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第71話

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 翌朝……。

 目が覚めると、すぐ目の前にアルベルトがいて、その青紫色の瞳がじっと俺を見つめていた。

「目が覚めた? おはよう兄さん」

「お、おはよ、う」

 俺の裸の肩にキスをするアルベルト……。

 あいかわらす何から何まで美しい……。


 俺はそんなアルベルトと、ついに昨夜!!!!

 赤面する俺に、アルベルトは優美に微笑みかける。


「兄さん、昨日は俺、全然余裕なくて、結局一回しかできなくてごめんね!
次は絶対、もっと兄さんのことたくさんイカせて満足させてあげるから!」


 ――ハイイイイイイイイイイ?????


 俺は一瞬で脳内が異次元になった。


 アルベルト、お前は一体何を言っているの?

 たしかに、イタした回数は一回かもしれんが、お前は俺の中から抜かずに3回……、いわゆる「抜かずの3発」ってやつでしたよね!?
 そして、俺は覚えているだけでも確実に5回以上はイカされていましたよね!?

 それを、それを……、まるで全然役不足だったみたいにおっしゃるアルベルト。
 お前は、どんだけ……、どんだけ、絶倫なの!!!!????

 昨夜のお相手だけでも、すでに魂を抜かれそうになった俺……。

 そして、今の俺の下半身は昨夜のせいでめちゃくちゃ重だるく、今もまだアルベルトの余韻が残っている……。

 アルベルトにこれ以上ハッスルされたら、確実に俺の命が尽きる!!!!

 青ざめる俺を、アルベルトは優しく抱きしめてきた。

「うれしいよ。兄さん、これからは毎日兄さんを抱けるんだね!」


 ――毎日!!!!!!!???????


「あ、アルベルト、昨日は……、うん、すごく、すごーく、素敵だったよ。でも、でもさ、俺、実はあんまり体力ないんだよね。
だからさ、毎日とか、そういうのは……」

 俺はじんじんする腰に顔をしかめながら言った。

「大丈夫だよ。すぐに慣れるから! それに毎日したほうが、兄さんの身体もそれだけ早く俺の身体に馴染むと思うよ!」

 ――いや、絶対慣れないから!!!!! 絶対!!!!


 だが、結局アルベルトは、そのことに関してはまったく譲るつもりはないらしく、上機嫌で着替え始める。

 ちなみにベッドでの事後の始末は、アルベルトが俺が気を失うように眠っている間に、いろいろとしてくれていたらしい。

「じゃあ、今からさっそく父上と母上に報告に行こう」

 俺にシャツを着せかけなんがら、アルベルトは俺の唇に軽くキスをする。

「報告?」

「婚約の報告だよ。決まってるでしょ!」

 ――そっか、俺たちはもう婚約者になるんだ……!!!!

 なんだかこそばゆい俺。
 でも、こんなことになってすぐに報告って、まさに「俺たちセックスしました~!」って言うもんじゃない!?
 うわー、恥ずかしいにもほどがある!!

「あっ、そうだ、兄さん」

 すっかりあの正装スタイルに着替えたアルベルトが俺を振り返る。

「何?」


「誕生日プレゼント、ありがとう! 今まで生きてきて一番うれしいプレゼントだったよ!」

 アルベルトの笑顔に、俺の心がキュウっと音を立てる。

「うん、それは……、よかった……」

 なんだか調子が狂いっぱなしだ。そういえば、アルベルトは俺への敬語をほとんどやめていることに気づく。

 そっか、本当に婚約者になるんだ……。

 アルベルトが、俺の婚約者……。なんだかとっても変な気分。

 でも、すごく……、嬉しい!!!

 腰をかばいながら歩くせいで、動きが確実におかしい俺をきづかって、姫抱っこで移動すると言って聞かないアルベルトをなんとかなだめすかして、俺とアルベルトはソールバルグ家へと戻ったのだった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「アントン!!! 本当にいいの!? 後悔しない!?
まさか、脅迫されて仕方なくとかではないわよね!?」

「そんなこと俺がするわけないでしょうが」

 憮然とするアルベルト。

「大丈夫だよ、お母様。ちゃんと自分で決めたんだ。俺、アルベルトが好きだ。
ずっと一緒に生きていきたい」

「そうなのね、アントン。なら安心したわ」

 俺の言葉に、お母様はにっこりと微笑んだ。

 俺とアルベルトの報告に、結局ソールバルグ家の家族会議が開かれることとなった。



「よかったね。アントン、アルベルト。いつかこうなると信じていたよ。おめでとう」

 お父様は、最初から俺たちの結婚には賛成だったらしく、目を細めて俺とアルベルトを見比べた。


「ありがとうございます、お父様」
「感謝します、父上」

「それで、結婚後は……」

 お母様がアルベルトをちらりと見る。

「結婚後も我々はここに住むことにいたします」

「まあ!!!そうなの!!! それはそれは!!
じゃあお母様も大賛成よっ!」


 アルベルトの返答に、お母様は胸の前で手を組み、飛び跳ねて喜んだ。

 ――やっぱり別居に反対していたというアルベルトの言葉は本当だったんだ……。


「用意していたあの屋敷は売り払うつもりです」

 アルベルトの言葉に、俺はショックを受ける。

「えっ、あそこ、売っちゃうの!?」

 俺好みの風呂がある、素晴らしい家だったというのに……。

「なにも売る必要はないだろう。週末の別荘にしたらいい。二人きりになりたいときもあるだろう。
ね、シルヴィア」

「ええ、……そうね」

 お父様に諭され、お母様もしぶしぶ頷く。


「そうだよ、アルベルト、俺、あの家気に入ったんだ」

「そうですか……、では別荘代わりにして、週末はそこで過ごしましょう」

 アルベルトも安心したように笑みを浮かべる。

「結婚はアルベルトが学園を卒業する18歳でいいんだね。
で、婚約するとなると、二人は家族のままではいられないことはわかっているね?
どちらかが、戸籍上ソールバルグ家から出て、違う家に養子に入ることになる」

 父上の説明に

「俺が、この家から籍を抜くつもりです」

 アルベルトの言葉に、俺はびっくりする。


「アルベルトが籍を抜く必要ないよ! それなら、俺が!」

 アルベルトは実子だ。実子のアルベルトがソールバルグ家から出るなんて、ありえない。

「いえ、もともと決めていたことです。それに……、たとえ結婚までの数年とはいえ、兄さんが他の家名を名乗るなんて……、
絶対に許せないっ!!!」


 ――あっ、またアルベルトの背後に青紫のオーラが!!!!!

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