【完結】前世の記憶が転生先で全く役に立たないのだが?! ~逆チートの俺が異世界で生き延びる方法~

.mizutama.

文字の大きさ
上 下
70 / 95

第70話

しおりを挟む
「では次に『魔法師』についてお話いたしますわね」

アリーチェさんが改めて黒板に単語を書いていく。

「『魔法師』とは魔法のスペシャリストとして認められた資格取得者のことですわ。
 この世界における殆どの国がこの制度を採用しておりますの。
 この超大陸『ヴァール』においてはこの数年で『勇者』という新たな称号が生まれましたが、それまでは各国がこぞってこの『魔法師』を輩出することに躍起になっておりましたわ。
 優れた『魔法師』の数こそが国の戦力保有数を、ひいては国力そのものを表しているとされていたのですから。
 まぁ、『ヴァール』以外ではそれは今でもほぼ変わっておりませんがね」

その話なら僕も少し知っている。
この学園に来る時に荷馬車のおじさんとそんな話をしたこともあったっけ。

「『魔法師』にもまた3つのクラス分けが存在しており『下級魔法師』、『中級魔法師』、『上級魔法師』がありますの」

例によって、アリーチェさんが黒板にその3つの単語を板書していく。

「あの、僕の『魔法師』ってものに対する認識は単純に魔法を使える人、ぐらいのイメージだったんですけど、この前の模擬戦を見た限り今この学園に居る生徒の人達って割と普通に魔法を使えてますよね?
 あの人達は『魔法師』とは呼ばないんですか?」
「まあ、魔法に詳しくなければ貴方と同じような認識の者が大半でしょうね。
 ですが『魔法師』を名乗るには国から正式に施行されている国家試験に合格しなければなりませんわ。
 そしてただ魔法が使える、というだけでは『魔法師』にはなれませんの。
 他にも条件がありますわ」
「条件?」

アリーチェさんは黒板の3つの単語に説明文を載せた。

「まず、『下級魔法師』について。
 基本的にただ『魔法師』と呼ばれている人は殆どがこのクラスのものになりますわ。
 この『魔法師』になる為の条件は、『2種類以上の系統の中等魔法が使用可能である』というものですの」
「2種類以上の系統?」

「そう、例えば炎魔法、《ファイアー・ジャベリン》と氷魔法、《アイス・ブレード》を発動出来る、といった具合でございますわ。
 そして、これだけでも相当に困難な条件でありましてよ。
 何故なら、自身の得意系統以外の魔法の発動というものはとても難易度が高いからですわ」
「そうなんですか?」

「ええ、まだ初等魔法程度なら他系統の魔法を使うことは比較的容易な方ではありますわ。
 しかし中等魔法からはそうはいきません。
 10年以上もの歳月をかけて鍛錬し、ようやく下位中等魔法を使えるかどうか、といわれておりますわ。
 ですので、若い年齢のうちで『魔法師』になれる方は非常に稀ですわね」

そういえば『魔法師』候補と言われていたレディシュさんも確かに爆発魔法の他に魔力と体力を吸収する魔法も使えてたんだっけ。
あの人本当に凄い実力者だったんだなぁ……

「『中級魔法師』は『3種類以上の系統の中等魔法が使用可能である』こと、そして『『準』高等魔法を使用可能である』こと、この2つの条件を満たす必要がありますわ」
「3種類以上の魔法……!」

「ええ、ちなみに『準』高等魔法の習得も同じくらい難しいと言われておりますわ。
 単純に『下級魔法師』の2倍困難と言えますわね」
「………………」

改めて僕とそう変わらない歳で『中級魔法師』の資格を持つというキャリーさんの規格外ぶりがよく分かる……
そして、そんな人相手に有利な試合形式とはいえ、完勝してしまったアリーチェさんも……

「そして『上級魔法師』。
 お察しかと思いますが、条件は『4種類以上の中等魔法が使用可能である』こと、そして『高等魔法を使用可能である』こと、ですわ。
 貴方もご存知の『上級魔法師』といえば……」
「アリエス先生……ですよね」

