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第60話
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「殿下っ、殿下もいい加減にしてください!
アルベルトを挑発するために、俺を利用するのはやめてください!
俺は二人のことを邪魔するつもりなんて、これっぽっちもありませんから!」
「はあっ!? お前は一体何を言ってるんだ!?」
とぼけるヴィクトルに、俺の背後からエリアスが顔をのぞかせた。
「殿下、ファーストダンスは一緒に来た相手と踊る決まりですよ。
さあ、覚悟を決めて、アルベルトとダンスされてはいかがです?」
エリアスの言葉に、ヴィクトルは怒りでみるみる顔をどす黒くした。
「おいっ、アントン!!! この俺様の誘いを断っておいて、お前はこんなドブスと一緒に舞踏会に来たというのかっ!」
「なーんだあってえええええ!!!!!?????」
俺が返事するより先に、エリアスが激高した!!
「誰がっ、どこの誰がブスだってええーーーー!!!?? 誰がどう見ても、この会場で一番綺麗なのは僕でしょうがっ!!」
――あっ、やっぱり自覚あったんだ!
だが、エリアスの剣幕にも、ヴィクトルは動じなかった。
「ブスをブスと言って何が悪い。そんな仮面をつけてごまかしたつもりでも、その内面の醜さがその姿形にあらわれているようだ。
誰がなんと言っても、おまえがここで一番のブスだ!
やーい、ブースブース!!!」
――ヴィクトル、お前は男子小学生か!?
「はあ~~っ!? そういうブスに殿下は負けたんでしょーがっ!
僕なんて、アントンにエスコートされて、ファーストダンス一緒に踊ったんだもんね~!
いーでしょ、うらやましいでしょ!
悔しかったら、殿下もドレスに着替えてきたらどうなんです!?
あっでも、そんないかつい顔じゃ、全っ然似合わないかもしれませんね―!」
――エリアス、お前も同レベルかよ!?
二人の諍いに落胆する俺のそばに、アルベルトが立った。
「兄さん、突然部屋からいなくなるなんて、心配するじゃないですか。
さあ、早く一緒に帰りましょう」
当然のように俺の肩を抱こうとする手を振り払う。
「嫌だっ! 帰らないっ!」
「兄さん、どうしたんです。さっきから、わけのわからないことばかり……」
アルベルトの困った顔。
「……嫌いだ」
「は?」
「アルベルトなんて、だいっきらいだ!!!!
もう顔も見たくない!!」
「!!!!!」
アルベルトは一瞬、何を言われたのかわからないという顔になる。
しかしぎゅっと唇を噛みしめると、絞り出すように言った。
「嫌いなところがあるなら、俺が全部直します!
だから、兄さん、お願いですから……」
すがるように俺に手を伸ばしてくるアルベルト。
「嫌だっ、もう俺にさわるなっ! 俺は……、俺はすごく傷ついてるんだからなっ!
だから、俺は絶対おまえのことを許さないっ!」
「……!!!」
アルベルトはそのまま膝から崩れ落ちた……。
その絶望して色をなくした表情のアルベルトに、さすがに俺の良心がチクリと痛んだ。
でも、でもでも!!!
俺が今までアルベルトにされたことを考えれば、当然の報いだっ!
「ヴィクトル王子とどうぞお幸せにっ!!!!」
まだショックから立ち直れずに、膝をついたまま呆然とするアルベルトに捨て台詞を吐くと、「ブースブース!!」「バーカバーカ!!」と低レベルな争いを繰り広げているヴィクトルとエリアスも見捨てて、俺は歩きだす。
「さ、アントンさん、どうぞこちらへ……」
混乱の中、俺の手を取ったのは……。
アルベルトを挑発するために、俺を利用するのはやめてください!
俺は二人のことを邪魔するつもりなんて、これっぽっちもありませんから!」
「はあっ!? お前は一体何を言ってるんだ!?」
とぼけるヴィクトルに、俺の背後からエリアスが顔をのぞかせた。
「殿下、ファーストダンスは一緒に来た相手と踊る決まりですよ。
さあ、覚悟を決めて、アルベルトとダンスされてはいかがです?」
エリアスの言葉に、ヴィクトルは怒りでみるみる顔をどす黒くした。
「おいっ、アントン!!! この俺様の誘いを断っておいて、お前はこんなドブスと一緒に舞踏会に来たというのかっ!」
「なーんだあってえええええ!!!!!?????」
俺が返事するより先に、エリアスが激高した!!
「誰がっ、どこの誰がブスだってええーーーー!!!?? 誰がどう見ても、この会場で一番綺麗なのは僕でしょうがっ!!」
――あっ、やっぱり自覚あったんだ!
だが、エリアスの剣幕にも、ヴィクトルは動じなかった。
「ブスをブスと言って何が悪い。そんな仮面をつけてごまかしたつもりでも、その内面の醜さがその姿形にあらわれているようだ。
誰がなんと言っても、おまえがここで一番のブスだ!
やーい、ブースブース!!!」
――ヴィクトル、お前は男子小学生か!?
「はあ~~っ!? そういうブスに殿下は負けたんでしょーがっ!
僕なんて、アントンにエスコートされて、ファーストダンス一緒に踊ったんだもんね~!
いーでしょ、うらやましいでしょ!
悔しかったら、殿下もドレスに着替えてきたらどうなんです!?
あっでも、そんないかつい顔じゃ、全っ然似合わないかもしれませんね―!」
――エリアス、お前も同レベルかよ!?
二人の諍いに落胆する俺のそばに、アルベルトが立った。
「兄さん、突然部屋からいなくなるなんて、心配するじゃないですか。
さあ、早く一緒に帰りましょう」
当然のように俺の肩を抱こうとする手を振り払う。
「嫌だっ! 帰らないっ!」
「兄さん、どうしたんです。さっきから、わけのわからないことばかり……」
アルベルトの困った顔。
「……嫌いだ」
「は?」
「アルベルトなんて、だいっきらいだ!!!!
もう顔も見たくない!!」
「!!!!!」
アルベルトは一瞬、何を言われたのかわからないという顔になる。
しかしぎゅっと唇を噛みしめると、絞り出すように言った。
「嫌いなところがあるなら、俺が全部直します!
だから、兄さん、お願いですから……」
すがるように俺に手を伸ばしてくるアルベルト。
「嫌だっ、もう俺にさわるなっ! 俺は……、俺はすごく傷ついてるんだからなっ!
だから、俺は絶対おまえのことを許さないっ!」
「……!!!」
アルベルトはそのまま膝から崩れ落ちた……。
その絶望して色をなくした表情のアルベルトに、さすがに俺の良心がチクリと痛んだ。
でも、でもでも!!!
俺が今までアルベルトにされたことを考えれば、当然の報いだっ!
「ヴィクトル王子とどうぞお幸せにっ!!!!」
まだショックから立ち直れずに、膝をついたまま呆然とするアルベルトに捨て台詞を吐くと、「ブースブース!!」「バーカバーカ!!」と低レベルな争いを繰り広げているヴィクトルとエリアスも見捨てて、俺は歩きだす。
「さ、アントンさん、どうぞこちらへ……」
混乱の中、俺の手を取ったのは……。
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