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第56話
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エリアスは、俺のベッドに腰掛け、くすんくすんと鼻をすすっている。
その姿はまるで本物の深窓の令嬢のようだ。
「えっ、じゃあ、アデラが別の男と舞踏会に行っちゃったって、そういうことか?」
「……うん、そうみたい……。アデラは、僕には熱があるから行けなくなったって、嘘ついて……」
俺が渡したハンカチを受け取ると、エリアスはそれでチーンと鼻をかんだ。
「……前見かけたっていう、あのガタイのいい男か?」
「……ううん、別のヤツ。結構身分が高い貴族で、金茶の髪のすかした男だよ」
「……」
俺は、額に手を当てる。ああ、どいつもこいつも……。
「だから一緒に舞踏会に乗りこんで、アデラを説得してよ!
こうやって変装してたら、僕だってわからないでしょ。こっそり近づいて、様子を伺いたいんだ! 最終的には相手の男とも話をつけたいし!」
エリアスの真剣な瞳。
従姉の不祥事とあっては、俺としても黙っているわけにもいかない。
「わかった……、でも俺、舞踏会に行く予定なんかしてなかったから、服装が……」
クローゼットには正装一式も入っているが、舞踏会に参加するにしてはちょっと堅苦しすぎる。
それに、中身はエリアスとはいえ、これほどの美女をつれているのが、しょっぼい俺というのも気が引ける……。
「そんなことなら、大丈夫! 僕の魔法でちょちょいのちょいだよ~!」
エリアスは言うと、どこからか小さな小瓶を取り出し、ブツブツと呪文を唱え始める。
小瓶のなかのキラキラした砂のようなものを俺に振りかけると、なんと俺の姿は、輝くほど立派な王子様(服装のみ)にっ!!!
髪型も後ろに流されて固められ、ちょっと大人っぽくなっている(当社比)!!
「すごいっ、すごいなエリアス!!」
俺は鏡の中の自分にびっくりしていた。 まさに、シンデレラの魔法使いのおばあさんのようだ。
「素敵だよ~、アントン! 惚れ直しちゃった!」
エリアスもお世辞を言ってくれる。
と、その時俺は、とても素晴らしいアイデアを思い付いた。
「あのさ、エリアス。俺、アルベルトの誕生日プレゼントをどうしても今夜中に買いに行きたいんだ!
舞踏会に行く前に、城下町のどこか空いている店にでも寄ってくれないか?」
エリアスは、にっこり微笑む。
「お安い御用だよ! でも、アルベルトの誕生日プレゼントを買うんだったら、もっといい店を知ってるよ!
夜遅くにしか営業してないんだけど、知る人ぞ知る魔道具屋があるんだ!
そこの店のものだったら、きっとアルベルトも大喜びだよ~!
舞踏会が終わったらちょうどいい時間になってるから、アデラと3人で行って、一緒にアルベルトのプレゼントを選ぼうよ!」
なんと!!! 持つべきものはやはり友達だ。
俺は目を輝かせる。
「ありがとう、エリアス。すごくありがたいよ!」
「じゃあ、先に舞踏会に行くよ。転移魔法で王宮までひとっとび~!!」
婚約者に浮気された悲劇の男だというのに、エリアスはいつも通り底抜けに明るかった……。
その姿はまるで本物の深窓の令嬢のようだ。
「えっ、じゃあ、アデラが別の男と舞踏会に行っちゃったって、そういうことか?」
「……うん、そうみたい……。アデラは、僕には熱があるから行けなくなったって、嘘ついて……」
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「……」
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「わかった……、でも俺、舞踏会に行く予定なんかしてなかったから、服装が……」
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それに、中身はエリアスとはいえ、これほどの美女をつれているのが、しょっぼい俺というのも気が引ける……。
「そんなことなら、大丈夫! 僕の魔法でちょちょいのちょいだよ~!」
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「素敵だよ~、アントン! 惚れ直しちゃった!」
エリアスもお世辞を言ってくれる。
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「あのさ、エリアス。俺、アルベルトの誕生日プレゼントをどうしても今夜中に買いに行きたいんだ!
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夜遅くにしか営業してないんだけど、知る人ぞ知る魔道具屋があるんだ!
そこの店のものだったら、きっとアルベルトも大喜びだよ~!
舞踏会が終わったらちょうどいい時間になってるから、アデラと3人で行って、一緒にアルベルトのプレゼントを選ぼうよ!」
なんと!!! 持つべきものはやはり友達だ。
俺は目を輝かせる。
「ありがとう、エリアス。すごくありがたいよ!」
「じゃあ、先に舞踏会に行くよ。転移魔法で王宮までひとっとび~!!」
婚約者に浮気された悲劇の男だというのに、エリアスはいつも通り底抜けに明るかった……。
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