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第37話 〜エリアスside〜

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 次にエリアスが目を開けると、そこには愛しいアントンの顔があった。

「アントン……っ!」

「エリアス、気が付いた? 大丈夫なのか?」

 エリアスの瞳をのぞき込む黒い瞳。


 ――ああ、やっぱり可愛すぎる!!! 今すぐめちゃくちゃに犯してしまいたい……。


 エリアスは、バスローブを着せられ、自室のベッドに寝かされていた。


「風呂場で気を失ったんだよ。覚えてる?
先生を呼ぼうか?」

 エリアスを心配するアントンに、エリアスは感無量だった。


「ありがとう、アントン! 君はなんて素敵なんだ!!!
裸のまま、裸の僕をここまで運んでくれたんだね。
記憶がなかったのが、残念でならないよ」

 アントンの手を取ると、アントンは嫌そうに顔をしかめた。

「いや、ちゃんと服を着てから運んだからね!?
エリアスにはちゃんとバスローブを着せたしね!」

 エリアスは自分の身体を確認する。

 まだ全身に少ししびれは残っているが、魔力も体力も問題ないレベルまで回復している。
 
 両手をぐーぱーして確かめていると、アントンがため息をつくのがわかった。


「ごめん、エリアス。君がそこまで思い悩んでいるなんて知らなかったんだ……」


「へ……?」

 いつになくエリアスを気遣うアントンに、エリアスは一瞬呆けた表情になる。

「アデラのこと、そんなに心配だったんだね。一体何があったんだ?」



 ――あー、そうそう。そういう話になってたんだっけ……。



 エリアスは、呪いの電流によって破壊されかかっていた脳細胞を急速によみがえらせた。



「アントンっ!聞いてくれる!?
アデラってば、僕に黙って浮気してるみたいなんだ!!」

 エリアスの言葉に、アントンは息をのむ。

「嘘だ……、あのアデラが!?」


 ――いや、あの男好きのアデラなら当たり前だろう!


「僕見たんだ! アデラがすごく背が高くて、恰幅のいいクリーム色の髪の男と腕を組んで歩いているところを!」

 たしか、アデラの3番手くらいの男がそんな容姿だったことを思い出し、エリアスは説明した。


「二人はあんなに仲が良かったじゃないか。……きっと何かの間違いだよ!」

 アデラとエリアスが恋人同士として仲がいい、というアントンの認識自体が間違いだということはもちろん黙っておく。


 ――まあ、アデラとは恋愛関係ではないが、仲がいいのは事実だし……。


「そうだね……、だといいんだけど」

 落ち込む様子を見せると、なんとアントンの方からエリアスの肩に手を置いてくれた。


 アントンの警戒心が解かれているので、もちろん魔石から電気も流れてこない!!


「俺のほうからも、アデラにそれとなく聞いておくよ。
きっと誤解だって、大丈夫だよ、エリアス!」


「ありがとう! アントン!!!
 ……ところで、さ……」

 エリアスはエメラルドの瞳をアントンに向ける。


「アントンはアルベルトと何か、あった!?」

「……はっ? な、なんも、ないしっ!
あるわけないしっ! いつも通りだしっ!」

 明らかに動揺を見せるアントン。


 ――これは、何かあったな……。


 こういうとき、自分の洞察力の鋭さが嫌になる。



「だよね、二人はただの兄弟だもんね!」

 ただの兄弟に力を込めて言うと、アントンの顔色が微妙に翳る。


「……うん、そうだよ……」

「そういえばアルベルトってもうすぐ16歳になるよね。そろそろ婚約者が決まりそう?」

「……さあ、たくさん話は来てるみたいだけど、俺がなかなか決まらないから、アルベルトは遠慮してるみたい……」

 兄のアントンをモノにしたくてたまらないアルベルトが、どこぞの令嬢と婚約なんてするはずないが、
あえて意地悪くエリアスは聞いてみたのだが……。



 ――あれ? アントンは、アルベルトの気持ちには気づいていないのか!?



「アントンにもいっぱい縁談が来てるでしょ? アデラの友達が見合いを申し込んだけど
返事がこないって嘆いてたよ!」

「えっ、そうなの? そんな話、聞いてないけど……」

 アントンの反応に、エリアスの疑念が確信に変わる。

 ――アルベルトのヤツ、アントンの見合い話をことごとくつぶしているな!!

 そのこと自体は、エリアスにとっても好都合なので、もちろんこれについても黙っておくことにする。


「クリスティーナ・ストランドっているでしょ! あの男子にすごく騒がれてる同じ学年の子!
あの子が、アルベルトが入学してきたら、絶対に恋人になってみせるって張り切ってるみたいだよ!
他にもいろんな子が狙ってるから、アルベルトもこの学園にきたら、すぐに恋人か婚約者ができるかもね~!」

「へえ…、そう、なんだ……。そうだよね、アルベルトはモテるよね……、かっこいいし……」

 さらに顔色が悪くなるアントン。

「でもさ、あれだけモテるのに、浮いた話がないってことは、きっとアルベルトは心に決めた人がいるのかもしれないねー!」

「そうかもね……。そっか……、アルベルトに好きな人……」

 かまをかけてみるが、やはり空振り。アントンは傷ついたような悲し気な顔をするだけだ。



 ――まさか、本気で好きなのか!?

 ――あの、ド変態の狂人を!?

 ――家族としての、情ではなくて!!?



 いますぐアントンの両肩を揺さぶって『目を覚ませ! 君の弟は理想の男なんかじゃない!! 兄に呪いをかけて、我がモノにしようとする異常者だっ!!!』と言ってやりたいエリアスだが、
そこはぐっとこらえる。


 どんな理由があるのか知らないが、アルベルトは自分の盲愛をアントンには知られたくはないようだ。


 それならそのことを逆手にとるしかない!!


 ――ぜったい、アントンを渡してなんかやらない!!!


 また新たな計画を思いついたエリアスは、一人ほくそ笑むのだった……。

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