74 / 95
第74話
しおりを挟む
パーティももう終盤で、ずっと立ちっぱなしだったこともあり、俺たち4人はテラスの一角に腰を落ち着けることとなった。
俺とアルベルトが並んだ向かいに、ヴィクトルとエリアスが腰掛ける。給仕たちが、その場にティーセットを準備してくれた。
二人はアルベルトのあの電撃を受けた後、エリアスは自身の回復魔法で、ヴィクトルはソフィア王女の回復魔法で事なきを得たようだ。ちなみに、あの風呂自体に回復効果の高い魔力が溶け込んでいたことも、治癒の助けになったとかならないとか……。
だが、二人とも電撃を食らった影響で、髪型はかなり印象が変わっていた。エリアスは長かった髪を肩までバッサリ、ヴィクトルは短めだった髪がなぜかカールしている。……電撃の影響でパーマがかかったみたいになってるのだろうか……?
「もー、そんな怖い顔しないでよ、アルベルト! 殿下も僕も、盟約を結んだんだよ!? もうとっくに聞いてるでしょ?」
エリアスが明るく澄んだ瞳を俺に向けてくる。
今回の一件の謝罪とけじめとして、ヴィクトルは母である女王陛下、エリアスも自身の母である魔法大臣と盟約を結ばされた。
もちろん内容は「今後一切、アントンに邪な目的で近づかず、触れたりしない」というダンと同様のもの……。
今後、もし俺を襲ったりした場合、盟約の下に二人の命は抹消されることとなる……。
「それに、その二人のおそろいのピアス! 以前もすごかったけど、婚約してさらにパワーアップして最強レベルになってるよね!?
それでアントンに指一本でも触れたら、僕だって間違いなく一瞬で心臓が止まっちゃうよ~!」
へらへらと笑うエリアス。俺は思わず、アルベルトからもらったピアスに手を触れた。
――これってそんな威力があったのか!?
「これでもヴィクトル殿下も反省しているんだって~! ね、殿下!?」
エリアスが、ヴィクトルに水を向ける。
「まあ、俺様としても、王族の一員として、今回のことについては特に、アントンに詫びる気持ちは……、ある、ということだ!」
ヴィクトルがいつものようにふんぞり返る。おそらく、これがヴィクトルの最大限の謝罪方法なのであろう。
「詫びる気持ち……? あなた方は、私の婚約者に対してどんな狼藉を働いたか、きちんと自覚はあるのですか?」
私の婚約者、のところを強調しながら、アルベルトはヴィクトルとエリアスに冷徹な視線を向ける。
「ははっ、だからこうして、お詫びの気持ちと祝福を込めて、贈り物を持参したんじゃないか」
エリアスは、真っ赤なバラの花束とともに、金のリボンで結ばれた美しい包みをとりだしてみせる。
「これは、姉上からの詫びの品だ、受け取るがいい」
ヴィクトルもピンクのリボンがかけられた箱を俺に差し出してくる。
「開けてみてよ! アントン!」
エリアスにうながされ、俺はまずソフィア王女からのものだというプレゼントを開封した。
「わあ、これは……」
中には、美しい光沢の白いレースで作られた……、ネグリジェ? え? なにこのスケスケの衣装……、何……? これは……、服なの……?
「ぐぶっ……」
俺が掲げたその卑猥な衣装を目にしたヴィクトルが、紅茶を噴き出した。
「へー、ソフィア王女って相変わらず素敵なご趣味なんだね~!」
まったく動じず、にこにことしているエリアス……。
アルベルトが、慌てて俺からその衣装をひったくった。
「兄さんっ、早くしまって! こいつらが、兄さんがこの淫らな衣装をつけているところを想像しないうちに!!!!!」
――いや、お前が今、絶対想像してるよね!!!???
「……」
エリアスがすました顔で、紅茶を一口飲む。
「いやっ、俺は絶対に、断固として想像などしていない! アントンがこのいやらしく透ける衣装を裸の上に身に纏っているところなど!!!!!」
――お前もか!! ヴィクトル!!!!
「死にたいのですか……? 殿下……」
身も凍るようなアルベルトの声に、一同が静まり返る……。
「じゃあ、今度はエリアスのプレゼントを見せてもらおうかな?」
気を取り直して、俺は金色のリボンを解いた。
包を開けると中は木製の箱だった。その箱の上には、呪文のようなものが書かれている。
この箱の仕様……、もしかして魔道具!?
