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第35話 〜エリアスside〜
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~エリアスside~
木曜の午後。
全ての授業が終わり、生徒たちがそれぞれの寮へと、帰る時間帯……。
とぼとぼとうつむきがちに歩く人影を認め、エリアスは走り出した。
「アントンっ! 会いたかった!」
ひしと抱き着くと、アントンはよろめいた。
「エリアス……、ど、どうしたの? 今日は……」
黒目がちのつぶらな瞳が、動揺で揺れている。
「アントンっ、実は大変なことになってて、
大事な相談があるんだ! アントン以外誰にも話せないことなんだ。
お願いだから今から時間を作ってくれないか? 頼むよ、アントン!」
瞳をうるませて懇願すると、アントンに困惑の表情が浮かぶ。
「誰にも、話せないこと……?」
「アデラのことなんだ! こんなこと、アントンにしか聞かせられないよ。
もう、僕、どうしたらいいのか……」
腕を背中に回して、両手でその細い身体をまさぐる。
その手が腰から下に伸びたとき、アントンは身体をくねらせてエリアスの腕から離れようとする。
「わかったっ、わかったからっ、お願い、ちょっと離れて!」
エリアスはぺろりと舌を出す。
――相変わらずちょろい。
「じっくり話を聞いてほしいから、とにかく、僕の部屋に来て!」
「……そんなに時間はとれないよ」
アントンが念を押してくる。だが、エリアスはそんな言葉は気にせず、ぐいぐいとアントンの腕をつかみ、自分の寮へと引っ張っていった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今日の準備は万全だ。
アントンを守る「アルベルトの呪いの守護石」に対抗するに十分な魔石も手に入れた。
アントンの大好きな風呂は、アントン好みのいい感じの湯加減になっており、リラックス効果のあるハーブまで浮かべてある。
そしてなにより、強力な媚薬を仕込んだ香油も用意してある。
――今日こそは、アントンを犯る!!
「さ、アントン、お風呂にはいってさっぱりしよ!」
準備を終え、エリアスが振り返ると、アントンはあからさまに嫌そうな顔になり後ずさった。
「お風呂は、今日はいいよ……、とにかく話を……」
「そんなこと言わないでよ! せっかく来たんだから。
今日はお風呂で、特別に虹色の滝の魔法を見せてあげるよ!」
「……虹色の滝……」
子ども騙しの簡単な魔法だが、風呂好きのアントンの心が、すこし揺らいだのがわかる。
「きっと見たこともないくらい綺麗だよ~。
ねえ、アントン、お願いだよ。僕、今すごーく傷ついてるんだ。
アントンと一緒にお風呂にはいったら、リラックスできるし気持ちも楽になれるんだけどな~」
両手を胸の前で組み、お願いのポーズをすると、アントンがげんなりした表情になる。
「……いいけど、もう前みたいに触ったりしないでよ!」
「わかってるって!」
――記憶がなくなるまで、ズタボロに抱き潰してあげるからね!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アントンが服を脱いで湯舟につかったのを見届けてから、エリアスはさっそく用意を始める。
まずは、魔石。
今回は、できる限りの魔力を注ぎ込んで、かなり強力なパワーを入れ込んである。エリアスの心血を注いだ傑作と言っていい。
いくらアルベルトのアントンへの執念が詰まった魔石といえど、このパワーをもってすれば、十分に対抗できるはずだ。
エリアスは長い髪をまとめると、その髪留めに魔石を埋め込んだ。
そして、この媚薬。
これでアントンをマッサージしてやれば、いくら奥手なアントンといえども、自ら脚を開いて誘ってくるに違いない。
――エリアスっ、もっと触って、もっと……!
よだれを垂らしながら懇願するアントンが目に浮かぶようだ……って、駄目だ、夢想している場合ではない!
ちなみに、エリアスの一物は、アントンの裸体を目にしたために、すでに臨戦状態にはいっており、堂々と天井を向いている。
だが、エリアスの魔法によって、その一物はアントンの目には「通常体」として映るように細工されていた。
――さすがに、これを見たらアントンもびっくりしちゃうよね。
でも……、
エリアスは舌なめずりする。
――もうすぐしたら、これなしではいられない身体になっちゃうんだから……。
エリアスは媚薬のはいった小瓶を片手に、意気揚々と浴室に入っていった。
だが……、
エリアスは驚愕する。
――魔石の力がさらに強力になっている、だと!?
浴槽に肩までつかって、すっかり頬を赤くしているアントンは、怨念としか言いようがない禍々しい青紫のオーラに包まれていた。
――くそっ、ここまで強い邪気にはいくら何でも対応しきれない!
浴室に入っただけなのに、すでにエリアスの髪留めの魔石に複数のヒビが入ったのがわかった。
アントンの警戒心に反応し、エリアスを「異物」すなわち、「敵」と魔石がみなした結果だろう。
――なんてすさまじい怨念だ!
