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第47話
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稲妻の光を身にまとい、怒りに髪を逆立たせているアルベルト。
その手には、青白い電光を発している魔剣があった。
「あ、あ、あ……、アルベルト様っ……!」
まさに今俺に突っ込もうとしていたダンは、俺の両足をつかんだまま固まっている。
「死ね!!!! 貴様にはそれ以外の道はない!」
アルベルトの青紫の瞳が稲光のように光ったかとおもうと、俺にのしかかっていたダンが静かに崩れ落ちた。
「兄さんを穢した罪、許すわけにはいかない!」
びっくりして俺が見ると、ダンは全身が焦げた状態で、床にのびていた。
アルベルトがダンに稲妻を落としたのだ。
「ダン兄様っ!!!」
俺の声に反応し、ダンの指がぴくりと動いた。
「まだ生きているのか? ――薄汚い獣めがっ!」
またアルベルトの瞳が光り、それに呼応するように光を帯びた剣を振り上げる。
――このままではダンが殺されてしまう!
「やめろっ! アルベルト!!!」
俺は叫び、ダンの身体に覆いかぶさった。
「……っ!!!!」
すんでのところで、アルベルトは攻撃の手を止める。
「兄さん、なんでそんなやつをかばうんですかっ! 自分がどんな目に遭っていたかわかってるんですかっ!?
もしかして、その男のことを……!?」
アルベルトの瞳に憤怒の色が浮かぶ。
「違うっ!違うんだ、アルベルト!
ダン兄様は、お母様が間違って買ってきた媚薬を飲んでしまっただけなんだ!
だから……っ!」
「へえ、母上が媚薬を……?
それは、聞き捨てなりませんね」
アルベルトは、周りを凍えさせるような冷淡な声で言うと、ダンから俺を引き剥がした。
そして、剣を鞘に納めると、これ以上なくみっともない俺の姿を一瞥して言った。
「……脱いでください」
「へっ……?」
「その男の服を、すぐに脱いでくださいと言っているんですっ!」
俺が慌ててダンに借りていたシャツを脱ぐと、アルベルトは代わりに騎士団の制服の青いマントを裸の俺に巻き付けてきた。
「アルベルト、ほんとごめん、俺っ……」
アルベルトは俺が脱いだダンのシャツを受け取ると、それをそのまま宙に放った。
それは、緑色の炎で包まれたかと思うと、一瞬で灰になってしまった。
「アルベルト、炎の魔法も使えるのか!?」
俺の質問にアルベルトは答えることはなく、俺を抱き寄せてきた。
「アル……、ベルト……?」
「兄さんは、飲んでないんでしょうね、……媚薬」
超絶美形のどアップに、一瞬俺は魂が抜けそうになる。
「あ、いや、その……、ちょっとだけ……」
俺の返事に、アルベルトは心底呆れた顔になる。
「仕方ない……、母上の気配を感じるので、これ以上ここにはいられません。
――行きますよ。兄さん、深呼吸して、俺と呼吸を合わせて!」
「えっ、はっ!? あの……、わああああっ!!!!」
次の瞬間、俺の視界がぐるぐると回り始める。
アルベルトが転移魔法を使ったと気づいた時には、俺はもう別の場所にいた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アルベルトの転移魔法で俺が連れてこられたのは、見たこともない邸宅だった。
まだ新しく、誰かが住んでいた形跡もない……。
シンプルで趣味の良い内装で、余計なものは置いていないが、調度品はセンスよく整えられていて、洗練された印象をうけた。
「ここは、どこなんだ?」
俺は、アルベルトのマントを裸に巻き付けた格好のままで、あたりを見渡す。
「ここにはまだ連れてきたくはなかったのですが……、
致し方ありません」
ため息混じりにアルベルトは言うと、俺を一階にある浴室に案内した。
湯けむりの中、白い大理石でできたヨーロッパ調の広々とした夢のような風呂が、そこには広がっていた。
「ここっ、浴場があるのかっ!? すごい!!」
高級温泉旅館ばりの大浴場に、俺は興奮を隠せない。
「兄さん、本当にあなたは……、どれだけ危機感がないんですかっ!!」
アルベルトは苛立ったように言うと、俺に冷たい視線を向け、手を伸ばしてくる。
「アルベルト……? あの……」
「魔道具ですね……、小賢しい真似を!」
舌打ちすると、アルベルトは俺がつけているピアスに触れる。
「……っ!」
耳元でカシャンとちいさな音がして、赤い魔石が粉々に砕かれた。
「ごめん、アルベルト! アルベルトがくれたピアスは、ちゃんと上着のポケットに……」
俺の釈明に、アルベルトはますます冷え切った表情になると、黙ったまま騎士団の制服を脱ぎはじめる。
「アルベルト……」
「さあ兄さん、一緒に入りましょう。俺が隅々まで綺麗にしてあげます!」
「!!!!!!!!!」
その手には、青白い電光を発している魔剣があった。
「あ、あ、あ……、アルベルト様っ……!」
まさに今俺に突っ込もうとしていたダンは、俺の両足をつかんだまま固まっている。
「死ね!!!! 貴様にはそれ以外の道はない!」
アルベルトの青紫の瞳が稲光のように光ったかとおもうと、俺にのしかかっていたダンが静かに崩れ落ちた。
「兄さんを穢した罪、許すわけにはいかない!」
びっくりして俺が見ると、ダンは全身が焦げた状態で、床にのびていた。
アルベルトがダンに稲妻を落としたのだ。
「ダン兄様っ!!!」
俺の声に反応し、ダンの指がぴくりと動いた。
「まだ生きているのか? ――薄汚い獣めがっ!」
またアルベルトの瞳が光り、それに呼応するように光を帯びた剣を振り上げる。
――このままではダンが殺されてしまう!