「さあ、その箱を開けてみて。絶対気に入ると思うよ。……特に、アルベルトは……」
エリアスのエメラルドの瞳が光る。
「兄さん、俺が開けるから……」
アルベルトは俺を制すると、自らその木箱を開けた。
中には、銀色の鎖と……、ブレスレット……!?
アルベルトは、無表情のまま、木箱をすぐに閉じた。
「アルベルト……!?」
「フェルセン殿……、これはどういうおつもりです?」
アルベルトがエリアスを見据える。
「アントンには、遅かれ早かれ絶対必要になるでしょ? ね、アルベルト……。
大丈夫、きちんとアルベルト用に呪いも変更しているから……。
危険もなく楽しめると思うよ……。僕が使えない分、君に託すよ……、アルベルト」
なぜか、エリアスを包むオーラに邪悪な気配を感じるのは俺だけだろうか!?
「ありがたく頂戴しておきます」
アルベルトは、その木箱を傍らに避けた。
「ねえ、アルベルト、それって一体……」
「そんなことより、アルベルト! 新学期からの寮はどこになったの?」
エリアスが急に話題を変えた。
俺とアルベルトが並んだ向かいに、ヴィクトルとエリアスが腰掛ける。給仕たちが、その場にティーセットを準備してくれた。
二人はアルベルトのあの電撃を受けた後、エリアスは自身の回復魔法で、ヴィクトルはソフィア王女の回復魔法で事なきを得たようだ。ちなみに、あの風呂自体に回復効果の高い魔力が溶け込んでいたことも、治癒の助けになったとかならないとか……。
だが、二人とも電撃を食らった影響で、髪型はかなり印象が変わっていた。エリアスは長かった髪を肩までバッサリ、ヴィクトルは短めだった髪がなぜかカールしている。……電撃の影響でパーマがかかったみたいになってるのだろうか……?
「もー、そんな怖い顔しないでよ、アルベルト! 殿下も僕も、盟約を結んだんだよ!? もうとっくに聞いてるでしょ?」
エリアスが明るく澄んだ瞳を俺に向けてくる。
今回の一件の謝罪とけじめとして、ヴィクトルは母である女王陛下、エリアスも自身の母である魔法大臣と盟約を結ばされた。
もちろん内容は「今後一切、アントンに邪な目的で近づかず、触れたりしない」というダンと同様のもの……。
今後、もし俺を襲ったりした場合、盟約の下に二人の命は抹消されることとなる……。
「それに、その二人のおそろいのピアス! 以前もすごかったけど、婚約してさらにパワーアップして最強レベルになってるよね!?
それでアントンに指一本でも触れたら、僕だって間違いなく一瞬で心臓が止まっちゃうよ~!」
へらへらと笑うエリアス。俺は思わず、アルベルトからもらったピアスに手を触れた。
――これってそんな威力があったのか!?
「これでもヴィクトル殿下も反省しているんだって~! ね、殿下!?」
エリアスが、ヴィクトルに水を向ける。
「まあ、俺様としても、王族の一員として、今回のことについては特に、アントンに詫びる気持ちは……、ある、ということだ!」
ヴィクトルがいつものようにふんぞり返る。おそらく、これがヴィクトルの最大限の謝罪方法なのであろう。
「詫びる気持ち……? あなた方は、私の婚約者に対してどんな狼藉を働いたか、きちんと自覚はあるのですか?」
私の婚約者、のところを強調しながら、アルベルトはヴィクトルとエリアスに冷徹な視線を向ける。
「ははっ、だからこうして、お詫びの気持ちと祝福を込めて、贈り物を持参したんじゃないか」
エリアスは、真っ赤なバラの花束とともに、金のリボンで結ばれた美しい包みをとりだしてみせる。
「これは、姉上からの詫びの品だ、受け取るがいい」
ヴィクトルもピンクのリボンがかけられた箱を俺に差し出してくる。
「開けてみてよ! アントン!」
エリアスにうながされ、俺はまずソフィア王女からのものだというプレゼントを開封した。
「わあ、これは……」
中には、美しい光沢の白いレースで作られた……、ネグリジェ? え? なにこのスケスケの衣装……、何……? これは……、服なの……?