エリアスは歯ぎしりする。
魔石に宿る魔力というのは、その作り手の力とその思い入れの強さによって、持つ力が格段に変わってくる。
アントンを守るためにあのアルベルトが作ったと思われるあの魔石には、とんでもないほどの力が備わっていた。
エリアスはアルベルトに魔力だけで考えると、劣っているということは決してない。
ということは……。
この魔石の力の差は、それぞれがアントンにかける執着心の強さの差に違いない……。
木曜の午後。
全ての授業が終わり、生徒たちがそれぞれの寮へと、帰る時間帯……。
とぼとぼとうつむきがちに歩く人影を認め、エリアスは走り出した。
「アントンっ! 会いたかった!」
ひしと抱き着くと、アントンはよろめいた。
「エリアス……、ど、どうしたの? 今日は……」
黒目がちのつぶらな瞳が、動揺で揺れている。
「アントンっ、実は大変なことになってて、
大事な相談があるんだ! アントン以外誰にも話せないことなんだ。
お願いだから今から時間を作ってくれないか? 頼むよ、アントン!」
瞳をうるませて懇願すると、アントンに困惑の表情が浮かぶ。
「誰にも、話せないこと……?」
「アデラのことなんだ! こんなこと、アントンにしか聞かせられないよ。
もう、僕、どうしたらいいのか……」
腕を背中に回して、両手でその細い身体をまさぐる。
その手が腰から下に伸びたとき、アントンは身体をくねらせてエリアスの腕から離れようとする。
「わかったっ、わかったからっ、お願い、ちょっと離れて!」
エリアスはぺろりと舌を出す。
――相変わらずちょろい。
「じっくり話を聞いてほしいから、とにかく、僕の部屋に来て!」
「……そんなに時間はとれないよ」
アントンが念を押してくる。だが、エリアスはそんな言葉は気にせず、ぐいぐいとアントンの腕をつかみ、自分の寮へと引っ張っていった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今日の準備は万全だ。
アントンを守る「アルベルトの呪いの守護石」に対抗するに十分な魔石も手に入れた。
アントンの大好きな風呂は、アントン好みのいい感じの湯加減になっており、リラックス効果のあるハーブまで浮かべてある。
そしてなにより、強力な媚薬を仕込んだ香油も用意してある。
――今日こそは、アントンを犯る!!
「さ、アントン、お風呂にはいってさっぱりしよ!」
準備を終え、エリアスが振り返ると、アントンはあからさまに嫌そうな顔になり後ずさった。
「お風呂は、今日はいいよ……、とにかく話を……」
「そんなこと言わないでよ! せっかく来たんだから。
今日はお風呂で、特別に虹色の滝の魔法を見せてあげるよ!」
「……虹色の滝……」
子ども騙しの簡単な魔法だが、風呂好きのアントンの心が、すこし揺らいだのがわかる。
「きっと見たこともないくらい綺麗だよ~。
ねえ、アントン、お願いだよ。僕、今すごーく傷ついてるんだ。
アントンと一緒にお風呂にはいったら、リラックスできるし気持ちも楽になれるんだけどな~」
両手を胸の前で組み、お願いのポーズをすると、アントンがげんなりした表情になる。
「……いいけど、もう前みたいに触ったりしないでよ!」
「わかってるって!」
――記憶がなくなるまで、ズタボロに抱き潰してあげるからね!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アントンが服を脱いで湯舟につかったのを見届けてから、エリアスはさっそく用意を始める。
まずは、魔石。
今回は、できる限りの魔力を注ぎ込んで、かなり強力なパワーを入れ込んである。エリアスの心血を注いだ傑作と言っていい。
いくらアルベルトのアントンへの執念が詰まった魔石といえど、このパワーをもってすれば、十分に対抗できるはずだ。
エリアスは長い髪をまとめると、その髪留めに魔石を埋め込んだ。
そして、この媚薬。
これでアントンをマッサージしてやれば、いくら奥手なアントンといえども、自ら脚を開いて誘ってくるに違いない。
――エリアスっ、もっと触って、もっと……!
よだれを垂らしながら懇願するアントンが目に浮かぶようだ……って、駄目だ、夢想している場合ではない!
ちなみに、エリアスの一物は、アントンの裸体を目にしたために、すでに臨戦状態にはいっており、堂々と天井を向いている。
だが、エリアスの魔法によって、その一物はアントンの目には「通常体」として映るように細工されていた。
――さすがに、これを見たらアントンもびっくりしちゃうよね。
でも……、
エリアスは舌なめずりする。
――もうすぐしたら、これなしではいられない身体になっちゃうんだから……。
エリアスは媚薬のはいった小瓶を片手に、意気揚々と浴室に入っていった。
だが……、
エリアスは驚愕する。
――魔石の力がさらに強力になっている、だと!?
浴槽に肩までつかって、すっかり頬を赤くしているアントンは、怨念としか言いようがない禍々しい青紫のオーラに包まれていた。
――くそっ、ここまで強い邪気にはいくら何でも対応しきれない!
浴室に入っただけなのに、すでにエリアスの髪留めの魔石に複数のヒビが入ったのがわかった。
アントンの警戒心に反応し、エリアスを「異物」すなわち、「敵」と魔石がみなした結果だろう。
――なんてすさまじい怨念だ!
エリアスは歯ぎしりする。
魔石に宿る魔力というのは、その作り手の力とその思い入れの強さによって、持つ力が格段に変わってくる。
アントンを守るためにあのアルベルトが作ったと思われるあの魔石には、とんでもないほどの力が備わっていた。
エリアスはアルベルトに魔力だけで考えると、劣っているということは決してない。
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この魔石の力の差は、それぞれがアントンにかける執着心の強さの差に違いない……。
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