【完結】前世の記憶が転生先で全く役に立たないのだが?! ~逆チートの俺が異世界で生き延びる方法~

.mizutama.

文字の大きさ
上 下
35 / 95

第35話 〜エリアスside〜

しおりを挟む
~エリアスside~



 木曜の午後。


 全ての授業が終わり、生徒たちがそれぞれの寮へと、帰る時間帯……。



 とぼとぼとうつむきがちに歩く人影を認め、エリアスは走り出した。


「アントンっ! 会いたかった!」

 ひしと抱き着くと、アントンはよろめいた。


「エリアス……、ど、どうしたの? 今日は……」

 黒目がちのつぶらな瞳が、動揺で揺れている。


「アントンっ、実は大変なことになってて、
大事な相談があるんだ! アントン以外誰にも話せないことなんだ。
お願いだから今から時間を作ってくれないか? 頼むよ、アントン!」


 瞳をうるませて懇願すると、アントンに困惑の表情が浮かぶ。


「誰にも、話せないこと……?」


「アデラのことなんだ! こんなこと、アントンにしか聞かせられないよ。
もう、僕、どうしたらいいのか……」


 腕を背中に回して、両手でその細い身体をまさぐる。
 その手が腰から下に伸びたとき、アントンは身体をくねらせてエリアスの腕から離れようとする。

「わかったっ、わかったからっ、お願い、ちょっと離れて!」

 エリアスはぺろりと舌を出す。

 ――相変わらずちょろい。


「じっくり話を聞いてほしいから、とにかく、僕の部屋に来て!」

「……そんなに時間はとれないよ」

 アントンが念を押してくる。だが、エリアスはそんな言葉は気にせず、ぐいぐいとアントンの腕をつかみ、自分の寮へと引っ張っていった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 今日の準備は万全だ。

 アントンを守る「アルベルトの呪いの守護石」に対抗するに十分な魔石も手に入れた。

 アントンの大好きな風呂は、アントン好みのいい感じの湯加減になっており、リラックス効果のあるハーブまで浮かべてある。

 そしてなにより、強力な媚薬を仕込んだ香油も用意してある。



 ――今日こそは、アントンを犯る!!



「さ、アントン、お風呂にはいってさっぱりしよ!」

 準備を終え、エリアスが振り返ると、アントンはあからさまに嫌そうな顔になり後ずさった。

「お風呂は、今日はいいよ……、とにかく話を……」

「そんなこと言わないでよ! せっかく来たんだから。
今日はお風呂で、特別に虹色の滝の魔法を見せてあげるよ!」

「……虹色の滝……」

 子ども騙しの簡単な魔法だが、風呂好きのアントンの心が、すこし揺らいだのがわかる。


「きっと見たこともないくらい綺麗だよ~。
ねえ、アントン、お願いだよ。僕、今すごーく傷ついてるんだ。
アントンと一緒にお風呂にはいったら、リラックスできるし気持ちも楽になれるんだけどな~」

 両手を胸の前で組み、お願いのポーズをすると、アントンがげんなりした表情になる。

「……いいけど、もう前みたいに触ったりしないでよ!」

「わかってるって!」

 ――記憶がなくなるまで、ズタボロに抱き潰してあげるからね!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 アントンが服を脱いで湯舟につかったのを見届けてから、エリアスはさっそく用意を始める。

 まずは、魔石。


 今回は、できる限りの魔力を注ぎ込んで、かなり強力なパワーを入れ込んである。エリアスの心血を注いだ傑作と言っていい。

 いくらアルベルトのアントンへの執念が詰まった魔石といえど、このパワーをもってすれば、十分に対抗できるはずだ。

 エリアスは長い髪をまとめると、その髪留めに魔石を埋め込んだ。


 そして、この媚薬。

 これでアントンをマッサージしてやれば、いくら奥手なアントンといえども、自ら脚を開いて誘ってくるに違いない。


 ――エリアスっ、もっと触って、もっと……!


 よだれを垂らしながら懇願するアントンが目に浮かぶようだ……って、駄目だ、夢想している場合ではない!


