【完結】前世の記憶が転生先で全く役に立たないのだが?! ~逆チートの俺が異世界で生き延びる方法~

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第74話

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 パーティももう終盤で、ずっと立ちっぱなしだったこともあり、俺たち4人はテラスの一角に腰を落ち着けることとなった。

 俺とアルベルトが並んだ向かいに、ヴィクトルとエリアスが腰掛ける。給仕たちが、その場にティーセットを準備してくれた。


 二人はアルベルトのあの電撃を受けた後、エリアスは自身の回復魔法で、ヴィクトルはソフィア王女の回復魔法で事なきを得たようだ。ちなみに、あの風呂自体に回復効果の高い魔力が溶け込んでいたことも、治癒の助けになったとかならないとか……。

 だが、二人とも電撃を食らった影響で、髪型はかなり印象が変わっていた。エリアスは長かった髪を肩までバッサリ、ヴィクトルは短めだった髪がなぜかカールしている。……電撃の影響でパーマがかかったみたいになってるのだろうか……?


「もー、そんな怖い顔しないでよ、アルベルト! 殿下も僕も、盟約を結んだんだよ!? もうとっくに聞いてるでしょ?」

 エリアスが明るく澄んだ瞳を俺に向けてくる。

 今回の一件の謝罪とけじめとして、ヴィクトルは母である女王陛下、エリアスも自身の母である魔法大臣と盟約を結ばされた。
 もちろん内容は「今後一切、アントンに邪な目的で近づかず、触れたりしない」というダンと同様のもの……。
 今後、もし俺を襲ったりした場合、盟約の下に二人の命は抹消されることとなる……。


「それに、その二人のおそろいのピアス! 以前もすごかったけど、婚約してさらにパワーアップして最強レベルになってるよね!?
それでアントンに指一本でも触れたら、僕だって間違いなく一瞬で心臓が止まっちゃうよ~!」

 へらへらと笑うエリアス。俺は思わず、アルベルトからもらったピアスに手を触れた。


 ――これってそんな威力があったのか!?


「これでもヴィクトル殿下も反省しているんだって~! ね、殿下!?」

 エリアスが、ヴィクトルに水を向ける。

「まあ、俺様としても、王族の一員として、今回のことについては特に、アントンに詫びる気持ちは……、ある、ということだ!」

 ヴィクトルがいつものようにふんぞり返る。おそらく、これがヴィクトルの最大限の謝罪方法なのであろう。


「詫びる気持ち……? あなた方は、私の婚約者に対してどんな狼藉を働いたか、きちんと自覚はあるのですか?」

 私の婚約者、のところを強調しながら、アルベルトはヴィクトルとエリアスに冷徹な視線を向ける。


「ははっ、だからこうして、お詫びの気持ちと祝福を込めて、贈り物を持参したんじゃないか」

 エリアスは、真っ赤なバラの花束とともに、金のリボンで結ばれた美しい包みをとりだしてみせる。


「これは、姉上からの詫びの品だ、受け取るがいい」

 ヴィクトルもピンクのリボンがかけられた箱を俺に差し出してくる。

「開けてみてよ! アントン!」

 エリアスにうながされ、俺はまずソフィア王女からのものだというプレゼントを開封した。


「わあ、これは……」

 中には、美しい光沢の白いレースで作られた……、ネグリジェ? え? なにこのスケスケの衣装……、何……? これは……、服なの……?


「ぐぶっ……」

 俺が掲げたその卑猥な衣装を目にしたヴィクトルが、紅茶を噴き出した。

「へー、ソフィア王女って相変わらず素敵なご趣味なんだね~!」

 まったく動じず、にこにことしているエリアス……。

 アルベルトが、慌てて俺からその衣装をひったくった。


「兄さんっ、早くしまって! こいつらが、兄さんがこの淫らな衣装をつけているところを想像しないうちに!!!!!」


 ――いや、お前が今、絶対想像してるよね!!!???

「……」

 エリアスがすました顔で、紅茶を一口飲む。

「いやっ、俺は絶対に、断固として想像などしていない! アントンがこのいやらしく透ける衣装を裸の上に身に纏っているところなど!!!!!」


 ――お前もか!! ヴィクトル!!!!


「死にたいのですか……? 殿下……」

 身も凍るようなアルベルトの声に、一同が静まり返る……。


「じゃあ、今度はエリアスのプレゼントを見せてもらおうかな?」

 気を取り直して、俺は金色のリボンを解いた。

 包を開けると中は木製の箱だった。その箱の上には、呪文のようなものが書かれている。
 この箱の仕様……、もしかして魔道具!?


「さあ、その箱を開けてみて。絶対気に入ると思うよ。……特に、アルベルトは……」

 エリアスのエメラルドの瞳が光る。

「兄さん、俺が開けるから……」

 アルベルトは俺を制すると、自らその木箱を開けた。

 中には、銀色の鎖と……、ブレスレット……!?

 アルベルトは、無表情のまま、木箱をすぐに閉じた。

「アルベルト……!?」

「フェルセン殿……、これはどういうおつもりです?」

 アルベルトがエリアスを見据える。

「アントンには、遅かれ早かれ絶対必要になるでしょ? ね、アルベルト……。
大丈夫、きちんとアルベルト用に呪いまじないも変更しているから……。
危険もなく楽しめると思うよ……。僕が使えない分、君に託すよ……、アルベルト」

 なぜか、エリアスを包むオーラに邪悪な気配を感じるのは俺だけだろうか!?

「ありがたく頂戴しておきます」

 アルベルトは、その木箱を傍らに避けた。

「ねえ、アルベルト、それって一体……」


「そんなことより、アルベルト! 新学期からの寮はどこになったの?」

 エリアスが急に話題を変えた。

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