高等治癒魔法、そのうえ解析魔法まで使えるコーディス先生曰く補助魔法を極めた世界最高峰の『魔法師』の1人。
僕も模擬戦の時やレディシュさんとの戦いの時の怪我の治療でお世話になったっけ。

「アリエス先生の母君であるリブラ先生もまた治癒魔法を極めた『上級魔法師』ですわね。
 あの方々スターリィ家は代々強力な治癒魔法を得意系統としておりますのよ。
 得意系統が血筋を通して遺伝するのは珍しくないですからね」

ふむ、そういうものなのか。

「あと、これは余談なのですがこの学園の講師陣は殆どが『魔法師』の資格持ちでしてよ。
 これだけの数の『魔法師』が一堂に会する場所など、世界でもここぐらいしかありませんでしょうね」
「ほえぇ……」

いやはやもう何と言うか……
勇者学園恐るべし、の一言だ……

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「さて、基本的なお話はこんな所でしょうかね。
 という訳で、アリスリーチェ先生の特別魔法講座はとりあえずここまでと致しますわ」
「はい!今日は本当にありがとうございます!
 おかげで魔法について詳しくなれました!」
「んあ……?
 ふわぁー……
 話終わったのー?」

「今回の内容は本当に基礎的な部分だけでして、まだまだ知っていただきたいことはあったのですが……
 まあそれはまた次の機会でお話いたしますわ」
「はい!よろしくお願いします!」
「サラッと次の予定を確約してるけどやるべきことが沢山あるんじゃなかったのか巻貝」

「アリスリーチェ様!
 次の講義での衣装はこのファーティラ渾身の一作!
 『バニーティーチャー ~ 魅惑の補習授業 ~』をどうかご着用ください!
 女教師とバニーガール、方向性の違う2つのエロスをとことんつき詰めてみました!!」
「もうこの際ハッキリ言わせて貰いますね。
 アナタもしかして色々とダメなのでは?」

そんなこんなで今回の特別講義は終了したのだった。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

ある日、人気俳優の弟になりました。

雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。 「俺の命は、君のものだよ」 初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……? 平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。

春雨
BL
前世を思い出した俺。 外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。 愛が重すぎて俺どうすればいい?? もう不良になっちゃおうか! 少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。 説明は初めの方に詰め込んでます。 えろは作者の気分…多分おいおい入ってきます。 初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。 ※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫だと……思います(?) ※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。 もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。 なるべく全ての感想に返信させていただいてます。 感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます! 5/25 お久しぶりです。 書ける環境になりそうなので少しずつ更新していきます。

弟のために悪役になる!~ヒロインに会うまで可愛がった結果~

荷居人(にいと)
BL
BL大賞20位。読者様ありがとうございました。 弟が生まれた日、足を滑らせ、階段から落ち、頭を打った俺は、前世の記憶を思い出す。 そして知る。今の自分は乙女ゲーム『王座の証』で平凡な顔、平凡な頭、平凡な運動能力、全てに置いて普通、全てに置いて完璧で優秀な弟はどんなに後に生まれようと次期王の継承権がいく、王にふさわしい赤の瞳と黒髪を持ち、親の愛さえ奪った弟に恨みを覚える悪役の兄であると。 でも今の俺はそんな弟の苦労を知っているし、生まれたばかりの弟は可愛い。 そんな可愛い弟が幸せになるためにはヒロインと結婚して王になることだろう。悪役になれば死ぬ。わかってはいるが、前世の後悔を繰り返さないため、将来処刑されるとわかっていたとしても、弟の幸せを願います! ・・・でもヒロインに会うまでは可愛がってもいいよね? 本編は完結。番外編が本編越えたのでタイトルも変えた。ある意味間違ってはいない。可愛がらなければ番外編もないのだから。 そしてまさかのモブの恋愛まで始まったようだ。 お気に入り1000突破は私の作品の中で初作品でございます!ありがとうございます! 2018/10/10より章の整理を致しました。ご迷惑おかけします。 2018/10/7.23時25分確認。BLランキング1位だと・・・? 2018/10/24.話がワンパターン化してきた気がするのでまた意欲が湧き、書きたいネタができるまでとりあえず完結といたします。 2018/11/3.久々の更新。BL小説大賞応募したので思い付きを更新してみました。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜

車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

処理中です...