 ちなみに、エリアスの一物は、アントンの裸体を目にしたために、すでに臨戦状態にはいっており、堂々と天井を向いている。

 だが、エリアスの魔法によって、その一物はアントンの目には「通常体」として映るように細工されていた。



 ――さすがに、これを見たらアントンもびっくりしちゃうよね。


 でも……、

 エリアスは舌なめずりする。


 ――もうすぐしたら、これなしではいられない身体になっちゃうんだから……。




 エリアスは媚薬のはいった小瓶を片手に、意気揚々と浴室に入っていった。



 だが……、

 エリアスは驚愕する。



 ――魔石の力がさらに強力になっている、だと!?




 浴槽に肩までつかって、すっかり頬を赤くしているアントンは、怨念としか言いようがない禍々しい青紫のオーラに包まれていた。


 ――くそっ、ここまで強い邪気にはいくら何でも対応しきれない!


 浴室に入っただけなのに、すでにエリアスの髪留めの魔石に複数のヒビが入ったのがわかった。

 アントンの警戒心に反応し、エリアスを「異物」すなわち、「敵」と魔石がみなした結果だろう。




 ――なんてすさまじい怨念だ!


 エリアスは歯ぎしりする。


 魔石に宿る魔力というのは、その作り手の力とその思い入れの強さによって、持つ力が格段に変わってくる。

 アントンを守るためにあのアルベルトが作ったと思われるあの魔石には、とんでもないほどの力が備わっていた。

 エリアスはアルベルトに魔力だけで考えると、劣っているということは決してない。


 ということは……。


 この魔石の力の差は、それぞれがアントンにかける執着心の強さの差に違いない……。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

兄のやり方には思うところがある!

野犬 猫兄
BL
完結しました。お読みくださりありがとうございます! 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 第10回BL小説大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、そしてお読みくださった皆様、どうもありがとうございました!m(__)m ■■■ 特訓と称して理不尽な行いをする兄に翻弄されながらも兄と向き合い仲良くなっていく話。 無関心ロボからの執着溺愛兄×無自覚人たらしな弟 コメディーです。

弟勇者と保護した魔王に狙われているので家出します。

あじ/Jio
BL
父親に殴られた時、俺は前世を思い出した。 だが、前世を思い出したところで、俺が腹違いの弟を嫌うことに変わりはない。 よくある漫画や小説のように、断罪されるのを回避するために、弟と仲良くする気は毛頭なかった。 弟は600年の眠りから醒めた魔王を退治する英雄だ。 そして俺は、そんな弟に嫉妬して何かと邪魔をしようとするモブ悪役。 どうせ互いに相容れない存在だと、大嫌いな弟から離れて辺境の地で過ごしていた幼少期。 俺は眠りから醒めたばかりの魔王を見つけた。 そして時が過ぎた今、なぜか弟と魔王に執着されてケツ穴を狙われている。 ◎1話完結型になります

ある日、人気俳優の弟になりました。

雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。 「俺の命は、君のものだよ」 初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……? 平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

セントアール魔法学院~大好きな義兄との学院生活かと思いきや何故だかイケメンがちょっかいかけてきます~

カニ蒲鉾
BL
『ラウ…かわいい僕のラウル…この身体の事は絶対に知られてはいけない僕とラウル二人だけの秘密』 『は、い…誰にも――』    この国には魔力を持つ男が通うことを義務付けられた全寮制魔法学校が存在する。そこに新入生として入学したラウルは離れ離れになっていた大好きで尊敬する義兄リカルドと再び一緒の空間で生活できることだけを楽しみにドキドキワクワク胸を膨らませていた。そんなラウルに待つ、新たな出会いと自分の身体そして出生の秘密とは――  圧倒的光の元気っ子ラウルに、性格真反対のイケメン二人が溺愛執着する青春魔法学園ファンタジー物語 (受)ラウル・ラポワント《1年生》 リカ様大好き元気っ子、圧倒的光 (攻)リカルド・ラポワント《3年生》 優しいお義兄様、溺愛隠れ執着系、策略家 (攻)アルフレッド・プルースト《3年生》 ツンデレ俺様、素行不良な学年1位 (友)レオンハルト・プルースト《1年生》 爽やかイケメン、ラウルの初友達、アルの従兄弟

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

処理中です...