「やめろっ! アルベルト!!!」
俺は叫び、ダンの身体に覆いかぶさった。
「……っ!!!!」
すんでのところで、アルベルトは攻撃の手を止める。
「兄さん、なんでそんなやつをかばうんですかっ! 自分がどんな目に遭っていたかわかってるんですかっ!?
もしかして、その男のことを……!?」
アルベルトの瞳に憤怒の色が浮かぶ。
「違うっ!違うんだ、アルベルト!
ダン兄様は、お母様が間違って買ってきた媚薬を飲んでしまっただけなんだ!
だから……っ!」
「へえ、母上が媚薬を……?
それは、聞き捨てなりませんね」
アルベルトは、周りを凍えさせるような冷淡な声で言うと、ダンから俺を引き剥がした。
そして、剣を鞘に納めると、これ以上なくみっともない俺の姿を一瞥して言った。
「……脱いでください」
「へっ……?」
「その男の服を、すぐに脱いでくださいと言っているんですっ!」
俺が慌ててダンに借りていたシャツを脱ぐと、アルベルトは代わりに騎士団の制服の青いマントを裸の俺に巻き付けてきた。
「アルベルト、ほんとごめん、俺っ……」
アルベルトは俺が脱いだダンのシャツを受け取ると、それをそのまま宙に放った。
それは、緑色の炎で包まれたかと思うと、一瞬で灰になってしまった。
「アルベルト、炎の魔法も使えるのか!?」
俺の質問にアルベルトは答えることはなく、俺を抱き寄せてきた。
「アル……、ベルト……?」
「兄さんは、飲んでないんでしょうね、……媚薬」
超絶美形のどアップに、一瞬俺は魂が抜けそうになる。
「あ、いや、その……、ちょっとだけ……」
俺の返事に、アルベルトは心底呆れた顔になる。
「仕方ない……、母上の気配を感じるので、これ以上ここにはいられません。
――行きますよ。兄さん、深呼吸して、俺と呼吸を合わせて!」
「えっ、はっ!? あの……、わああああっ!!!!」
次の瞬間、俺の視界がぐるぐると回り始める。
アルベルトが転移魔法を使ったと気づいた時には、俺はもう別の場所にいた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アルベルトの転移魔法で俺が連れてこられたのは、見たこともない邸宅だった。
まだ新しく、誰かが住んでいた形跡もない……。
シンプルで趣味の良い内装で、余計なものは置いていないが、調度品はセンスよく整えられていて、洗練された印象をうけた。
「ここは、どこなんだ?」
俺は、アルベルトのマントを裸に巻き付けた格好のままで、あたりを見渡す。
「ここにはまだ連れてきたくはなかったのですが……、
致し方ありません」
ため息混じりにアルベルトは言うと、俺を一階にある浴室に案内した。
湯けむりの中、白い大理石でできたヨーロッパ調の広々とした夢のような風呂が、そこには広がっていた。
「ここっ、浴場があるのかっ!? すごい!!」
高級温泉旅館ばりの大浴場に、俺は興奮を隠せない。
「兄さん、本当にあなたは……、どれだけ危機感がないんですかっ!!」
アルベルトは苛立ったように言うと、俺に冷たい視線を向け、手を伸ばしてくる。
「アルベルト……? あの……」
「魔道具ですね……、小賢しい真似を!」
舌打ちすると、アルベルトは俺がつけているピアスに触れる。
「……っ!」
耳元でカシャンとちいさな音がして、赤い魔石が粉々に砕かれた。
「ごめん、アルベルト! アルベルトがくれたピアスは、ちゃんと上着のポケットに……」
俺の釈明に、アルベルトはますます冷え切った表情になると、黙ったまま騎士団の制服を脱ぎはじめる。
「アルベルト……」
「さあ兄さん、一緒に入りましょう。俺が隅々まで綺麗にしてあげます!」
「!!!!!!!!!」
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