘うつもりだったの?
兄さん……、あれから一度も許してくれないのは、どうして? もしかして俺以外に、男がいるの?」

 アルベルトの責めるような瞳……。

「違うっ、そんなことあるはずないっ!!」

「俺のこと、愛しているっていったのは嘘? それとも、そんなに良くなかった? 俺との……」

「だから、違うって! 家ではお母様もお父様もいるから気兼ねするし……っ、それにあれからずっと婚約パーティの準備で忙しかったし……」

 毎日俺とセックスすると宣言したアルベルト。だが、あの最初の夜から後、俺は何かにつけてその誘いを断っていた。
 だって、あんなこと毎日したら、俺の身体がもたないし、それに……、それに……。


「一度兄さんにはきちんとわからせてあげる必要があるみたいだね。
自分がどんなふうに周りから見られているか、そして自分が一体誰のものなのか……」

 アルベルトは俺のベルトを抜き取ると、俺の下半身に手を伸ばした。

「アルベルトっ、俺っ……」

「ほら、もうこんなになってるよ……、触られたくてたまらないの……? もしかして男なら誰でもいいのかな……?」

 咎めるようなアルベルトの口調に、俺は思わずアルベルトの頬を張った。

「馬鹿野郎っ!!!」

 ペチンと呆れるほど情けない音だったが、それでもアルベルトは驚いたのか、目を丸くしてその動きを止めた。

「兄さん……?」

「バカッ、このアルベルトの大馬鹿者っ!
俺はっ、お前がっ、お前だけが好きなんだよっ!
愛してるっていっただろ!! お前がいるのに、他の男のことなんか考えられるわけないだろっ!!!
アルベルトこそっ、なんでっ……、なんで俺なんだよっ!
俺みたいな普通の顔の、なんの取り柄もないような男の、いったいどこが好きなワケ!?
お前なら、女も男もよりどりみどりだろ!? わけわかんないよっ、お前みたいなやつが……、こんな、俺を……、好きでいてくれるなんてっ!!!」

 涙が自然と頬を伝う。

「ごめんっ、ごめんね兄さんっ!!! 俺が馬鹿だった! お願いだから泣かないで!」

 アルベルトは俺をベッドの上に起き上がらせると、力任せに俺を抱きしめてきた。

「ぐえっ……、苦しいっ」

 あまりの馬鹿力に俺の涙も引っ込んだ。

「兄さんっ! 兄さんのほうこそ、無自覚すぎるよ!
そんな可愛い顔で、無邪気で可愛い言動で、幼い頃から俺を惑わしておいて……!
こんな可愛いこと言われたら……、許すしかなくなるじゃないかっ!!!!」

「アルベルト、ごめんな……。ずっとお前に見放されるのが怖かったんだ……。
今度からはお前になんでも話すし、もう絶対隠し事なんてしない」

 俺もアルベルトを抱き返し、その広い背中に手を回した。

「わかったよ、兄さん。それから、今後は俺以外の男には近づいちゃ駄目だよ。
笑顔で話しかけたりしないで! 必要以上に親しくしないで! 約束だよっ!」

「うん……」

 ――うん? それって……、どうなのかな?


「でもさ、兄さん、俺……、ずっと兄さんに許してもらえなかったから、もう限界……。
だから……、いいよね?」

 アルベルトが優しく俺の髪を梳き、俺の首筋にキスをする。

「うん、アルベルト、……いいよ」


「あと、今日だけ俺のお願い、聞いてくれるかな? 今日の婚約の記念にっ!」

 俺を見つめるアルベルトの青紫色の瞳が、甘くきらめく。


「え、あっ? ……うん!?」







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【お知らせ】
たくさんのお気に入り登録・感想などいただき、ありがとうございます~❤更新の励みになっております☺️
次回はいよいよ最終話です✨
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

ある日、人気俳優の弟になりました。

雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。 「俺の命は、君のものだよ」 初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……? 平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました

ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。 「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」 ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m ・洸sideも投稿させて頂く予定です

ある日、人気俳優の弟になりました。2

雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。穏やかで真面目で王子様のような人……と噂の直柾は「俺の命は、君のものだよ」と蕩けるような笑顔で言い出し、大学の先輩である隆晴も優斗を好きだと言い出して……。 平凡に生きたい(のに無理だった)19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の、更に溺愛生活が始まる――。

弟のために悪役になる!~ヒロインに会うまで可愛がった結果~

荷居人(にいと)
BL
BL大賞20位。読者様ありがとうございました。 弟が生まれた日、足を滑らせ、階段から落ち、頭を打った俺は、前世の記憶を思い出す。 そして知る。今の自分は乙女ゲーム『王座の証』で平凡な顔、平凡な頭、平凡な運動能力、全てに置いて普通、全てに置いて完璧で優秀な弟はどんなに後に生まれようと次期王の継承権がいく、王にふさわしい赤の瞳と黒髪を持ち、親の愛さえ奪った弟に恨みを覚える悪役の兄であると。 でも今の俺はそんな弟の苦労を知っているし、生まれたばかりの弟は可愛い。 そんな可愛い弟が幸せになるためにはヒロインと結婚して王になることだろう。悪役になれば死ぬ。わかってはいるが、前世の後悔を繰り返さないため、将来処刑されるとわかっていたとしても、弟の幸せを願います! ・・・でもヒロインに会うまでは可愛がってもいいよね? 本編は完結。番外編が本編越えたのでタイトルも変えた。ある意味間違ってはいない。可愛がらなければ番外編もないのだから。 そしてまさかのモブの恋愛まで始まったようだ。 お気に入り1000突破は私の作品の中で初作品でございます!ありがとうございます! 2018/10/10より章の整理を致しました。ご迷惑おかけします。 2018/10/7.23時25分確認。BLランキング1位だと・・・? 2018/10/24.話がワンパターン化してきた気がするのでまた意欲が湧き、書きたいネタができるまでとりあえず完結といたします。 2018/11/3.久々の更新。BL小説大賞応募したので思い付きを更新してみました。

処理中です...