「ぐぶっ……」
俺が掲げたその卑猥な衣装を目にしたヴィクトルが、紅茶を噴き出した。
「へー、ソフィア王女って相変わらず素敵なご趣味なんだね~!」
まったく動じず、にこにことしているエリアス……。
アルベルトが、慌てて俺からその衣装をひったくった。
「兄さんっ、早くしまって! こいつらが、兄さんがこの淫らな衣装をつけているところを想像しないうちに!!!!!」
――いや、お前が今、絶対想像してるよね!!!???
「……」
エリアスがすました顔で、紅茶を一口飲む。
「いやっ、俺は絶対に、断固として想像などしていない! アントンがこのいやらしく透ける衣装を裸の上に身に纏っているところなど!!!!!」
――お前もか!! ヴィクトル!!!!
「死にたいのですか……? 殿下……」
身も凍るようなアルベルトの声に、一同が静まり返る……。
「じゃあ、今度はエリアスのプレゼントを見せてもらおうかな?」
気を取り直して、俺は金色のリボンを解いた。
包を開けると中は木製の箱だった。その箱の上には、呪文のようなものが書かれている。
この箱の仕様……、もしかして魔道具!?
「さあ、その箱を開けてみて。絶対気に入ると思うよ。……特に、アルベルトは……」
エリアスのエメラルドの瞳が光る。
「兄さん、俺が開けるから……」
アルベルトは俺を制すると、自らその木箱を開けた。
中には、銀色の鎖と……、ブレスレット……!?
アルベルトは、無表情のまま、木箱をすぐに閉じた。
「アルベルト……!?」
「フェルセン殿……、これはどういうおつもりです?」
アルベルトがエリアスを見据える。
「アントンには、遅かれ早かれ絶対必要になるでしょ? ね、アルベルト……。
大丈夫、きちんとアルベルト用に呪いも変更しているから……。
危険もなく楽しめると思うよ……。僕が使えない分、君に託すよ……、アルベルト」
なぜか、エリアスを包むオーラに邪悪な気配を感じるのは俺だけだろうか!?
「ありがたく頂戴しておきます」
アルベルトは、その木箱を傍らに避けた。
「ねえ、アルベルト、それって一体……」
「そんなことより、アルベルト! 新学期からの寮はどこになったの?」
エリアスが急に話題を変えた。
133
お気に入りに追加
2,636
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

ある日、人気俳優の弟になりました。
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました
ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。
「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」
ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m
・洸sideも投稿させて頂く予定です

ある日、人気俳優の弟になりました。2
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。穏やかで真面目で王子様のような人……と噂の直柾は「俺の命は、君のものだよ」と蕩けるような笑顔で言い出し、大学の先輩である隆晴も優斗を好きだと言い出して……。
平凡に生きたい(のに無理だった)19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の、更に溺愛生活が始まる――。

弟のために悪役になる!~ヒロインに会うまで可愛がった結果~
荷居人(にいと)
BL
BL大賞20位。読者様ありがとうございました。
弟が生まれた日、足を滑らせ、階段から落ち、頭を打った俺は、前世の記憶を思い出す。
そして知る。今の自分は乙女ゲーム『王座の証』で平凡な顔、平凡な頭、平凡な運動能力、全てに置いて普通、全てに置いて完璧で優秀な弟はどんなに後に生まれようと次期王の継承権がいく、王にふさわしい赤の瞳と黒髪を持ち、親の愛さえ奪った弟に恨みを覚える悪役の兄であると。
でも今の俺はそんな弟の苦労を知っているし、生まれたばかりの弟は可愛い。
そんな可愛い弟が幸せになるためにはヒロインと結婚して王になることだろう。悪役になれば死ぬ。わかってはいるが、前世の後悔を繰り返さないため、将来処刑されるとわかっていたとしても、弟の幸せを願います!
・・・でもヒロインに会うまでは可愛がってもいいよね?
本編は完結。番外編が本編越えたのでタイトルも変えた。ある意味間違ってはいない。可愛がらなければ番外編もないのだから。
そしてまさかのモブの恋愛まで始まったようだ。
お気に入り1000突破は私の作品の中で初作品でございます!ありがとうございます!
2018/10/10より章の整理を致しました。ご迷惑おかけします。
2018/10/7.23時25分確認。BLランキング1位だと・・・?
2018/10/24.話がワンパターン化してきた気がするのでまた意欲が湧き、書きたいネタができるまでとりあえず完結といたします。
2018/11/3.久々の更新。BL小説大賞応募したので思い付きを更新してみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる